21話 廃城塞の陽炎 1
「捉え、駆けろ『征空矢』」
氷の壁を足掛かりに、エリート・スケルトン・キャバルリーの騎乗者と馬、その首骨を貫けば、間髪入れずにノクサラさんが二つの頭蓋骨を砕いて、戦闘を終わらせる。
私たちは今、廃城塞エリアの第三区画でエリート・スケルトン・キャバルリーを倒していた。
デートから数日経って、廃城塞エリアのスケルトンが復活しており、私たちは振り出しに戻る形だ。
しかし、アザレアさんが地図を制作してくれていたこともあり、今回は先に進めるのかもしれない。
「ここのエリートスケルトンも復活してるんなら、今後の区画もだいたい復活してるんだろうな」
「廃城塞エリアに入ってから、今日で一〇日くらいでしたっけ?」
「そのくらいだ。他のボス級も一〇日くらいで復活するから、このエリアもそういう仕様ってことだ」
「その期間内に攻略を終えるか、次の出入り口小屋を見つける必要があるんですよね?」
「ああ、そうだ」
前回のことを考えると、なかなか難しそうだ。
「昼過ぎに第三区画を攻略しきれたのは大きいかもしれませんね。前回とは異なり、コハクさんもノクサラも無傷ですし」
「スケルトンの相手に慣れてきましたからね!」
「慣れてくりゃ、消耗を抑えながら戦える楽な相手ではあるな」
「首骨を打ち抜くのは任せてください!」
「なんともまあ物騒な発言だが…」
「うふふ、コハクさんの腕がなければ、このエリアは苦労しましたね」
胸を張ってみれば、ノクサラさんは呆れ顔を露わにし、アザレアさんは楽しそうに微笑んでいた。
「それで、進み方はどうしますか?前回と同じ道順でもいいと思うんですけど、前回に進まなかった閂の掛かった区画を進むのもいいかなって」
「地図を出しますね」
「お願いします」
アザレアさんは、今まで書き込んでいた手帳ではなく、板状の魔導具を取り出して、操作を行う。
「それは魔導具ですよね?地図なんですか?」
「そうですよ〜。手書きの地図を精査しつつ、魔導具に落とし込んでおきました」
「おぉ!流石、アザレアさんです!」
「ふふっ、ありがとうございます。…よし、コハクさんの魔力をお借りしたいのですが、問題ありませんか?」
「いいですよ。魔力を使うことなんてほとんどないので」
「それではパスを繋ぎますね」
「どうぞ?」
パスとはどういうものなのかはわからないが、アザレアさんが手の平をこちらに向けてきたので、私の手を重ね合わせてみると、ほんの僅かずつ魔力が流れ出ていく。
「魔力量に問題はありませんか?」
「はい、全然大丈夫です。もっと多くても問題ないくらいです」
「えっ?そうなんですね、それではお言葉に甘えちゃいますけど、厳しくなったら教えてくださいね」
「わかりました」
流れ出る魔力量は多くなったが、何の問題もない程度。私はアザレアさんに笑顔を向けた後に、魔導具へと視線を戻す。
「このアーケイン・パネル、魔力消費量が多くて使い勝手が悪いのですが…まあいいでしょう。今映し出しているものが、先日まで攻略をしていた第十八区画までの道順です。配置に関しましては、測量をしたわけではありませんので、違和感がない程度のものとなっています」
「おぉ!これって追加で書き加えたりはできるんですか?」
「ちょっとお時間を貰えれば、可能です」
「なら、目測なんですけど……この位置に崩れたお城があります。各区画で位置を確認していたので、距離と角度はそこそこの精度がありますよ」
「ほう。なら一つの区画の大きさはどうだ?結構走り回るし、認識とかできてないのか?」
「…弓矢の射程を元に広さの把握はしてますけど、建物があるのでちょっと自信がないです」
「崩れた城への距離には自信があるってことだが、地図の縮尺を元に考えた距離ってことでいいのか?」
「はい、そうです」
「そうなりますと…前回のわたしたちの道順は、それなりに逸れていますね」
「閂区画は避けてたりしたしな」
「こことここ、それにここにも閂区画がありましたし、お城への距離を縮めるには閂区画を通らないといけない感じですかね?」
私が地図上で示した場所は、中央にあると思われるお城へ向かえそうな道。
前回の冒険は安定志向で進んでいたため、閂区画は最低限であった。
「稼ぎがいいから通常区画を優先してたが、今回の冒険は閂区画を優先的に進んでみるか」
「やった!」
「便宜上の名前はどうしましょうか?第五区画から分岐することになりますけれど」
「私たちが使うだけですし、続きの…十九区画でいいと思いますけど、どうですかね?」
「それもそうですね。それでは先を目指しましょうか」
「はい、わかりましたっ!」
アザレアさんが魔導具を操作して、目的地を追加していく。
「これって私にも操作できるんですか?」
「覚えることは、さほど難しくありませんよ」
「それなら覚えたいです。アザレアさんとノクサラさんは戦闘で魔力を使いますから、私が担当したいんです」
「うふふ、かしこまりました。コハクさんは高所に登ることも多いですし、お任せしたいと思います。それでは基本からお教えしますね」
「ありがとうございます!」
私はアーケイン・パネルという魔導具を受け取り、アザレアさんから操作方法を教えてもらう。
「あれ?アザレアさんを通して魔力を使ってもらうより、そのままの方が軽いんですね」
「無駄がなくなりますから」
アザレアさんは名残惜しそうな表情で、私の手を離そうとする。
…スキンシップという触れ合いが好きな人もいると、ジェルブ・ドールで聞いたことがあるし、アザレアさんもその一人なのかもしれない。
それくらいなら問題ないし、アザレアさんへのお礼になるかもしれない。
離れていく手を追いかけ、しっかりと繋いでみると、アザレアさんは困惑の表情を浮かべながら、顔を真っ赤に染めていく。
嫌がられたのなら離すべきなのだが、そういった様子はないので、手を繋ぎながらアーケイン・パネルの操作を習う。
「なぁ…手ぇ繋いでて操作しにくくないのか?………別に離れろなんて言わんが」
ちょっと不機嫌そうなノクサラさんは、私の肩に顎を乗せて、アーケイン・パネルを眺めていた。
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