16話 廃城塞エリア 3
ノクサラさんの近くまで後退した私は、急停止しつつ反転しスケルトンというモンスターを観察する。
そう、冷静に。
顔と頭部以外の部分は、鎧で覆われて隠れてしまっているが、硬い物同士がぶつかり合う音が聞こえることから、身体も骨だ。
鎧に関しては、明蝉国の神事で見かける儀礼用より、金属が薄そうな印象がある。
まずは、矢で鎧を貫通できるかを確かめてみよう。
二足種族の心臓があると思しき場所に、矢を一本射ち込んでみるが、見た目以上に硬い鎧らしく、矢は弾かれて道端に転がる。
「鎧付きのスケルトンはめちゃくちゃ硬いんだよ」
「みたいですね。でも頭蓋骨に矢が刺さりましたよ?有効かどうかは別ですけど」
「とりあえず頭を砕けば一撃で倒せる。コハクは武装解除なんかをやってみろ」
「はいっ」
ノクサラさんに指示を貰うことになってしまった。
リーダーになるにはまだまだ難しいようだ。
「…気負うな」
「そうですよ」
「わかりました!」
気負いすぎず、やれることだけをやろう。
立射の構えを取り、迫りくるスケルトンの群れから、腕や肩を射ち抜けそうな相手を探していく。
斧と盾のスケルトンはノクサラさんとの接触寸前で、射撃をねじ込むのは危険だ。
なら後方から走ってくるスケルトンを狙う必要がある。
まず私が狙ったのは槍を携えたスケルトン。
鎧は胴当てのみで、肩や肘、膝などが露出して狙いやすい。
それなりに距離があるので、大まかに狙いをつけて膝を射ってみると、運よく膝の皿に命中したのだが、僅かにヒビが入った程度で有効打ではない。
次は限界まで弦を引き、威力が出るようにして肩に射撃をしたのだが、こちらも決定的な攻撃とはならず、ただ突き刺さっているのみである。
…すごく相性が悪い、弓矢とスケルトンは。
啄鎧矢を使おうにも心臓は見当たらないし、現状確認できる有効な部位はない。
…頭蓋骨には矢が刺さるし、倒せるまで狙い続けてみようか。
私が槍スケルトンの頭を狙い射っていると、ノクサラさんが斧と盾のスケルトンの鎧を拳で殴り、姿勢を崩した瞬間に首への追撃が行われる。
軋むような音を出した骨は、ノクサラさんの膂力を受け止めることが叶わずひび割れていき、粉砕してしまう。
その後、地面に落ちた頭蓋骨も同様で、踏み潰され砕け散ると全身が消滅した。
厄介とは何だったのか、と思わなくもない。
しかし、ノクサラさんの拳を受けて、よろけるだけで済んでいるのだから、随分と強固な鎧のようだ。
私が八本目の矢を頭蓋骨に射ち込むと、槍スケルトンの頭蓋骨が砕け散り、消滅していく。
順当に倒す手段に乏しく、相性の悪さを嘆きたくなったが、戦い方による有利不利は誰にでも付きまとう。
それこそノクサラさんも、ダイブウィングの相手は私たちに任せていた。
パーティとは、そういった状況を補い合う仲間なのだろう。
けれど、お二人に甘んじてしまうのは何か違う気がする。
ノクサラさんがスケルトンの対処をしている間に、矢筒の矢を移し替え、私は次の手を考える。
肩に矢が刺さることを考えれば、何度も同じ箇所を狙うことで武装解除は可能だ。
しかし、それなら頭鎧のない相手を選んで、頭を砕く方が現実的だろう。
そうこうしている間に、ノクサラさんは腕を横に広げて走り込み、腕打ちをしてスケルトンの首を無理やりに折っていた。
すっごいパワフルだ。
そんな姿を見た私は弓を構え、スケルトンの首に狙いを定めて、弦から指を離す。
私の本能が『喉を砕ける』と背中を押してくれた気がした。
狙い通りに進んでいった矢がスケルトンの喉を捉えると、その先端が黄ばんだ骨を粉砕し、頭部を切り離して突き進んでいく。
「よしっ!…私はスケルトンの首を破壊しますので、ノクサラさんに後処理をお願いしてもいいですか?」
「おう、任せな」
ノクサラさんは足元に転がっていた矢を拾い上げ、私に手渡してはスケルトン討伐に戻っていく。
…スケルトンの数が増えている。
遠吠えのような大きな声を出しているわけでもないのに、あちらこちらから姿を現している状況だ。
ノクサラさんに負担をかけないよう、私も戦闘を再開するのだが、スケルトンと比較しても私の背は低く、胴鎧の首周りが射線を遮ってしまう。
周囲を見回し、手ごろな踏み台に飛び乗った私は、ノクサラさんを援護すべく、矢を射掛ける。
私には特異性質が備わっているらしい。
弓矢の特性について、ヴァン・フェールのアルセルさんとフラレールさんに相談したところ、アノマリーであろうという結論に達した。
その名も『弱点特効』。
短弓と軽い矢でも威力が出せることから、そういったアノマリーでないと説明がつかないのだとか。
ルーシッド・エデンの特殊な事情には明るくないが、持てる力は活用しないと、目立つことも難しいはず。
私は的確に弱点を狙って、活躍をしていくんだ。
アザレアさんが氷壁を作り出し、スケルトンたちの進行方向が制限され、自然と正面から首を狙いやすくなる。
一発一発を確実に射ち込み、ノクサラさんが止めを刺せるように首を破壊していけば、三〇体弱のスケルトンを倒しきることができた。
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