23話 廃城塞を進む 2
スケルトン・ヘクサーは、呪術という攻撃手段を用いるスケルトンらしい。
前回この区画を攻略した際は、ノクサラさんがすでに倒していたため、私の交戦経験はない。
「スケルトン・ヘクサーがいたんで、戦ってきますっ!」
大声でノクサラさんとアザレアさんに伝えてみると、お二人は指で丸を作っており、単独行動の許可を得ることができた。
振り返ってみると、スケルトン・ヘクサーの姿は既にないものの、そう遠くへは移動していないだろう。
建物から降りて道を進んでいくと、ところどころにスケルトンが残っており、私を見つけると顎骨を鳴らして仲間を集め始めていた。
数が多くなり、囲まれてしまえば私の不利は確実だ。
真っ先にこちらへ向かってきたスケルトンの首に狙いを定め、私は武技を放つ。
「跳ね喰らえ『飛貪矢』!」
弦に押し出された矢がスケルトンの首骨を貫き砕くと方向を変え、別のスケルトンに向かって飛んでいき、再び首の骨を破壊した。
『飛貪矢』は、着弾点から跳ねて別の相手を狙い続けて飛んでいく、田畑を食い荒らす蝗のような武技だ。
今回の射撃では、五体目のスケルトンの首骨を破壊すると同時に矢が砕け散り、その役割を終えた。
「ふぅ…」
疲労の蓄積はそこそこで、連続使用は四回がせいぜい。
ノクサラさん曰く、私の武技はスタミナ消費が重いらしい。
ここぞ、という場面で使うのが大事なのだろうが、惜しんでばかりいては経験を積むことができないうえ、感覚が鈍ってしまうかもしれない。
上手く、的確に使えるようになりたい。
地面に転がる頭蓋骨や、動きの鈍くなった頭なしのスケルトンをノクサラさんとアザレアさんにお任せしつつ、私はスケルトン・ヘクサーを追うべく足を進める。
―――
スケルトンの処理をしながら進んでいくと、三体のスケルトン・ウォリアーを壁にして、こちらを伺っているスケルトン・ヘクサーを見つけることができた。
背丈ほどの大きな杖を携えたスケルトン・ヘクサーは、呪術という魔法を使ってくるようなのだが、どういったものなのかは皆目見当がつかない。
様子を見ながら距離を詰めていくと、スケルトン・ヘクサーは杖を掲げながら振り回す。
アザレアさんが使うような、属性の魔法が飛んでくると考えた私は、ジグザグな進行で相手を翻弄しようと試みたのだが、どうにもそれらしい攻撃は確認できない。
あれはスケルトン・ヘクサーの虚仮威しなのだと思った私は、ジグザグな走りをやめて一直線に距離を詰めていく。
飛貪矢で相手を一掃できる間合いに入った瞬間、私の足元には摩訶不思議な文字のようなものが浮かび上がり、身体に痺れが走る。
「―――っ!?『ウッドピラー』!!」
私の意思を無視して足が止まりたがるような、不快な感覚が込み上がってくる。
危険だと感じた私は、大急ぎでウッドピラーを展開し、無理やりなジャンプをする。
足元に浮かび上がった文字のような何かから離れれば、身体の不自由さから解放されたのだが、完全に攻撃のタイミングを逃してしまった。
しかし――
「――今のが呪術、かな?」
直接的な攻撃というよりは、こちらの動きを阻害することに特化した魔法なのだろうか。
…さっきの呪術の間合いが最大だとすれば、しっかりとした位置取りで確実に仕留めるのが無難かもしれないが、出方を窺って相手の手の内を探ってからの方が確実だ。
着地点に呪術が浮かび上がらないことを確認してから私は回頭し、再度スケルトン・ヘクサー目掛けて距離を詰めていく。
まずはもう一度、先ほどと同じくらいの距離まで踏み込んでみる。
すると、地面と接している足を中心に、身体に不調が伝播していくのが、呪術なのだと理解できた。
距離にして四〇バシス前後。
ウッドピラーを用いて身体を地面から離せば、呪術の影響は消え去る。
呪術の範囲から逃れた私は、スケルトン・ヘクサーの様子を確認しつつ、射撃の準備をしてみると、スケルトン・ウォリアーが盾を構えて警戒をし始めた。
…これを正面から突破するには、それこそノクサラさんの加速移動と、頭を直接砕くだけの力が必要なのだろう。
私も時間をかければ、あれらの対処は難しくないと思う。けれど、スケルトン・ヘクサーが多く出てきた際、時間をかけていては私が先に消耗してしまう可能性がある。
そうならないために、私はスケルトン・ヘクサーとウォリアーの組み合わせを倒せるだけの手段を考える。
飛貪矢を廃屋の壁で跳ね返し、相手の首骨を狙う。
これは一見手堅いように見えて、飛距離が伸びてしまうから矢の威力が損なわれてしまうので、イマイチだ。
跳ね返る際にも多少威力が減っているので、壁を使った攻撃は、相手との距離が限られる。
…地面に触れずに、距離を詰める。
私は、アザレアさんからのプレゼントである、アーケイン・トリガーに視線を向けてから、魔法を使う。
「『ウッドピラー』!」
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