23話 廃城塞を進む 1
「それではパワーアップの成果をご覧に入れましょう!」
「おぉー!」
アザレアさんのベルトを見てみると、そこにはアーケイン・プロキシが三つ並んでいるのだが、三色の内、二色が別のものに変わっていた。
「色が変わったということは、属性が変わった感じですか?」
「はい。炎と雷はスケルトンに通用せず、戦闘中に暇を持て余すことも多くありましたので、頭蓋骨を重さや威力で砕き潰せるものを選んできました」
茶色のアーケイン・プロキシが浮かび上がり、空中を動き回ると、今までのものと比べて高速化しているようだ。
「ではメインとなる攻撃魔法から。『ロックフォール』」
アザレアさんが詠唱を行うと、アーケイン・プロキシから五〇バシコン四方の岩が一つ発生し、勢いよく落下した。
地面と衝突した衝撃は、私の足にも伝わるほどで、その重さが理解できる。
「へぇ、結構デカいのを出せるんだな。魔力消費はどのくらいなんだ?」
「持続型の魔力消費なので、短時間なら少量に抑えられますね。このエリアでは、頭蓋骨を粉砕することをメインに使用する予定なので、相手の足止めとかは微妙になります」
「なるほどな、上手いこと考えんじゃん」
「魔法に関しては一日の長がありますから」
「おぉー、魔法はよくわかりませんが、すごいってことですね!」
「使い道を絞ったずるっこい魔法ってこった、くくっ」
「魔力消費を抑えて、長く戦闘をできるのが、一流の魔法使いだと思うのですがね?」
「魔法って、攻撃とか妨害とか、何かするだけでも魔力を消費するから、大変そうですよね。…私たちも武技を使わなくても、走ったり動いたりしている間に体力は消耗してしまいますが」
「ふふーん、管理が大切なんですよ、魔法使いは」
私が拍手を送ると、アザレアさんは胸を張り、自信満々に他の魔法を見せてくれた。
青色は今までどおりの氷魔法。茶色は岩魔法。
そして緑色は植物を生み出したり、操る魔法とのこと。
魔法というものは、たくさん種類があるらしい。
「そしてそして、こちらはコハクさんへのプレゼントとなります」
「プレゼントですか?」
アザレアさんは、アーケイン・プロキシとは異なる、円柱状の魔導具を取り出す。
手に収まるほどの大きさで、どこかに括り付けるためのフックが取り付けられている。
「こちらはアーケイン・トリガーといいまして、一つの魔法と一つの挙動に特化した魔導具となっています。魔力を練ることも、魔法としての指示操作をする必要もありませんから、気軽に使えるものですよ」
「いいんですか?」
「ええどうぞ。コハクさんは魔力が多めなようですし、使えるものは何でも使いましょう」
アーケイン・トリガーを受け取った私は、矢筒を身体に括り付ける紐にフックを引っ掛けてみる。
「ルーシッド・エデンから出たら、わたしの許に戻ってしまいますし、お昼に出た際、外で付け直ししましょうか」
「はい、わかりました。…ところでどんな魔法が使えるようになるんですか?」
「ウッドピラーという木の柱を作り出す魔法です。ぜひ使ってきてください」
「わかりました。…『ウッドピラー』!」
私が詠唱をすると、身体から自然と魔力が抜け出ていき、目の前には木の柱が作り出される。
高さは二バシスで、持続時間は三〇秒。
フローズンブルワークと比べると、横幅が狭くなっているものの、氷で蹄が滑ることもないだろう。
「ありがとうございます、アザレアさん。戦闘で役立ててみせますね!」
「調整が必要になったり、魔法の変更をしたくなったら、お気軽に相談してください。いつでも対応しますから」
「はいっ」
私はアザレアさんの手を握り、感謝の気持ちを伝えると、頬を紅潮させていた。
―――
通常区画にやってきた私たちは、新しい戦い方の慣らしも兼ねて、実力を惜しまずに戦闘を行う。
基本的には、私が駆け回りながら射撃を行い、首骨を射ち抜く。
すると、私を追ってきていたアーケイン・プロキシが、ロックフォールで岩を落としてトドメを刺した。
やはりアーケイン・プロキシの飛行速度が、今までとは比べ物にならないくらい上がっている。
けれど私が全力を出してしまうと、距離が開けるようなので、ある程度の調整をしながら連携をする必要があるだろう。
アザレアさんの視界に映っているスケルトンは倒し終わり、アーケイン・プロキシが戻っていったので、一旦単独行動に移ろう。
「『ウッドピラー』」
詠唱を行ってから一秒ほど。
ウッドピラーの生成される位置に立つと、私の身体が押し上げられて視界が高くなる。
そのまま、押し上げられた勢いをジャンプに用いれば、軽々と建物の屋根に登ることができ、周囲の索敵をする。
この区画はスケルトン・ウォリアーがほとんどを占めている。
けれど、前回の戦闘の記録を確かめれば、この区画にはスケルトン・ヘクサーという敵がいたはずだ。
ぐるりと周囲を眺めてみるも、それらしい相手は見当たらない。
…モンスターの配置というのは、必ずしも一致するわけではないのかもしれない。
索敵を切り上げ、建物から降りようとした時、廃屋の影に佇む、黒いボロ布を纏ったスケルトンを発見するのであった。
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