23話 廃城塞を進む 5
「『ヴァッサーフェアツァウベルン』」
アタシ、ノクサラはマジックアーツで、腕と脚の鎧に水属性を付与する。
鎧の表面に浮かび上がる波模様を確認したアタシは、大剣スケルトンのノロい一撃を躱して懐に踏み込み、胴鎧に一撃を加えた。
…チッ、やっぱ硬いな。
スケルトン・ウォリアーの鎧は見た目以上に硬い。
鎧は打撃に対する耐性、本体は斬撃や刺撃、一部の属性魔法に耐性と、耐性盛々のクソダルいモンスターだ。
エリートじゃないなら耐性があっても苦戦しないんだが、エリートは厄介だ。
とはいえ手をこまねいていれば、コハクたちが合流して終わらせちまうだろう。
パーティを組んでいるんだから、倒せる奴が倒せばいいんだが、…アタシはちと面白くない。
最近はコハクとアザレアが成長目覚ましい。
別に焦っているわけではないが、追い抜かれるのは癪だ。
アタシ一人で大剣スケルトンを倒して、格の違いってのを見せつけないと、年長者の威厳が失われちまう。
「『シュラムシュトローム』!」
地面を思いっきり踏みつけることで、武技『シュラムシュトローム』が発動し、踏みつけた場所から扇状に地面が波打ち、泥沼化していく。
これは相手の足を泥濘で絡め取る妨害の武技だ。
想定通りに大剣スケルトンの足は、膝まで地面に沈んでいき、まともに動くことができなくなった。
さて、あとは頭蓋骨をぶっ潰すだけだが、…コハクたちは戦闘を終えちまったようだ。
時間がない。
あんまりスタミナを消耗したくないが、武技を惜しみなく使わせてもらうかね。
「『シュトゥルツフルート』―――」
地面を殴りつけると、その反動でアタシの身体が数バシス吹き飛ぶ。
そのまま地上の大剣スケルトンに狙いを定めながら、もう一つの武技を発動する。
「―――『ファルベッケンシュトース』!!」
地面を殴って吹き飛ばされた際、アタシの身体には多くの衝撃が蓄積されている。
それを高速落下の飛び蹴りのための加速と威力強化に転用し、強烈な一撃で頭鎧ごと頭蓋骨を蹴り潰す。
――――ダン!!
コハクの矢ほどの速さで落下したアタシは、大剣スケルトンの鎧と骨を木っ端微塵に蹴り砕き、相手を一撃で消滅させることに成功した。
アタシが着地、いや着弾した際の音は、人間が蹴りをしたものとは思えない程の轟音で、足に伝わる衝撃も中々だ。
…そう、中々に強い衝撃だった。
「……。」
「あのー…大丈夫ですか?」
心配そうに覗き込んできたコハクの瞳は、アタシの目線よりも高いところにあり、アタシが見上げる形になっていた。
アタシは、腰まで地面に突き刺さってしまったのだ。
「…あほくさ」
よく考えたら、こいつらに威厳を示したところで意味なんてないし、下半身が地面に突き刺さった年上なんて、面白さしかないだろうに。
「ぷっ、何やってるんですかノクサラ?絵になる面白さですから、記録映像を残しておきましょうか?」
「うざ。…コハク、手を貸せ」
「はいっ!」
面白がっているアザレアとは対照的に、コハクは本気で心配しているようで、アタシを引きずり出そうと手を貸してくれた。
あーあ、幻滅されてないといいけど。
―――
私、恋白とアザレアさんの二人で、地面に突き刺さってしまったノクサラさんを救出した。
あそこまで一人で頑張らなくてもいい気もするのだが、ノクサラさんにはノクサラさんの目的があったのだろう。
なんとなく、語ろうとしない雰囲気なので、私は追及しないことにした。
「お二人ともお疲れ様でした。これで五四区画の攻略は完了ですし、次に進めますね!」
「んだな。マジでそろそろ、出入り口小屋が欲しいんだが」
「ですね。コハクさんが地図を作ってくれてるとはいえ、毎回第一区画から移動するのが苦痛になってきました」
「ここまで来るのに結構時間がかかりますからね」
崩れたお城が近くなった今、私たちの悩みは移動にあった。
最適な道順で移動しているとはいえ、時間がかかるのは事実であり、移動時間は無駄な時間ともいえる。
私としては、お二人とお喋りができて楽しいのだが、それはルーシッド・エデンの攻略中以外でもできることだ。
「お城の手前くらいにでもあることを祈りましょうか」
「それしかねえな」
「ですね〜」
ノクサラさんが地面に突き刺さってしまったのかについて追及しないが、それでも大剣スケルトンをお一人で倒せることは凄いと思うし、高威力の技はカッコよかった。
ただ思っているだけでは何も伝わらないし、無駄に掘り起こしてしまわないように、伝えてみよう。
「ノクサラさん」
「なに?」
「あの武技の組み合わせ、とってもイケてましたよっ!」
「へぇ…まあ、どうも」
照れくさそうに顔を背けられてしまったが、しっかりと言葉は届いたようだ。
「コハクさんコハクさん、わたしのロックフォールはいかがでしたか?」
「ぴったしな連携が取れて、とても素晴らしかったです!」
「うへへ、どうもありがとうございます。機会があったら、高威力な魔法もお見せしますね!」
「おお、高威力の魔法ですか!楽しみにしてますね!」
お二人ともできることを増やしていて、私も負けていられないと、そう感じた。
パーティメンバーだからこそ、お互いを引っ張り合い、前に向かって進めるのかもしれない。…いや、そうだったらいいなと、私は思った。
さて、五四区画を抜けた五五区画、そこは出入り口小屋だけがポツンと佇んでいる区画であり、私たちは長い移動に終止符を打てるのだと、安堵の息を漏らすのであった。
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