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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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17話 視聴会 2

 映像が流れて、私の挨拶が始まるとキング・ヴァーダントトードの部分に、『※プライム・ヴァーダントトードでした』という注釈が入っている。

 なるほど。こういう訂正を、しっかりと編集で入れることが重要なのかもしれない。


 挨拶が終わり、戦闘の場面へと切り替わると、全体を映すべく引いた画角の映像が流れていく。


「なんつーか、ちと見づらいな」

「操作のしやすさと、いざというときのためにに追従させていたのですが、やはりコハクさんを中心に撮影したほうが良かったですかね?」

「かもなぁ」

「ただまあ、コハクさんの速度的に追えなくなる可能性はありますが…」


 ノクサラさんやアザレアさんはファミリオグラフに近く、しっかりと映っているのだが、私はプライム・ヴァーダントトードの視線を切りながら動いていたため、姿が小さい。


 そして一つの気付きがある。

 頭部に突き刺さった矢へと、ノクサラさんが踵落としをする場面、ここは非常に派手で見応えがあったのだが、それまでの私は一定の距離を保って矢を放つばかり。

 『地味』という言葉がよく理解できる。


 その後の展開でも、私が動きすぎていたせいか、映像として追いかけづらくなってしまっているようだ。


「その、すみません、コハクさん。ファミリオグラフを使いながらの戦闘は慣れておらず、見苦しい映像ばかりになってしまいました」

「いえいえ、全然問題ありませんよっ。フローズンブルワークを使った空中への退避とか、そこからの高い視線の映像とか見応えがあるじゃないですか」

「ですがコハクさんの出番が少なくなってしまっていて」

「これからの課題ってことですし、私は頑張りますよ」


 アザレアさんの表情は優れない。

 気負わせてしまったようだ。


 しかし――


「被写体っていうんですか?その、撮られる側の意識が必要なんでしょうか」

「そうだな。今後はそういった意識が必要になるかもしれない」


 ライバーというのは、ただボス級モンスターを倒せるだけではダメらしい。


 そうして戦闘の最後、私がプライム・ヴァーダントトードの舌を『征空矢はやぶさ』で射抜き、『啄鎧矢きつつき』で心臓を潰す場面がやってくる。

 相手を踏み台に宙返りをしながらの射撃を観たアコアさんは、「おぉー…」と感嘆の声を漏らしており、誇らしい気持ちが熱となって体中に広がっていく。

 啄鎧矢にてプライム・ヴァーダントトードが消滅すると、アコアさんは難しそうな表情で首を傾げた後に、満面の笑みで拍手をする。


「やっぱりコハクっちは見込みがあるッスね!」

「そうですか!?」

「しっかりと鍛えられた柔軟な筋肉があるのにも関わらず、ウチとかヒッポフォロスみたいな大型四足とは比べ物にならない身軽さがあるッス。……瞬発力なら…全種族で一番なんじゃないかって思うんスよ」

「へぇ、コハクのことよく見てるじゃん」

「同じ四足ならではッスよ。むしろ、二足種族なのにコハクっちと組もうと思ったお二人の慧眼が、ピッカピカに光ってるんスよ」


 アコアさんは歯を見せながら笑みを浮かべている。


「映像の映り方とか撮り方とか、ウチにはそういうのはわからないんスけど、今後の活動にはめっちゃ期待してるッス、ファンの一人目として」

「ファン!ありがとうございます!」


 私がアコアさんの手を握ろうとすると、ノクサラさんとアザレアさんが間に立ち、険しい表情を浮かべる。


「コハクのファンになってくれるってのはうれしいが、第一号ってのは捨て置けねえな。アタシは冒険者として、初めてコハクとパーティを組んだんだぞ、アタシが第一号だろう?」

「いやいや、コハクさんの冒険者登録を担当したのはですし、その時からコハクさんの可能性に気がついていました。じゃないですか?」

「はぁ〜、なんなんスか、お二人さん?…別に何番目でもいいんスけど、ウチはコハクっちが冒険者になる前から知ってるんスよ?張り合うのは弱くないッスか?」


 …なんだろう。大変なことになってしまった。


「その〜…順番とかどうでもよくないですか?」


「コハクは静かにしていてくれ」

「これは大変な話題なんです」

「いやいや、推しの忠告は受け入れるべきッスよ」


 三人があれこれ話し合ったのだが、最後まで決着がつかないままで、私のファン第一号の話はなかったことになった。

 …この話題は今後避けよう。


 それはそれとして、映像で戦闘を振り返ることで、ライバー冒険者としての今後の課題は見えてきた。

 今すぐに解決できることでも、一朝一夕で身につく技術でもないけれど、スターになるための道筋を考えることができたのは、大きな一歩だ。


 この程度じゃ、へこたれてやらないぞ。


―――


「そいじゃウチは失礼するッス。食費をバリバリと稼がないといけないんで!」

「はい、頑張ってくださいね!」


 ピンと耳を立てたアコアさんは、独特な形に手を交えてから私に一礼し、ゲートに潜行した。


「私たちも行きましょうか、スケルトン退治に!」

「おう」

「はい。…そうだ、地図を製作しながら進みませんか?廃城塞エリアは入り組んでいそうでしたので」

「おぉ、いいアイデアですっ。紙とペンを買ってきましょうか」

「もう用意してありますよ」

「おぉ、ありがとうございます、アザレアさん」

「お安い御用です」


 私たち三人は廃城塞を突破すべく、冒険を再開する。

 こっちもこっちで課題の多い相手だけれど、戦闘方法は確立できたから、進めるだけ、進んでみよう。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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