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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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11話 三人で見る景色

「すみません、なんかえっちなことになっちゃって…」

「いえ…大丈夫です」


 アザレアさんは顔を真っ赤にして座り込んでいる。

 私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。


「つーか、コハクってアタシの胸も揉んだよな。見かけによらずスケベなんだな」

「え゛!?」

「いや、あれはノクサラさんが酔っ払ってダル絡みしたうえ、胸倉を掴んできたからじゃないですか。責任転嫁はよくありませんよ」

「どうだか」

「むぅ…」


 挑発的な表情のノクサラさんに怒りを覚えるが、何を言っても取り合ってくれなさそうな雰囲気があるので、放っておくことにしよう。


「とりあえず三人で合流したことを喜びたいのですが…ここって高山エリアでも石林エリアでもないですよね?」


 視界に広がるのは、広い谷地にいくつもの段が形成され、小規模の池や水たまりが点在している不思議な地形だ。


「あんま見ない地形だな」

「えっと…段丘湿地エリアですね。確かに見かけない気がします」

「石林エリアから離れてしまいましたし、ここを探索するのはどうでしょうか?」

「コハクの機動力を活かしにくいんじゃね、それでもいいのか?」


 見るからに動きにくそうだけど、それに関しては全種族が同じ感想を抱きそうだ。


「そうですね。経験の浅い私は、もっと有利なエリアを選んで進むべきでしょうが、お二人が見かけないというエリアには興味が湧きます」

「未踏破なら美味いが、どうなんだアザレア?」

「エリア十八の隣は、エリア二三の岩山エリアしか記載されていなかったはずです。…こういったエリアを行きたくない気持ちは理解できますが」

「んじゃ行くか」

「はいっ!…ところで未踏破だと何が美味しいんですか?」

「踏破ボーナスっていう報酬が入るんだよ。額は多くないが、オマケと考えりゃ美味しい」

「おぉー」

「へへっ、ボス級もワンチャンあるし、ひと稼ぎするか」

「おおー!」

「かしこまりました」


 座り込んでいたアザレアさんに手を差し伸べると、柔らかな笑みを浮かべて握り返される。

 ちょっと力を入れて起き上がらせると、思った以上に体重が軽く、身体が触れ合ってしまい、少し前の光景を思い出してしまう。


「…コハクってスケベだろ」

「違いますってぇ…」


―――


 わたし、アザレアの胸は高鳴っている。

 別に初めてのことではありません。

 コハクさんが冒険者デビューした時にも、この感覚はありましたから。


 わたしは昔から可愛らしいお人形やぬいぐるみが好きで、年下の女の子を可愛がるのも好きでした。

 別に不純な気持ちがあったわけではありません。ただ、可愛いものを愛でるときは、心の内が晴れていくようで、無邪気に楽しめていたのです。


「コハクさん」

「はい、なんでしょう?」

「ありがとうございます」


 別に助ける必要のないわたしを助けてくれたコハクさん。

 ただ可愛いだけでなく、弓矢の実力が飛び抜けていて、危険を顧みずに走ってくれました。

 きっとわたしでなくとも、ノクサラ・シュタール相手でも同じでしょうが、好みの女の子がわたしのために尽力してくれたことを、胸が焼き焦がされ、溶けてしまうほどに嬉しく思う。


 この気持ちが、わたしの思っているような感情かなのかどうかはわからないけれど、長くコハクさんと共に過ごしたいと考えてしまう。


 握ったままの手に、少しばかり力を込めて、感情が伝わってしまわないかと、期待してしまいました。


―――


「ひっつきすぎだ。さっさと行くぞ」

「…はーい」


 アタシ、ノクサラは、アザレアをコハクから引っ剥がし、段丘湿地エリアに向かって足を進める。


 …よくわからんが、アザレアがコハクにひっつくことで、苛立ちを覚えたからだ。

 誰と仲良くしようがコハクの勝手だが、アタシにはコハクを見つめる権利と義務がある。これくらいの身勝手は許されるはず。そう思いたい。


 アザレアという魔法使いが入ってきたのは想定外だし、コハクの周りに人が増えたことは癪だ。

 それでもアザレアは使えそうな雰囲気がする。

 コハクのためにもなるだろうし、楽に稼げるようになるのは大歓迎だ。


 あーあ、頭の中の糸が絡まり、固まっちまったような気分だ。

 一つだけ言えるのは、コハクにアタシを見てもらいたいってことかな。


「……コハク」

「どうかしましたか?」

「アザレアを助ける直前のあの動き、どうやった?」

「ノクサラさんが使ってた加速移動あるじゃないですか、アレを私なりに応用して作ってみました。見ていただいた感想としては、どうでした?」

「アタシのとは根本が違うが、悪かねえと思う。…調整やら、洗練は必須だろうけど」

「そうですか!えへへ、嬉しいです」


 短期間で武技を習得したり、シュタール家の技術を模倣したり、コハクには無限の才能がある気がする。

 アタシはコハクから目を離す気はない。その意志は心地よいもので、味わったことのない不思議な感覚だ。


「コハクさんって、やっぱすごいですね。今後大活躍間違いなしですよ」

「そうですかねぇ〜」


 なんつーか、アザレアは…ライバルなのかもしれねえ。

 ちっとばっかし面倒だ。

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