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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
烏銀に映るもの

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10話 三人パーティ 1

 ノクサラさんと改めてパーティを結成した翌日、私は上機嫌に第六ゲートに向かう。

 今日からは、冒険者パーティとしての再スタートのようなものだ。


 そういえばノクサラさんって、ライバー冒険者になれるのだろうか。…立場的に難しいかもしれない。


「コハクさーん!」


 第六ゲートの近くを走っていた私は、聞き覚えのある声を耳にして速度を緩める。

 歩道に入って立ち止まり、声の主を探してみると、羽毛交じりの赤髪を揺らす女性が駆け寄ってきた。


「アザレアさん、二日ぶりですね!これからご出勤ですか?」

「いやー…ちょっと色々とあり、ゲート勤務を退職することとなってしまいまして、冒険者に復帰することになったのです」

「冒険者だったんですか!?」


 アザレアさんの衣服に目を向ければ、確かにゲートの職員の制服ではなく、腰のベルトには赤黄青さんしょくの球体が一つずつ装着されている。

 魔導具だろうか?


「半年くらい前までソロ冒険者してまして、実力的に限界を感じゲートに就職したのですよ」

「おー!あーでも、わざわざゲート職員になったのに、辞めちゃったのは…何か理由とかがあるんですか?」

「ちょっと実家のことでして。まあ、改めて冒険者として再スタートを決めたところです」

「大変そうですね」

「大変なんです。…で、そのコハクさんに相談といいますか、ご提案なのですが…パーティを組みませんか?わたしは冒険者としては先輩ですし、こんな言い方をすると烏滸がましく思われてしまいますが、教えられることも多くあると思うのです。なんでコハクさんかといいますと、冒険者登録の際も縁もあるのですが、ルーシッド・エデンに潜った初日に武技を発芽させており、今後の活躍が望める方だと思いまして、わたしもソロ冒険者を脱却するいい機会かなと声をかけさせてもらった次第です。…他意はありませんよ、コハクさんの容姿は可愛いと感じますが、あくまで冒険者としての素養的に―――」


 アザレアさんはものすごい勢いで言葉を吐き出している。窓口にいたときは落ち着いている大人の女性って雰囲気だったから、ちょっとだけ意外だ。


「―――といった次第で、いかがですか?」

「私は嬉しいのですが、パーティメンバーに聞いてみないと決められないといいますか」

「え゛!?もう、パーティを組んでいるのですか!?わたしのいない二日間で!?」

「ちょっとした巡り合わせで」

「そ、そそ、そうですか。…ちなみに、パーティは何名なのでしょうか?」

「私含めて二人です」

「空きはありそうですね。…いや、二人っきりというのは捨て置けませんが、ここは横に置きましょう。それでその方はどんな冒険者なのでしょうか?」

「ちょうど来ましたよ」

「え?!」

「ノクサラさーん!」


 ゆったりと歩いてきたノクサラさんに手を振ると、少しばかり気恥ずかしそうに眉をひそめ、気怠そうに手を振り返してくれた。


「おはよう、コハク。…そいつは?」

「この方はアザレア・セルヴィーノさんです。冒険者登録の際に知り合った、ゲートの元職員さんで、パーティに加わりたいとのことです」

「パーティに…?…つーか、セルヴィーノって」

「あー!あー!すみません、ちょっとこの方と二人でお話させてもらっていいですか?」

「あっはい、どうぞ」

「おい、アタシは良いなんて言ってないんだが、引っ張るなっておい」


 ノクサラさんとアザレアさんは私から離れ、ひそひそ話をし始めた。


―――


 わたしアザレアは、ノクサラ・シュタールの手を引いて、コハクさんから距離をとる。


「なんでノクサラ・シュタールが、コハクさんと組んでいるのですか?」

「そんなのアタシの勝手だろう。逆に、セルヴィーノ家のお嬢様がコハクに何の用だ?」

「べ、別にいいじゃないですか。初めて見た時から、可愛いなって思ってただけで、セルヴィーノ家は関係ありませんよ」

「んじゃアタシも、シュタール家は関係ねえよ」


 ノクサラ・シュタールは、『落ち目』のシュタールなんて呼ばれている飲んだくれの冒険者です。昼から酒を飲み、酒代がなくなるとルーシッド・エデンに潜って、しばらくの酒代を稼ぐダメ人間。

 こんな方とコハクさんが一緒にいたら、悪いことを覚えて、グレてしまう可能性があります。

 本音を言ってしまえば、二人っきりパーティが羨ましい。


「コハクさんは、貴女の素性を知っているのですか?…一部の者から言われるような蔑称など」

「…知られたよ、昨日な」

「じゃあ、酒浸りだったことは?」

「……初めて会った時にクソ酔ってた」


 なんてことだ。コハクさんはノクサラ・シュタールのことを知っていて組んでる。

 彼女が自らの意思で組んでいるというのなら、外野であるわたしがことを荒立てるのはよくないでしょう。


「今後も長くパーティを組んでいくのですか?」

「コハク次第かな。ライバー冒険者になりたいみたいだし、どっか大手に行くってなったら、アタシはおさらばだ。…面倒極まりないからな」


 ノクサラ・シュタールの表情は苦しそうであり、コハクさんとのパーティを解散することは本望ではないらしい。

 実力は確かな冒険者で、コハクさんのことをしっかりと考えているのなら、悪くないのかもしれませんね。


「ライバー冒険者になりたいというのは初耳ですが、…わたしもその道は厳しいです。コハクさんが夢を叶えるまでの間、協力しませんか?わたしはプロキシ・キャスター、役に立ちますよ」

「へぇ、魔法使いか。まあ、コハクがいいって言うなら好きにしろよ。…アタシはアザレアって呼ぶから、ノクサラって呼べ。お互いにファミリーネームは邪魔だろ?」

「よろしくお願いしますね、ノクサラ」

「…呼び捨てかよ」


 ノクサラは非常に嫌そうな表情を露わにしましたが、別にいいでしょう。

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