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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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13話 晩酌 2

「んじゃアタシだが、まあやることは簡単だ。腕と脚の鎧に水属性を付与して、敵の攻撃を受け流し、それを転用して殴る蹴るの野蛮な暴力だよ」


 ノクサラさんの言葉には自虐的な色が混じっている。

 ペトロボアの攻撃を簡単に受け止めたり、それを反撃に用いたり、すごいことをしている。

 それにカッコいいと思うが、なんでなんだろう。


「ノクサラさんの戦い方って、名のある拳法とかなんですか?」

「いや、独学。…なんつーか、『他と同じじゃ没個性だしダサい』なんて斜に構えてた時期があって、そこでアタシなりの戦い方を組み上げたんだ」

「後悔とかは…ないんですか?」

「後悔?ねーよ、ダセェし。……まあなんだ、ルーシッド・エデンで場所を選ばずに稼ぐには、この戦い方が便利なんだよ」


 防御を主体とした反撃戦法。

 ルーシッド・エデンで強制退出(死亡)した場合は、二四時間の猶予時間が課される。

 安定して活動できれば、その分だけ稼ぎが多くなるということだ。


「わたしが言えたことではありませんけど、三人ともマイナーな戦い方をする、集団になってしまいますね」

「そうですねっ。ちょっと意外性があるんじゃないですか?」

「意外性はあると思いますよ」

「伸びしろがあるかは微妙だがな」

「珍しいものって人の目を引きますけど、どうなんですか?村に行商人さんとかが来ると、いろんな品物を見ようと村の皆が集まってましたけど」

「ちょっと目を引く可能性は否定しないが、継続して視聴されるためのフックになるかは別の話だ。…定番ってのは強いんだよ」

「主流になっている剣は、大剣や片手剣のようなサイズ分類がありまして、それらのサイズ間で共通する武技があり、専門の知識がなくとも、いかにしてボス級を倒したのかが分かりやすかったりします。視聴という形での知識の蓄積がされますから」

「なるほど…」


 何をしているかが分からない。それを聞こうにも、映像相手では聞くことは叶わないということなのだろう。


「ノクサラって、プロキシ・キャスターみたいにクラス名を付けたりしないのですか?」

「いや、恥ずかしいじゃん」

「恥ずかっ、いやいや、恥ずかしくありませんよ。コハクさんはどう思いますか?」

「私はよくわからないです。ただ、私にもカッコいい名前があったら、名乗りたくなるかもしれません」

「…。」


 ノクサラさんは面倒くさそうな表情になってしまった。


「コハクさんは所定の位置に着いての戦闘をするというよりは、自由に足を動かしてモンスターの連携を阻害する戦い方が適している気がしますし…」

「…まぁ、撹乱担当ってとこか?」

「それなら散開射手スカーミッチャーというのはいかがでしょう?」

「おお、いいですねっ!これからは散開射手の恋白って名乗ります!」


 それから三人で話し合い、ノクサラさんは『ガーディアン・ブロウラー』というクラス名になったのだが、なんとなく自称はしてくれなさそうな雰囲気がある。


―――


「話を戻すとして、アタシが前衛、アザレアが後衛、んでコハクが遊撃のような立場になる。パーティとしては堅実に小さくまとまれているが、その分、それぞれの負担が大きい」

「具体的にはどういった動きになるんですか?」

「コハクが駆け回って、敵を誘導するか分散させる。んで誘導されたのをアタシが防ぎつつ、アザレアが叩き潰すって感じだ。…楽に倒せる雑魚相手なら、全員が遊撃に切り替えるが」

「なるほど。ペトロボアと戦っていたような連携を継続ということですね」

「そうだ。…コハクの役割ってのは、モンスターと競り合わないものの、前線を構築する前衛の役割に近い。足を動かし、頭を回し、弓を放つ。大変だとは思うが、コハクにしかできない役割だと思っていい」

「えへへ、わかりました!」


 『大仕事を任されている』その感覚に私の胸は高鳴っている。


「んじゃ今回の話し合いのメインディッシュだ」

「キング・ヴァーダントトード、ですか」


 初めて戦ったボス級モンスターは、今まで倒してきたどのモンスターよりも強力で、厄介なのだと思い知らされた。

 キング・ヴァーダントトードを倒すには、しっかりと作戦を組んで、連携を密にして挑む必要がある気がする。


「確認できている行動を再確認する。まずは長距離をカバーする跳躍からの押し潰しと、着地点に発生する地面の軟化だ」

「アレには驚かされましたよ…。咄嗟に翼を展開できなければ、落下で痛手を負っていましたから」

「あの時は助かった」

「どういたしまして」

「あのボヨンボヨンとしていたのって、どういう感触だったんですか?」

「なんだろう。いいベッドでジャンプしたような感触で、地面の性質が変化してたのは確かだ」

「対策はどうしましょう?私は走って逃げられそうですけど、お二人は難しいですよね?」

「アタシがアザレアを抱えて、滑空してもらえば何とかなる」

「ノクサラは、翼に触らないでくださいよ」

「わかってる。アタシも触りたくない」


 鳥系テリアントロポスの翼には、何かあるのだろう。

 気になるところだけど、今はその時ではない気がする。


「次は、身体を覆った水の膜でしょうか。いい角度で眼球に刺さると思ったのですが、軽々と受け流されてしまいまして」

「あの水膜はわたしの炎魔法で焼きますよ。前回は余裕がありませんでしたが、一度見ていれば対処が可能です」

「おー、お願いします」

「まぁ、魔法は受け流せなさそうだから、いざとなったら雷魔法で本体を撃ち抜いてくれ」

「かしこまりました」


「んじゃ最後だ。舌での攻撃と、拡散する礫弾の瘴動トレイツ

「運よく外れましたけど、どっちの対処も難しい気がします。特に舌は…目で追うことすら難しかったんで」

「アレは…なんとなくだが、一定距離以内に入り込んだ相手に対処するための攻撃な気がする。ボス級モンスターには、そういった行動をすることがあるんだ」

「じゃあ離れて戦う…となると、跳躍が来ますよね?」

「ああ、そうだ。…アタシが前線張って、舌と礫弾の対処をしながら戦う感じかね」

「ノクサラさんの負担が大きくなりませんか?」

「前衛ってのは大体そんなもんだ。後衛も後衛で大変なんだがな」


 パーティメンバーは三人。

 誰かの役割を、他の誰かが請け負うことは難しい。

 全員で最大限の実力を発揮し、ボス級モンスターに挑む必要があるようだ。

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