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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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17話 視聴会 1

 私たちが第六ゲートに戻ってくると、ちょうどお昼時だったようで、ラウンジが混み始めていた。

 私がスコア換金窓口に視線を向けると、そちらもそれなりに混んでおり、カバンからお財布を取り出して中身を確認する。


「今日は弁当無いのか?」

「いえ、スケルトンからの稼ぎが多かったので、一品くらい追加しても良いかなぁって思いまして」

「めっちゃ食うのな」

「ルーシッド・エデンってお腹減りません?」

「まあ減るけど」


 一品追加くらいなら問題なさそうな残金だったので、今日は私も売店に向かってみることにした。


「お二人のおすすめはなんですか?」

「葉物のサラダ」

「ヘルシーチキンです」

「健康的なおすすめですね…」

「むしろコハクがガツガツと食い過ぎなんじゃね?」

「コハクさんって健啖家ですよね」

「否定は…できませんね」


 エラフォロスは二足種族と比べると食事量が多いのだが、それを加味してもお二人は食が細い気がする。

 売店に並んでいる商品を眺めていると、美味しそうなものがたくさん並んでおり、視線を動かす度に目移りしてしまいそうだ。


「サラダとかヘルシーチキンが嫌ってわけじゃないんですけど、ガッツリいくなら何がいいですかね?」

「かつサンドが人気ですよ」

「とりあえずでいくなら、かつサンドだな。特におすすめがチキンかつサンドで、サクサクの衣と甘酸っぱいソースが美味いんだ」

「おぉ、いいですねっ。じゃあチキンかつサンドを試してみます」


 チキンかつサンドは一五〇〇カルタ、まだまだ高級な買い物だが、こういった贅沢もたまにはしたい。

 お二人がおすすめするチキンかつサンドに胸を躍らせながら、私は席につく。


 いつも通りに女将さんの作ってくれたお弁当を広げつつ、隣にチキンかつサンドを置くと、ノクサラさんとアザレアさんは遠い目をしてしまう。

 身体を作るのは食事なのだから、たくさん食べたほうがいいと思うのだが、人それぞれ異なる考えがあるようだ。


「それじゃあ、いただきます」


 私と異なり、お二人は軽くお祈りを捧げて、食事を始める。


 まずはチキンかつサンドだ。

 せっかく買ったのだから、空腹で食事が一番美味しく感じられる一口目に味わいたい。


 パンの表面はカリッとしていながらも、握る感触はもっちりとしているので、表面だけを丁寧に焼いているのだと伺える。

 口に近づけた際に鼻腔をくすぐるリンゴやタマネギ、それとお酢の混ざったような香りは、私の食欲をより刺激し、思わず口を大きく広げてしまう。


 サクッ、もちっ、じゅわっ、とチキンかつサンドを構成する層を断ち切ると、口内に広がるのは甘酸っぱいソースの風味と、肉から染み出す旨味。


 お二人がおすすめする理由がよくわかった。


「とっても美味しいですねっ!」

「だろ」

「コハクさんのお口にあったようで何よりです」

「食いすぎると太るけどな」


 紙箱には四切れが入っているのだが、見た目よりもボリュームがありそうで、食べ過ぎ注意というのも納得だ。


 チキンかつサンドはいい発見だ。余裕があれば再び購入しよう、そう思わせてくれる一品だった。


―――



「ではでは食事も終わったことですし、プライム・ヴァーダントトードとの映像でも確認しましょうか」

「はいっ、待ってました!」


 アザレアさんは小さめの黒い板のような魔導具を取り出して準備を始めるのだが、その様子を見ていたのか、一人の冒険者が声をかける。


「なんか観るんスか?」

「アコアさん、こんにちは。先日、プライム・ヴァーダントトードと戦いまして、その戦闘を撮影していたんです。もしよかったら一緒に観ますか?」

「おー、コハクっちの活躍、観たいッス」


 ティグリフォロスのアコアさんは、大量の食料を腕で抱えながら、私たちのいるヒッポフォロス向けの席に座る。


 その場のノリで誘ってしまったが、ノクサラさんとアザレアさん的にはどうなのだろう。

 私が視線を向けると、ノクサラさんに気にした風はなく、アザレアさんも微笑んでいるのみ。

 問題はなさそうだが、次からはしっかりと許可を取ろう。


「なあ、アコア・マカニ。…あんたはそれを、全部一人で食べるのか?」

「そうッス。ウチらティグリフォロスは身体がデカい分、たくさん食べないといけないんスよ」


 食事量は私の二倍から三倍ほど。

 ヒッポフォロスの皆さんも同じ程の量を食べているので、四足獣人の中でエラフォロスは少食の部類になる。


 食べ始めると早いもので、豪快な食べっぷりは気持ちよさがありながらも、可愛らしい衣服を汚すことはなく、しっかりとしたこだわりがあるのだろう。


 その食事っぷりに目を瞬かせていたノクサラさんとアザレアさんは、気を取り直して魔導具に視線を戻した。


「プライム・ヴァーダントトードってどこにいたんス?」

「エリア七四なんですけど、順路は一、五、十八、七四って感じです」

「へぇ〜、近くにいたんスね。スコアいくらでした?」

「一人二〇〇〇なんで、六〇〇〇です」

「なるヘソ」


 アザレアさんが準備を終えると、魔導具に映像が映し出され、私の挨拶が流れていく。


「おおお!私がいますよ!すごい!スターみたいです!」

「落ち着け落ち着け、これくらいで大はしゃぎしていたら、体力が持たないぞ」

「そ、そうですね…!」


 私の映った映像。

 ただそれだけで、夢に一歩近づけた気がして、私の胸の中に火山ができたかと思うほどであった。

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