23話 廃城塞を進む 3
ウッドピラーの上に乗った私は、再度ウッドピラーを発動してみると、空中から木の柱が伸びていき、ズドンと地面に落ちていった。
「…?」
てっきり同じ高さの柱が並べられるものとばかり思っていたのだが、そうではないらしい。
再度発動しても結果は同じ。
時を同じくして足場にしていたウッドピラーも消え去ってしまった。
「連続する足場みたいには使えない、と」
地面から二バシスほどになったらウッドピラーを発動し、それらの上を跳んで進む予定であったのだが、その計画は失敗らしい。
スケルトン・ヘクサー自体がそこまで攻撃性が高くなく、距離を置いていれば危険ではないと判断した私は、周囲のスケルトン・ウォリアーに気をつけつつ、ウッドピラーの使い方を模索する。
まずは一度、ジャンプしてからウッドピラーを発動する。
そうすると、ジャンプした高さ分、ウッドピラーは地面から離れて発生した。
ウッドピラーの発生は『私の眼の前』なのは確定として、『私の足と同じ高さ』という条件も加わるようだ。
ただ、それならそれで使い方を変えればいいだけ。
私はスケルトン・ヘクサーから距離を置いた後、助走をつけてから大きな跳躍を行った。
距離にして十二バシスほど。
着地姿勢で前足が地面に触れる直前に、ウッドピラーを発動した私は、木の柱によって押し上げられる力を利用して、さらなる跳躍を行って、スケルトン・ヘクサーへの距離を縮める。
…今のウッドピラー、少し傾いていた?
真上に向かう木の柱ではなく、スケルトン・ヘクサーに向かって斜めに押し出される感覚に、私が後ろを振り返ってみれば、ウッドピラーは僅かばかり傾いていた。
原因が気になるが、今は距離を詰められたことを幸運だと思い、さらに距離を詰めていく。
そしてスケルトン・ヘクサーとウォリアーの眼の前に辿り着いた私は、もう一度ウッドピラーで身体を押し上げながら、前方宙返りで真下を見下ろし、弓矢を構える。
真上に盾を構える余裕は無さそうだ。
「跳ね喰らえ『飛貪矢』!……あ、そうだ――」
飛貪矢がスケルトンたちの首骨を砕いていく最中、私の頭には一つのアイデアが浮かび上がる。
「――『ウッドピラー』!!」
ウッドピラーは、高さ二バシスで頑丈な木の柱だ。
相手の頭上から落とせば、地面に落ちた頭蓋骨くらい砕けるだろうと考えた私は、空中で逆さまのままウッドピラーを発動した。
「お、おお?」
回っていく視界の中で、“下に向かって伸びていく”木の柱が、スケルトン・ヘクサーの頭蓋骨を圧し潰す様子を眺めて、私はウッドピラーを理解した。
この魔法は、私と同じ角度で伸びていくのだと。
空中で姿勢を整えて着地すると、呪術らしき影響は一切なく、先の一撃でスケルトン・ヘクサーは倒せたようだ。
それなら残っているのはスケルトン・ウォリアーだけであり、既にその首骨は砕いている。
「へっ、なんだ苦戦してたのかよ」
「追いつかれちゃいましたか」
「余裕だっての」
私が振り返った時には、ノクサラさんが加速移動を用いて合流していたようで、スケルトン・ウォリアーの頭蓋骨は踏み砕かれていた。
少し離れた場所からこちらに向かってくるアザレアさんは、余裕そうな雰囲気で歩いており、道中のスケルトンは倒しきっているようだ。
「スケルトン・ヘクサーを倒すのに、時間がかかっちゃいましたかね?」
「早いほうじゃね?」
「それならよかったです」
「近づきゃ動きを阻害されて、遠距離攻撃はウォリアーが防ぐ。面倒なモンスターだよ」
「ふふん、それなら発見がありましたよ」
「発見?」
「地面に触れないで移動すればいいんですよ」
「…それができりゃ苦労しないっての」
「というか、ノクサラさんはどうやって倒したんですか?」
「距離を詰めて、動けなくなる前に殴りきれば解決だ」
「…同じことできる人って、どれくらいいるんです?」
「まぁ…そこそこ?」
疑問形なんだ。
そうこうしていればアザレアさんも合流した。
「さっさと走って行かないでもらえますかね?」
「もうスケルトンもいないし別にいいだろ?」
「はぁ…わたしは非力な後衛なんですよ?」
「いざとなりゃコハクが突っ込んでいくだろうし、アタシには『縮地』があるからな」
「…まあいいですよ」
一息ついてから、改めて私の方へと向き直ったアザレアさんは、不思議そうな表情を露わにしてアーケイン・トリガーを見つめる。
「なんか、ウッドピラーが変わった挙動をしていましたよね?あれは…どういう風に使用したのですか?」
「下に伸びるやつですか?」
「はい、そうです」
「偶然の産物なんですよね。『私の前に』『私の足と同じ高さで』『二バシスの木の柱が伸びる』っていうのがわかったので、ウッドピラーを落下させようと思ったんです」
「なるほど〜、向きまでコハクさん基準になっているのですね。使いにくいようなら仕様を変更しますが、どうしましょうか?」
「これはこれで面白そうなんで、このままで大丈夫です。えへへ、素晴らしいプレゼントをありがとうございます、アザレアさん」
「っ!いえいえ、お安い御用ですよ。…でも、どういたしまして」
「それじゃあ、新しい戦い方も慣らしましたし、どんどん進んでいきましょうか!」
「おう」
「はい」
私たちは次の区画へと足を向ける。
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