3話 山林エリア 2
最初の一匹を倒した私は、矢を回収し、次の相手へと狙いを定めながら駆け出す。
そして、確実に仕留められる間合いに入ってから矢を放つことで、二匹目も倒した。
木々によって風が遮られているのか、矢の調子が非常に良く、狙った場所に確実に届く感覚は、絶好調そのもの。
狩猟の日であれば、猪でも狩れそうなくらい、今の私は調子がいい。
犬はこちらに向かってくる。
相手が早めに気がついたのなら、方向転換をして身体の左側面を相手に向ける。
…食いついてきた。なら後は、走る速度を調整して、放つ。
風を切った矢は犬の首を射抜き、狙い通りの結果となった。
「よし、完璧!」
私は的打である、射付が得意だ。
立射も歩射も奔射も、叔母さんから教わって鍛えた大切な技術だ。
けれど、このパラデイソポリスでは時代遅れだし、配信に求められている派手さはないらしい。
神事の催事だと、見に来てくれた皆は喜んでくれてたのだけど。
「カッコよさが必要なんだろうけど、どうしたらいいのかな」
疑問を口にしながら射った矢を回収し、状態を確かめていると、不思議なことに矢は使用前と変わらず綺麗なままで、手入れをしなくても再利用ができるほどだ。
「結構本気で射ったんだけど…もしかして」
私は回収した矢を番え、手頃な木の幹に狙いを定めて弓を引く。
パッシュ、と音を立てた矢は、木の幹に突き刺さるのだが、やはり劣化の兆候は見られない。
周囲にモンスターがいないことを確認した私は、同じ矢を何度も木の幹に射ち続けてみると、九射目で矢が砕け消滅してしまった。
「壊れるまでは同じ状態を維持できるなら、すっごい便利だ」
回収した矢の状態をいちいち確認しなくていいんだから。
となれば黒曜石みたいな、鋭いけど脆い材質の鏃も視野に入るのかな?
…でも黒曜石って運搬の最中に割れちゃうんだよね。
弓に番えた矢を指に乗せ、弦をゆっくりと引いて六〇バシスほど先にいる犬に狙いを定める。
「ふぅー…」
後ろからの微風。
私の弓は短弓だけど、立射ならこれくらい狙えるはず。
――今だ。
矢が放たれると、目標に吸い込まれるように進んでいき、首を射抜いて倒すことができた。
「…カッコいいと思うんだけどなぁ、弓」
―――
二時間ほど、近くの犬を倒していた私は、他の冒険者が冒険者証明書を手に取り、何かを確認している姿を見かけた。
不自然にならない程度に遠くから眺めていると、文字が浮かび上がっており、何かを確認しているようだ。
私も試しに取り出してみると、手のひらに収まる程度の証明書の裏側に光る文字が浮かび上がっている。
「なんだろう、これ?」
興味本位で触ってみると、『フェラルドッグ 四〇匹 八〇スコア』という表示が浮かび上がる。
ルーシッド・エデンでモンスターを倒すと、高純度魔石のかわりにスコアが手に入るんだった。
八〇スコアがどれくらいのお金に換金できるかはわからないけど、こうして成果が確認できるのは、ちょっと楽しいし、やる気に繋がる。
そういえば、アザレアさんが『遠くに行くとモンスターが強くなる』って言っていた。
フェラルドッグはそこまで強くないし、もうちょっとだけ冒険して、スコアを稼いでみるのも選択肢かな。
―――
私は今、開始地点の小屋からは二〇〇バシスほど移動した地点にいる。
そこまで視認性が良くない場所だけど、山肌を下っていけば平地になっている可能性は高い。
平地にならなくても裾野なら傾斜は緩やかだ。
でも私…いや私たち榾火の皆は、他の種族と比べて山林みたいな地形が得意だ。
それに相手がフェラルドッグみたいに野生動物に近い相手なら、山林のような地形への慣れを活かして、有利に運べるかもしれない。
大熊でも出てこない限りは。
それから私は、フェラルドッグを倒してスコアを稼ぎながら、斜面を登っていく。
すれ違う冒険者は皆、下を目指しているので、私は他の人とは違うことをしているのだと自覚させられる。
でも、成果を出すのなら得意な環境で挑むべきだと、私は思った。
実績があれば、クランの面接にも受かるかもしれないから。
なるんだよ、私は…スター冒険者に!
「うぉぉあああぁぁぁ!!」
「誰か、助けてくれェ!!!」
叫び声を聞いた私は、声の方へと顔を向けて状況を探る。
距離は…三〇〇バシスくらい先だけど、助けに向かっていいのかな。
『他人の獲物の横取りは、マナー違反』って、宿の冒険者さんが教えてくれたけど…。
でも、さっきの声は助けを求める声だった。
相手に怒られたら謝罪をすればいいし、今は助けに向かおう。
私は、声の方へと駆け出す。
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