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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
夢を育む翼

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21話 廃城塞の陽炎 4

 私は、大鎧のモンスターとの距離を一定に保ちながら、足を止めることなく動かし続ける。

 走り続けなければ、大弓から放たれる暴風のような矢によって、ゲートに戻されてしまうからだ。


 相手の周囲を回ってみたものの、矢の通せそうな隙間などは存在せず、私の弓と矢では勝ち筋がないようにも思える。

 『啄鎧矢キツツキ』の貫通しやすい効果を用いて、相手の首骨を貫くという選択肢はあるのだが、足を止める必要があり、使用後に動ける保証がないため、大博打になってしまう。

 …この大鎧のモンスター相手なら、博打でも打たない限り勝ちの目は拾えなさそうではあるが。


 私の進行方向を狙った矢が、ドッと音を立て飛び去っていく。

 予想を立てて射撃してくる分、スケルトン・アーチャーとの格の違いが明らかなのだが、やはり大弓という取り回しの悪い武器を使っている以上、私を捉えるのは難しいようだ。

 それでも、私は走り続ける必要があり、相手は立射でこちらを狙うだけ。

 体力という面では、私に圧倒的な分の悪さがある。


 だけど、あれだけの大鎧と巨体だ。私を追いかけるのは難しいかもしれない。


「何とかなるかもしれないし、やれることは何でもやってみよう!」


 射撃の正確さなら自信がある。世界で一番、なんて自惚れるつもりはないけれど、それでも右に出る人は多くないはずだ。

 それこそ、この大鎧のモンスターにも負ける気がしない。


 私は、相手が構える弓に狙いを定めて、弦を引く力を強めながら、絶好の機会を待ち続ける。


「いまっ!」


 大鎧のモンスターが大弓に矢を番えて、弦がピンと張られたとき、私は弦から指を離した。

 私の放った矢は、相手の弓に当たらないギリギリの距離を進んでいき、緊張した弦に命中して断ち切る。

 矢を射ち出す寸前の弦だ。断ち切られた弦は暴れて鎧に傷を付け、込められていた力が暴発し、身体のバランスを崩していく。


 大きくよろけた大鎧のモンスター、その首元を狙って二の矢を射ってみるものの、首周りを覆う鎧に弾かれ効果がない。

 続けざまに三の矢を射ってみると、よろけていた相手は仰向けに転倒してしまう。


 簡単に転倒したことに対し、呆気にとられていた私だが、この好機を逃すわけにはいかない。

 一旦、足を止めて、弱点になりそうな場所を探っていく。


 脇や肘みたいな関節部は、鎖帷子が着込まれている。

 矢を当ててもイマイチかもしれないし、相手はスケルトンだ。関節を打ち抜いても効果は薄そう。

 股間や内股の部分も同様。


 頭鎧の目穴も、スケルトン相手で意味があるとは考えられないし、そもそも目穴はどこなのだろうか。


 全くと言っていいほどに弱点がない。

 全身鎧というのは、こうも厄介な相手なのか。

 ため息の一つでも吐き出したくなる気分だ。


 呼吸を整えながら観察を続けていくと、不自然な点に気がつく。

 そう、大鎧のモンスターが起き上がってこないのだ。

 起き上がろうと藻掻いているものの、鎧が重いのか苦戦しているように見える。


 起き上がれないのなら、これはまたとない絶好の機会かもしれない。

 私は周囲を見回し、足元に転がっていた人の頭ほどある廃屋の残骸を拾い上げ、全力で投げつけてみた。


「えいやっ!!」


 ゴンッ!と痛そうで鈍い音を響かせれば、大鎧には少しばかりの傷がついており、若干の凹みも見られる。

 有効打になるかもしれないと思った私は、重そうなものを重点的に拾い上げ、大鎧のモンスターに投げつけることにした。


 何度も投石を繰り返すと、相手にも焦りが生まれたのか、藻掻く動きが激しさを増していく。

 アノマリー『弱点特効』がある以上、弱点以外への威力が減少してしまう。この投石が意味をなしているかは不明だが、必死に藻掻いている以上は、最低限のものがあると信じたい。


「はぁ…結構、疲れる。……あれって」


 周辺の投げれそうな残骸がなくなるまで続けると、視線の先に大弓で射ち出す大矢を発見した。

 長さ二五〇バシコン(250センチ)の規格外な矢。

 槍のような矢だとは思っていたけれど、この状況なら槍として使えるのではないかと考え、私は一切の躊躇なく拾い上げる。


 羽根があると握るのに不便だ。へし折って丈を短くしてみると、少しばかり柄の細い槍のような感覚だ。

 元が矢だと考えると一抹の不安は残るものの、起き上がれない相手に対する追撃用だと割り切って使ってみよう。


「食らえ!」


 藻掻き暴れる相手に近づき、腕が届きにくい位置に立った私は、首元を狙って大矢を突き立てる。

 大鎧は重厚な金属だ。突いた衝撃が私の手にも伝わる。

 けれど、黒鉄で作られたやじりが丈夫なのか、首元の鎧が削れて破片が飛び散っていく。


 これ以上ない好機だと思った私は、何度も大矢を突き立てて、鎧を貫こうと試みた。


 そして何度目かの刺突で、鎧の首元に穴が空き、鏃が肉に刺さるような感触が手に伝わる。


「…え?」


 大矢を引き抜いて矢尻に視線を向けると、そこには赤い血液が滴っている。


「血…?」


 スケルトンというモンスターに血液は流れていない。骨のモンスターなのだから当然だ。

 では私が相手をしているのは何なのだろう。


 …ただ一つわかることは、相手をスケルトンだと決めつけ、啄鎧矢を渋ったのが裏目だったということだ。


 だが、鎧に穴を開けることに成功し、首元の攻撃が通るのなら結果的には同じ。私はとどめを刺そうと、大矢を振り下ろそうとしたとき、大鎧のモンスターは勢いよく腕を振るった。

 それを攻撃だと判断した私は、大急ぎで跳び退きながら大矢を捨て、弓矢を構える。


 大鎧のモンスターは、勢いよく振るった腕で自身の胴鎧を攻撃しはじめる。

 その狂気じみた行動に、私は追撃を加えることができず、ただただ弓矢を構えて身体を硬直させるばかりであった。


 そして、自身の胴鎧を砕き、頭鎧を脱ぎ去ったモンスターは、真の姿で私を見下ろす。


誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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