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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
夢を育む翼

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21話 廃城塞の陽炎 2

「ノクサラさんって、武技アーツの萌芽ってしたことあります?」

「ないな。ルーシッド・エデンに潜り始めたときには、もう徒手空拳のスタイルにしてたから」

「そうですか…」

「なんか武技の悩みか?」

「武技に関しては門外漢なのですが、一緒に悩むことはできますよ?」


 ノクサラさんとアザレアさんは、心配そうな表情で私の顔を覗き込んできた。


「すみません。悩みというには微妙なんですが、ヴァン・フェール対ワールドノーアーの映像で、第二第三の方々が弓の武技を使ってたじゃないですか」

「あー…アローレイン?矢が雨みたいに降ってくるやつ」

「はい、それです。第二と第三の弓使い、アルセルさんとフラレールさん、お二人がアローレインを使う映像を見せてもらったんですが、使えるようにならないなぁ…と思いまして」


 武技の萌芽というのは、同系統の武技を視認すると伝播する可能性がある。

 ただ、映像を何回か見させてもらったのだが、私は一向にアローレインを萌芽できていない。


「見たら誰でも習得できるんなら、魔法系の冒険者がもっと冷遇されてる」

「合う合わないもありそうですし、コハクさんにはコハクさんの武技があるはずですよ」

「まぁ、コハクにはアノマリーの『弱点特効』があるわけだし、その辺との相性もあるんじゃね?」

「なるほど…」


 私は相手の弱点を攻撃できないと、威力が十分に発揮されない。

 実際にスケルトン相手では、首骨を破壊できても、とどめを刺すことが難しく、ノクサラさんとの協力が不可欠だ。


 ヴァン・フェールのワールドノーアー戦と、アルセルさんとフラレールさんを撮影した映像。それらに映っていた、たくさんの矢が振り注ぐ光景は、派手であり見応えがあった。

 見栄えばかりを考えてもよくないというのは理解できるが、一目でわかりやすい派手さが欲しいと、私は強く思う。


―――


 第四区画と第五区画を一掃した翌日。

 私たちは閂をかけられた扉の前に立っている。


「朝一発目からつよい相手と戦わなくちゃいけないのは、ちと面倒だな」

「慣れてきたときが一番危ないって言いますし、背筋を伸ばして挑みましょう!」

「はいはい」

「うふふっ、そうですね。それではファミリオグラフを起動しますけど、今回はコハクさんに追従する設定にしていきます」

「わかりました」


 第三以外の閂区画では、少し身体の大きなスケルトン・ウォリアーに出会った程度で、そこまでの脅威ではなかった。

 閂区画での戦闘も撮影し、アザレアさんが編集と投稿をしてくれているのだが、プライム・ヴァーダントトードと比べると再生数は良くないらしい。


「はい、準備完了です。移動速度の調整や、魔力追跡の設定を変えておきましたから、振り払っちゃうことはないと思います」

「おお、そんなことができるんですね!」

「中身を弄れるのは、アザレアの強みだよな」

「いつもありがとうございます。お世話になりっぱなしですね」

「いえいえ、わたしにできることなんて、魔法と魔導具弄りくらいなものですから」

「私にはできないすごいことなので、もっと誇っていいと思いますよ?」

「そう…ですか。…それでは、胸を張ってみましょうかね」


 アザレアさんは嬉しそうに笑みを浮かべて、ファミリオグラフを浮かべる。


「そうそう、起動時間は短くなってしまっているので、長期戦になりそうなら、追従は切ってしまいますね」

「了解ですっ」

「んじゃ、サクッと終わらせて、次の区画を目指すか」

「はーいっ」

「はい」


 ノクサラさんは閂を放り投げ、力強く扉を押して進んでいく。


 第十九区画。

 そこは第三区画のような真っ直ぐな道の続く、大通りを彷彿とさせる構造となっていた。

 ただ、周囲の建物の背は低めで、足がかりさえあれば屋根の上を進めそうな構造をしている。


「真っ直ぐの道ですし、お城に近づけそうですね」

「んだな」


 一応、屋根上も警戒しつつ進んでいくと、道の先でなにかが光ったように感じた。


「何か、光った気がします」

「何かって―――」


 私の声に反応し、ノクサラさんとアザレアさんがこちらを向いた瞬間、ビュンという風切り音が耳に届き、お二人の胴を一本の矢が貫通し、姿を消してしまった。


「…えっ?」


 矢の着弾箇所に視線を向けると、長さが二バシス(2メートル)はありそうな、巨大な矢が突き刺さっており、私の体温が失われていくような感覚を味わう。

 そう、ノクサラさんとアザレアさんは一撃で倒されてしまったのだ。


「えっと……」


 気持ちを落ち着けて冷静になろう。


「ふぅー…よしっ」


 まずは、次に活かせるよう、情報を集めて帰ろう。

 そうじゃなければ、お二人の犠牲が無駄になる。


 矢の長さから考えると、弓の大きさは私の短弓とは比べ物にならないほどの大弓を使っているはず。

 射程も威力も段違いだ。

 けれど、大弓には大弓の弱点がある。取り回しの悪さと、弦を引くための力と時間だ。


 二の矢までの猶予があると考えた私は、地面に突き刺さった矢に向かって走り出す。矢を調べて相手の武器について知ろう。


―――


「え、ゲート…?」


 わたし、アザレアは困惑している。

 身体に痛みを感じた瞬間、視界が切り替わりゲートの出入り口である泉の前に立っていたのですから。


「クッソ、不意打ちか何かを受けたのか?」

「ノクサラもいましたか」

「アザレアも死んだのか。…コハクは…まだみたいだな」

「えっと…コハクさんが光を見つけたとおっしゃったのが、わたしたちの最後ですかね?」

「ああ、そうだ。何も見えなかったし、モンスターっぽいのは確認できなかったぞ?」

「ですねぇ。…コハクさんを待っていましょうか」

「だな。ファミリオグラフは戻ってきてるか?」

「いえ、まだコハクさんに追従していると思います」


 ノクサラから借り受けているファミリオグラフは、わたしの鞄の中にはありません。

 魔力が切れるか、コハクさんがゲートに帰還すれば、自然とカバンに戻ってくるはずです。


「何がいたんでしょうかね?」

「わからん」

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