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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
パラデイソポリスの迷い鹿

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7話 稜線を越えて 4

「さっき言った通り、コハクはコハクの動きを意識しすぎる必要は今のところない」

「怪我はありませんけど、慣れないことをして変な癖がついてもダメってことですよね?」

「そうだ」


 私としても、今の姿勢やリズムを崩したくない。


「昨日、思いっきりジャンプしてクラッグホーンを射ち下ろしてたけど、あれは何でだ?今日はやってないだろ?」

「首への矢の通りが悪かったので、頭上から脳天を狙ったんです。有効打だって分かったので、今日は正面や側面から狙えるように調整したといいますか」

「…あー、なんか違うのか?」

「正面や側面だと頭が上下するじゃないですか。高所から射ち下ろす場合、脳天をしっかりと捉えることができて、ブレ幅が小さくなるんですよ」

「そういうことか。通常の…走り射ちよりかは見栄えがあっていいんだが、射撃の基本からは外れてるのな」

「はい。同じことをできるのは…私に弓を教えてくれた叔母さんくらいです。下の山林エリアみたいな、しっかりとした幹のある木々がある場所なら、その幹や枝を蹴って高さの確保もできますよ」

「コハクの下半身って…鹿なんだよな?」

「鹿に似ている形状ですね」

「悪い、差別的な意味合いはない」

「すみません、私も非難的な意味合いはないです。ちょっと言葉が強くなっちゃいましたね」

「お互い様ってことで。…んでコハクは、アタシの思い描くような種族じゃないって思ってな」

「私は、弓とジャンプが得意で、足の速いエラフォロスなんですよ」

「みたいだな」


 ノクサラさんが立ち上がったので、私も立ち上がり身体に着いた土を払い落とし、歩き出す。


―――


 私がクラッグホーンの対処をしながら山肌を進み、稜線に辿り着くと、振り返ったときとはまた違った風景が目の前に広がっている。


 少しの間は今の高山エリアなのだが、少し進めば傾斜がなだらかになり、大地からいくつもの牙が突き出したかのような、石の森が広がっている。


石林せきりんか。ペトロボアがメインになるが…」


 ノクサラさんが私を見る。

 矢がペトロボアの石鎧に通らないと言いたいのかもしれない。


「ペトロボアには私の矢は通りませんでしたよ。鎧のような石に弾かれてしまい、剥がれた部分くらいしか有効じゃなかったです」

「戦ったのか?」

「冒険者が追われて山林エリアまで来ちゃったみたいで」

「…碌でもねえ」

「追われてた方々は、高山エリアから追われていたって言ってましたし、被害者だと思います。それで私は彼らと共闘して、啄鎧矢きつつきを使ったんですけど、残念ながら退場させられちゃいました」

「外したのか?」

「当たったはずなんですけど、そのまま突進を受けちゃって」

「ふぅん」


 そのまま視線を右の方へ向けていくと、石林とは違った雰囲気の、大岩があちらこちらに点在する岩山とでも呼ぶべきエリアが広がっている。


「あっちの岩山っぽいところはどういうモンスターがいるんですか?」

「グラヴェルシェイドっていう、砂利みたいな模様のヘビがそこら中に隠れててな、果てしなく面倒だからパスだ。というか、あの地形歩きにくいのだよ」


 アントロポスからしたら足の踏み場がないようだ。

 私としても、岩の隙間に潜んでいるヘビを相手にするのは難しいから、ノクサラさんの意見には賛成だ。


「となると急に強敵揃いになるんですね」

「コハク単体なら…まあそうなるか。高山と山林はコハクがメインで動いていたから、次の石林はアタシがメインで動く」

「わかりました」

「これと言って難しいことはない。コハクの足の速さと、どんな所でも動きやすいっていう特性を活かして、囮役を任せる」

「それなら既に一回やってるんで問題ないです」

「よし。ああいうデカブツ相手は、一対一タイマンの方がやりやすい。幸いなことにペトロボアの数は多くないから、数が多くなってきたら適度に注意を引いてりゃ十分だ」

「啄鎧矢は使わないほうがいいですよね?一回でも結構疲れますし、射撃後の隙もあります」

「ああ、昼前からへばられても困る」

「じゃあ囮に専念しますね!」

「よろしく」


 今までは個々にモンスターの対処をしていたけど、これからはパーティらしく動ける。

 スター冒険者に近づける気がして、私の心は自然と踊り出す。


「それじゃあ下りましょうか」

「ああ。……っておい、どこ行くんだよ」

「下るんですよ?」

「真っ直ぐ下に行きゃいいだろうに」


 ノクサラさんは、石林へ向かって真っ直ぐに斜面を下っていく。ところどころで石を踏み、体勢を崩しているが、歩き慣れているようで転倒する様子はない。


「傾斜がそこそこあるので、真っ直ぐに下ろうとすると、大変なんです。上半身は前にあるんで、重心が傾いてしまうといいますか」

「え?あー…そういうことなら、コハクのペースで来てくれりゃいいよ」

「助かります」


 私は斜面に対してジグザグに、九十九折つづらおりで目的地を目指して進む。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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