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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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10話 三人パーティ 3

 私とアザレアさんは順調に歩みを進め、高山エリアに到着していた。

 このままの調子で進めば、今日中にノクサラさんとも合流できるだろう。


「そういえばアザレアさんって、どれくらい冒険者をしていたんですか?」

「二年半くらいですよ。ソロでもそこそこに戦えたので、収入面では苦労しなかったのですが、ちょっと羽休めがしたいと思い、ゲートに勤めてみたのです」


 辟易とした表情は、ゲートをやめることになった原因にあるのだと思う。

 人には人の、秘めたことがあるはずだから、詮索はしない。

 それでも、いざ話してくれるときは、しっかりと耳を傾けよう。


「コハクさんはライバー冒険者になりたいのですか?」

「はい、そうです。故郷にまで名前が轟くような、スター冒険者になることが夢なんです。クランの面接は全て落ちましたけど」

「そういうクランは見る目がなかったと考えましょう。マイナーな武器で武技を発芽させる冒険者は一握りで、だいたいは無難な武器に落ち着いてしまいます。コハクさんは才能がありますよ」

「えへへ、ありがとうございます。そうそう、私の武技『啄鎧矢きつつき』なんですけど、ノクサラさんと調査してきた結果、心臓に対する特効があるんじゃないかっていう結論に辿り着きました」

「心臓特効ですか?…そういった強力な武技は、相当な疲労が溜まってしまう気が…」

「二回連続で使ったら身体を動かせなくなってしまい、しばらくノクサラさんに介抱してもらっちゃいました。動きながらも使えませんし、『ここぞ!』という時にしか使えませんね」

「介抱…。切り札があるというのは強みではありますし、ボス級に通用するのなら切り札にもなりましょう。いいものを発芽させましたね」

「そうですかね」


 アザレアさんに認められて、私は飛び跳ねたいほどに嬉しい気持ちが溢れてくる。

 後でノクサラさんにも評価を聞いてみよう。厳しい意見かもしれないけど、威力だけは認めてもらえるかもしれない。


「そういえば『発芽』ってなんなんですか?」

「武技には二種類の習得方法がありまして、誰かの使った同じ武器種の武技を視認や口伝で理解し、伝播的に獲得する方法を『萌芽』といい、オリジナルで思いついた場合は『発芽』といいます」

「なるほど。なんか色々とあるんですね」

「ええ、そうです」


 あの時は沸き上がるイメージが、手に伝わったような不思議な感覚だった。

 またあの感覚に辿り着ければ、新しい力を得られるのだろうか。


「それにしてもコハクさんは随分と弓がお上手ですね。故郷の…メイゼンでは日常的に使われていたのですか?」

「そうですね。狩猟の日や、村に獣が近づいてきた際に、弓を携えて山を駆けていました」

「ルーシッド・エデンに入ってその武器を始めたわけじゃない。日常的な武器であったということがコハクさんの強みなのでしょうね」

「融通が利きにくいのが困りどころなんですけどね」


 視界の端に捉えたクラッグホーンに狙いを定め、歩きながらの射撃である歩射ぶしゃを行う。

 乙張めりはりのなさ、戦いの地味さを補えるよう、たくさんのことを学んでいかないといけないんだ。


―――


 高山エリアに苦労することはなく、昼前には小屋に辿り着くことができ、私とアザレアさんが第六ゲートに戻ると、ノクサラさんはラウンジにいた。


「おっ、早かったな」

「ノクサラさんももう戻ってたんですね」

「晩酌代は稼げたからな。…とりあえず早めに昼食を終えて、さっさと合流しよう」

「てっきり『もっとゆっくりしてもいいぞ』って言われるかと思ってたんですけど」

「パーティが三人に増えたんだ。しばらくの戦闘は楽になるだろうし、足早にエリアを進みたい。稼ぎが安定しやすいし」

「…高山エリアの下山は大変だと思うんですが、どうなんでしょう?」


 私がアザレアさんに視線を向けると、彼女は優しく笑みを浮かべる。


「わたしは鳥のテリアントロポス。運動能力はコハクさんやノクサラより劣りますが、高所から低所に向かうのだけは得意でしてね」


 首を傾げると、アザレアさんはくるりと身体を回して背中を向けるのだが、その衣服は腰部が開放的になっていて、白い肌が露わになっている。


「身体が冷えちゃいませんか?」

「…。」

「…。こほん、テリアントロポスには一つ特技がありまして、よいしょっ!!」


 意外に思えるほどの声量で声を出したアザレアさんの背中には、薄い赤色の翼が形成されて、ふわりと一度羽ばたく。

 薄い赤色の翼はガラスや氷のような透明感があり、硬い質感の印象を受けたのだが、動く様子は鳥の羽のようで、柔らかいのかもしれない。


「触ってもいいですか?」

「えっと…あんまりよくないのですが、コハクさんが触りたいのなら…」

「やめとけコハク。エラフォロスにも、触られたくない場所とかはあるだろ?」

「えっ?…あっはい、そうですね。アザレアさんのお気持ちだけ受け取っておきます、ありがとうございます」

「うふふ、どういたしまして」


 何故だろう、アザレアさんはノクサラさんを睨んでいる。止められたことを怒っているのだろうか。


「この綺麗な翼って、空を飛ぶものなんですか?」

「綺麗っ。…こほん、残念ですが、今のわたしたちは空を飛ぶことは叶いません。それでも高所からゆっくりと滑空はできますので、ルーシッド・エデンの冒険には便利だったりするのですよ」

「おぉ、滑空だけでもすごい特技じゃないですか!それじゃあ、山の稜線を越えたらアザレアさんは滑空、私は走って移動しますね!」

「かしこまりました」


 その後、私たちは三人で食事をし、合流を急ぐことにした。

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