10話 三人パーティ 2
「よろしくお願いしますね、アザレアさん」
「はい、よろしくお願いします、コハクさん」
アザレアさんがパーティに加わり、私たちは三人パーティとなった。
人数が多くなれば、それだけ稼ぎが分割されてしまうのだが、安定したモンスター討伐が可能になるはず。
ボス級モンスターというのがどういうものかは知らないけれど、そういった相手を倒せれば大きな実績として誇れる。
私が面接を落とされることもなくなるかもしれない。
でもノクサラさんはどうなんだろう。
元々大手クランに属していた、『銀眼』のシュタールの関係者。
…もし私がどこかのクランに所属できるようになっても、一緒のパーティでいてくれるのかな。
どんな選択をされようとも、大見得を切って『私だけを見てください』なんて言ってしまったんだ。私はスターにならないといけない。
「ところで、アザレアさんはどのエリアからスタートなんですか?」
「今期はまだエリア一です。コハクさんたちはどこまで進んでいるのでしょうか?」
「私たちはエリア十八です。山を登り、一、五、十八の順番で進みました」
「山林、高山、石林ですか。マイナールートの開拓をなさっているのですね」
「人目につくと面倒だし、裾野や平地は冒険者だらけで稼げない。晩酌は豪華にしたいんだ」
「私も平地よりは、二足種族の皆さんが苦手な場所を行ったほうが、活躍できるかなって思っていまして」
「なるほど、お二人ならではの自然なルート選びだったということですね。モンスターを追い払いながらの合流となると、本日中の合流は難しくなってしまいそうなので、明日から活動を共にさせていただくということでよろしいでしょうか?」
アザレアさんは鳥系の二足獣人。
鳥らしい特徴といえば、髪に混じっている羽毛くらいで、ほとんど人間種なのだが、ノクサラさんのように鍛えられた肉体という雰囲気はない。
モンスターを倒しながらの登山となれば、酷な要求になってしまうだろう。
「ノクサラさん、私はお迎えに行ってもいいですか?山系の移動なら誰よりも得意ですし、山林と高山のモンスターなら、私一人で対処できます」
「先に進む選択肢がない以上、問題はねえよ。アタシはペトロボアでもしばいてスコア稼ぎをしてる」
「ありがとうございます!」
「…別に礼を言われるようなことでもねえよ」
照れ臭そうなノクサラさんは、振り返ることなく乳白色の泉へと向かって行ってしまった。
「それじゃあアザレアさん、ルーシッド・エデン内で会いましょう!」
「かしこまりました。…ところで一つ質問なのですが」
「なんでしょう?」
「コハクさんとノクサラとは、仲が良いのですか?」
「まだ出会って間もないのでわかりませんが、仲良くなりたいと思っています。ふふっ、アザレアさんともです」
「…っ!」
「それではまた後で!」
私は乳白色の泉へ飛び込み、ルーシッド・エデンでの活動を開始する。
―――
「とりあえず昼には外に出ようと思う。アザレアを連れてエリア五の小屋に辿り着けるかはわからんが、コハクたちが来るまではラウンジで待ってるから、焦らずに来い」
「わかりました。…不要な心配とは思いますが、お一人ですし、お気をつけください」
「おう」
私が回頭し、高山エリアに向かおうとすると、ノクサラさんの声が耳に届く。
「…やっぱエリアの境界まで送ってく。高山でペトロボアを相手にするのは、障害物とかないし難しいだろう」
「えへへ、ありがとうございます。とっても心強いです」
「あっそ」
ノクサラさんの援護を受けながら、私は石林エリアを脱出して、高山エリアを駆け上がっていく。
―――
高山エリアを進む私は、クラッグホーンを相手に弓矢の理解を進めていく。
あまり呑気にしている余裕はない気がするが、モンスターを誘引して他の冒険者に迷惑はかけられないので、対処と理解の両立だ。
まずは頭を射抜いてみる。
これは一撃で消滅させることができた。
次いで心臓を外すように胴体に矢を射ち込む。
後ろ足の腿なども含んだ胴体への射撃は、確かにクラッグホーンの血を滲ませており、矢が刺さっていたのだが、十二発を要求されてしまった。
続いては首。
こちらは三発必要な場面と、一発で倒しきれる場面があった。
たくさん試す余裕はなく、最低限の試しとなってしまったが、それでも得られるものはあった。
弓矢という武器は、当てる場所によって威力が大幅に異なってくるようだ。
矢は同じなのに不思議。
これがアノマリー由来なのか、そもそもの弓矢の特徴なのかは分からない。
ヴァン・フェールの射手である、アルセルさんかフレラールさんがいたら尋ねてみよう。
―――
私は休むことなく走り続け、山林エリアを歩いていたアザレアさんと合流する。
「お待たせしました!」
「驚くほどの、早さですね」
「走るのが得意なので!」
アザレアさんの周囲には、赤黄青の球体が浮かんでおり、ファミリオグラフを彷彿とさせる。
「それって魔導具なんですか?」
「ええ、そうですよ。アーケイン・プロキシといって、これを媒介に魔法を起動できるんです」
「おぉ、なんか未知の技術です」
「どういった戦いができるか、お見せいたしましょう」
「お願いします!」
私にウインクをしたアザレアさんは、フェラルドッグを探し当てると、黄色いアーケイン・プロキシだけを飛ばしていく。
「『サンダーダーツ』」
そう魔法名を唱えると、黄色いアーケイン・プロキシから雷撃が飛び出し、フェラルドッグを一撃で仕留めてしまった。
「おお、安全にモンスターと戦えるんですね」
「多くの相手に囲まれたり、近くまで接近されると弱いのですがね」
「ふふん、それならご安心ください。私たちはパーティです、苦手なことは補い合いましょう」
「コハクさんは……可愛いですね!」
「えっ、あはは、ありがとうございます。その…村のお爺ちゃんお婆ちゃんたちからしか言われないので、驚きました」
「そうなんですか」
アザレアさんはご機嫌な様子で足を進めていく。
今思い返すと、アザレアさんは早口の時にも私に可愛いと言っていた気がする。
綺麗な年上のアザレアさんに、そういうことを言われると、ちょっとこそばゆい。
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