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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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14話 ヴァーダント・トード 1

 朝、目が覚めると、アザレアさんの寝顔が目の前にあって、私は驚いた。

 記憶を掘り起こしてみると、作戦会議の後にお酒を飲み、そのまま眠ってしまったみたいだ。


 アザレアさんを起こさないように人体を起こし、立ち上がろうとすれば、後ろにノクサラさんが寝ていたことに気がついた。

 一緒に飲んでいたのだから不思議なことではないのだが、ノクサラさんは別の場所で寝そうなイメージがあったので意外だった。


「…おはようございます」


 蹄の音でお二人の眠りを妨げないよう、細心の注意を払いながら部屋を出ると、今は早朝五時前のようだ。

 いつもどおりに起きれた私は、真っすぐに厨房へと向かい、清掃を始める。


 私は少女巫おとめみことして、竈殿へついどのの清掃をしていたし、家の台所の掃除もよくしていた。

 ジェルブ・ドールの厨房は、魔導具が多く設置されており、薪を使うような竈もパン焼き窯くらい。

 毎日、カルチャーショックを受けている。


 端から端まで掃除を終えると、昨日は食器の片付けをせずに寝てしまったことに気がついた。

 お二人が代わりにやってくれたみたいだから、後でしっかりとお礼を言わないといけない。


「おはよう、コハクちゃん」

「おはようございます、女将さん」

「毎朝お掃除ありがとうね」

「いえいえ、お安いご用です。それに私が厨房をお掃除することは、とっても縁起がいいことなので、この厨房で調理された料理を食べることは、お腹の赤ちゃんの健康にも繋がります。…ぜひ、お掃除を任せてください」

「本当にありがとうね」


 女将さんは優しく微笑んでから、私の頭を優しく撫でる。

 ジェルブ・ドールや、スフル・デュ・クラージュの皆さんは、私を同胞として受け入れてくれて、安価で宿と食事を提供してくれている。

 異なる信仰の元神官である私を受け入れてくれている、と考えるととてもありがたいことだ。


 パラデイソポリスのことはわからないことが多いけど、ヒッポフォロスの皆さんはとってもいい人たちだから、手伝えることはしっかりと手伝いたい。


「それじゃあ私は公園を走ってきますね」

「朝霧が出ているから気をつけてね」

「はーい!」


 私は一時間ほど走り込みをし、ジェルブ・ドールに戻った。


―――


「おはようございます」

「おはよう、コハクちゃん!」

「おはようさん。昨日は珍しく酒盛りなんかしてたみたいじゃないの、今度するときは私たちも呼んでよね」

「わかりましたっ」


 走り込みを終え、シャワーを浴びた私は、スフル・デュ・クラージュの裏方をしている方々と挨拶をする。

 普段は忙しそうにしている方々だが、ヴァン・フェール第一から第三が出払っているので、ちょっとした休息をとっているようだ。


「んでさ、コハクちゃんのパーティメンバーはどこにいるの?泊まったんでしょ?」

「まだ寝てるみたいです」

「あれま、寝坊助さんだ」

「それにしても、二足種族とのパーティってどうなの?足が遅く感じたりしない?」

「組んで間もないですけど、私は楽しく冒険をできていますよ」

「それならいいんだけど」

「二足種族に虐められたら、すぐに知らせるんだよ?コハクちゃんは尊ぶべき同胞だからね、困っていたらいつでも助けに行ったげるよ」

「えへへ、ありがとうございます」


 裏方のお二人と別れて私の部屋に戻ると、ノクサラさんとアザレアさんが、この世の終わりのような表情をして、ベッドの上に座り込んでいた。


「おはようございます、どうかしました?」

「…朝起きたら、アザレアの寝顔があって驚いたんだ」

「寝起きにノクサラの顔を見せつけられまして、気分が沈んでいるところです」


 アザレアさんは足早に近寄ってきて、私の顔がアザレアさんの胸に埋もれるように抱きしめてきた。


「コハクさん、シャワーを浴びてきたのですね。わたしも使用したいのですが、問題ありませんか?」

「〜〜〜〜」(大丈夫だと思いますよ)

「…すみません、それじゃあ喋れませんよね」


 解放された私は同じ言葉を繰り返し、ついでにシャワー室の場所を教える。


「ありがとうございます」

「どういたしまして。それにしても、シャワーってすごいですよね、お湯を沸かさなくても、いつでも好きな時に湯浴みをできるんですから」

「コハクさんの故郷はどうだったのですか?」

「井戸を何往復もして水を運んで、薪火で沸かして使っていました」

「想像通りの答えが返ってきましたね。色々とお風呂トークをしたいところではありますが、汗を流さないと気持ち悪いので、シャワー室に行ってきます」

「はーい、いってらっしゃい」


 アザレアさんを見送り、ノクサラさんに視線を向けると、ベッドに横たわりながら寝心地を確かめているようだ。


「寝にくかったんですか?」

「いや、別にそういうことじゃないんだが…なんか変わった構造をしていると思ってな」

「あー、それはですね、ヒッポフォロスさんたちの馬体が人体より大きいので、下にクッションを入れて上半身の角度を調整するためのものなんです」

「枕を置くんじゃダメなのか?」

「馬体の幅が広くて、枕だけだと上半身が傾いちゃって寝にくいらしいんです。色々と教えてもらいました」

「へぇー。身体が大きいなりの苦労ってのがあるんだな」

「みたいです」

「コハクはいいのか?」

「私は問題ないです。強いて言うなら、一人だとベッドが広すぎるってことくらいですかね」


 私のベッドはヒッポフォロス用だ。

 アザレアさんとノクサラさんと一緒に寝ていても、余裕があるくらいには広い。超特大サイズなのだ。


「ふぅーん。…アタシもシャワー浴びて、キング・ヴァーダントトードに挑むとするか」

「はいっ!」


 私たちは第六ゲートに向う。

 昨日は敗走するしかなかったから、今日こそは一泡吹かせてやらないといけない。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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