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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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14話 ヴァーダント・トード 5

 キング・ヴァーダントトードの口が動き、舌撃が繰り出されるのだと理解した私は、えびらに残った矢を二本取り出しながら駆け出す。

 何ができるのか、何をしたらいいのか。私の目的を見つけることができないが、『それでも』と身体は動き続けた。


 ノクサラさんたちが着地するのと同時に舌が飛び出し、その舌の先端がお二人を捕らえてしまう。


「クッソ、気持ち悪いんだよ!」

「きゃぁ!?『サンダーダーツ』!『サンダーダーツ』!!」


 アザレアさんの放ったサンダーダーツは、集中力を欠いているのか舌を狙った雷撃は外れていく。


 そんな姿をお構いなしに、キング・ヴァーダントトードはお二人を捕食しようと舌を引っ張るのだが、ノクサラさんが地面に足を突き立てて抵抗を試みる。


 だが、相手の巨体を考えれば、今の状況を維持するのは難しいだろう。


 私は全速力で地面を蹴り進み、キング・ヴァーダントトードの背中に生える草叢くらむらを踏み抜け、空中に躍り出る。

 そのまま前方へ身体を捻れば、ちょうど視線上に伸び切った舌を捉えることができ、弓の弦を力いっぱい引き絞った。


 その時だ。

 弓と弦を握る両手に、何かを掴み取れそうな感覚が走り抜けていき、私は胸の奥底から沸き上がる言葉を口にする。


「捉え、駆けろ『征空矢はやぶさ』!!」


 放った矢は、落下する軌道の中で強烈な加速をし、目で追えない速さで舌に命中する。

 ピンと張られた舌は、征空矢の一撃により穴が空き、ノクサラさんとの力比べてによって引きちぎれてしまった。


「うおあああっ!?」

「きゃああ!?」


 私以外の全員が吹き飛ばされる中、私は姿勢を整えながら最後の一矢を弓に番えながら着地し、身体を反転させる。


 キング・ヴァーダントトードは、衝撃により一回転したのか、少しばかり距離があるが…私なら問題ない。


「貫き穿て―――」


 相手の鼓動が手に取るようにわかる。

 この武技は水膜すら貫通できるかもしれないが、不要なリスクは必要ない。


 狙うのは一つだけ。


「―――『啄鎧矢きつつき』!!」


 私は僅かに姿勢を低くし、千切れた舌がはみ出る口を目掛けて啄鎧矢を放つ。

 狙い通りに空を穿った矢は、キング・ヴァーダントトードの口から侵入していき、鼓動する心臓に命中する。


「―――!?ッ!!!」


 矢の通り道である口から、噴水のように血液が溢れ出したキング・ヴァーダントトードは、両目をギョロギョロと動かした後に私を捉え、跳躍を行う。

 いや、行おうとした。


 跳躍をするために伸びるはずの後ろ脚は、湿地の土を掻いたばかりで跳ぶことは叶わず、そのまま消滅していく。


「お二人とも大丈夫で、ふぎっ!?」


 ノクサラさんとアザレアさんに振り返ろうとした私は、全身に走る電撃のような感覚に身体を強張らせ、そのまま横転した。

 『征空矢』と『啄鎧矢』を短時間で使った反動が押し寄せたようだ。


 指の一本も動かせずにいると、ビシャビシャの泥まみれになったお二人が私の許まで歩いてきて、ゆっくりと腰を下ろした。


「よくやったな、コハク」

「お疲れさまでした、コハクさん」

「…ご無事で何より、です」


 どうやら、さっきの衝撃で池に落ちてしまったようだ。

 そんなお二人は、私を労うように優しく頭を撫でてくれる。ただ、泥のついた手なので、当然汚れてしまうわけで。


「あのー…髪が汚れるんで、撫でるのは後がいいんですけど…」

「おぉ〜?コハクのくせに生意気になりやがったな」

「えーい、コハクさんの髪を泥だらけにしちゃいますよ〜」

「わ、わぁぁ〜…」


 ルーシッド・エデンを出れば元に戻るので、汚れてしまったところで何の影響もない。

 私はただ、軽口を言ってお二人とのコミュニケーションを楽しむ。


―――


 しばらく休んだ私は身体が動く程度に回復し、お二人と一緒にキング・ヴァーダントトードが消滅した場所を眺める。


「ボス級ってこんなに強いものなんですね」

「これくらいのエリアなら、もっと楽なんだけどな」

「今回は…特異種の中でも巨大化と能力有りの、盛々なボスでしたからね。一対一では対処が難しい気がします」

「前提として水膜の解除をしつつ、あの巨体と渡り合わないといけないんだ。ソロじゃ難しいなんてもんじゃない」


 お二人がそう感じるのなら、よっぽどの強敵だったのだろう。


「私たち三人の力を合わせれば、強い相手にも勝てるということですね!…あっ、そういえば撮影してるんでしたね」


 私はアザレアさんの近くで浮遊するファミリオグラフに視線を向け、お二人の手を取り固く握る。


「三人の力を合わせることで、エリア七四のキング・ヴァーダントトードは討伐成功です!今後も頑張って活動しますので、これからもよろしくお願いします!それでは〜」


 泥んこ三人組になっている私たちは、握っている手を揺らしながら、撮影を終える。


「…なんで手を握ってきたんだ?」

「三人で倒したんで、そのアピールです。嫌でしたか?」

「別に」

「私はとっても嬉しいので、次からもこの方法で締めましょう」

「いいですね!」


 ぶっきらぼうに顔を背けたノクサラさんと、満面の笑みで受け入れてくれたアザレアさん。

 お二人となら、どんな相手にも負ける気なんてしない。


「いやぁー、それにしても強敵でしたねっ」

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