表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
夢を育む翼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/107

26話 夢を描く 1

 わたし、アザレアは、ルーシッド・エデンの空を見上げながら、胸に込み上げてくる達成感を覚えながら、小さく笑みをこぼす。

 トドメを刺したのはコハクさんですし、わたしの魔法が命中するようにサポートしてくれたのはノクサラです。

 けれど、パーティの一員としてユニークボスに打ち勝ったということは、確かな事実なのです。


「コハクは…無理だな。…アザレアは動けるか?」

「手を貸していただければ、起き上がるくらいはできますよ」

「ほら」


 ノクサラの差し出してくれた手を、わたしは一切の躊躇なく握り、上体を起こしてもらいます。

 コハクさんが初めてパーティを組んだ女性でありながら、アローズには不可欠なメンバー。

 必要以上の関わりを持つ気はありませんが、パーティメンバーとしてなら仲良くできるかもしれません。


「無理をお願いしてしまいましたが、その…大丈夫ですか、コハクさん?」

「しばらく…結構な間、横になってれば動けるようになるので、問題ありませんよ」


 完全に身体が動かなくなってしまったコハクさんは、手足をだらんと伸ばして、ダークブラウンの瞳だけをわたしに向けている。

 巨人を倒すため、コハクさんには無理をさせてしまいました。


「すみま…いえ、武技を使っていただき、ありがとうございます」

「えへへ、どういたしまして。アザレアさんとノクサラさんのおかげで、啄鎧矢きつつきを心臓に当てられました。私の方こそ、お二人にお礼を言わせてください。ありがとうございます」

「どういたしまして」

「へっ、余裕だよ」


 ノクサラは、コハクさんの上体を起こして、自身の膝で膝枕をしてあげている。

 …わたしが動けないのをいいことに、ずるいのではありませんか?

 まったく。


 わたしには一つ、コハクさんに伝えたいことができました。

 胸に燻る慕情もありますが、今はそれを伝える時ではないでしょう。


 一度深呼吸をしましょうか。


「すぅー…はぁ…」


 …なにかを打ち明けるというのは、勇気がいるものですね。


「コハクさん、実はお話したいことがありまして、休憩がてらお聞きしてもらってもよろしいでしょうか?」

「はい、構いませんが」

「…アタシはどっか行ってようか?」

「大したことではありませんし、アローズのことでもありますのでどうぞ」

「おう」

「まずわたしは…セルヴィーノ家という魔導具を生業とした、そこそこ大きな家の出身でして、家を飛び出すまでは自由の少ない生活をしていました」


 ノクサラはともかく、コハクさんも驚いていませんね。

 どこかで知ってしまったのでしょうか。


 自由がない代わりに、生活に不自由することもない暮らしではありましたが、何をするにも親が決めたことしかできない人生というのは、わたしにとって苦痛以外のなにものでもありませんでした。


「他責になってしまうのでしょうが、そんな生活を送っていたわたしは、人生に目標というものを持てず、ただ縛られないだけの生き方をしていました」

「月並みな言葉なのですが、目標を持たない人も珍しくないと思いますよ?」

「コハクがそれを言うのか…」

「えっ?」


 わたしの考えもノクサラと同じだ。

 夢や目標のために、大金を支払って海を渡ったコハクさん。彼女からすれば、夢や目標があるのが当然だと考えていました。


「榾火村のみんなは私の背中を押してくれましたが、私が夢を語っても一緒に歩いてくれる人は、いなかったので。…夢より現実だって言われたこともありますし」


 コハクさんの表情は、ほんの一瞬だけ寂しそうに見えた。


 遠い異国でスターを目指す。

 パラデイソポリスには夢追い人は多くいるが、その目標を叶えられるのは、ほんの一握りにも満たないでしょう。

 それに、面接に落とされて現実も知っているはずです。


「目標がないのは珍しくないのかもしれません。…けれど、折れることのない夢を持ったコハクさんと過ごす内に、目標の一つも抱けずにいるわたしを情けなく思っていました」

「…。」


 申し訳なさそうにするコハクさんを見るに、似たような状況が故郷でもあったのかもしれません。

 謝罪される前に言葉を進めてしまいましょう。


「ですが!わたしにも目標が一つできたのです!」

「おぉっ!もしかして、それを教えてくれるんですか?」

「はい。…自分の目標というには他人本位な部分はありますが、わたしアザレアは、コハクさんをスター冒険者でありトップ配信者になれるべく、お支えしたと考えております」


 コハクさんは目を瞬かせて、パッと笑顔の花を咲かせる。とても可愛らしい。


「映像の編集に、戦闘でのサポート、魔導具全般の調整や新調等、わたしにできることは多くあります。コハクさんを支える一本の柱として、夢にご一緒してもよろしいでしょうか?」

「是非、喜んでっ!えへへ、支え甲斐のある冒険者兼配信者にならないといけませんね」


 話は、これで終わりではありません。


「あの、一つ、コハクさんからお言葉を貰いたいのですが、よろしいでしょうか?」

「言葉ですか?」

「はい。…ノクサラに伝えた『私だけを見てください』というお言葉です。それがあれば、わたしは頑張れると思いまして」

「はぁっ、アザレアお前」

「だってズルいじゃないですか!ノクサラばっかり!わたしもそういう言葉が欲しいんです」


 わたしとノクサラが言い争っている間、コハクさんはなにかを考えているようでした。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ