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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
パラデイソポリスの迷い鹿

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7話 稜線を越えて 1

 『あの「銀眼」の孫だってのに、戦い方は徒手空拳で野蛮人』

 『何あの武技、発芽系っぽいけど、ちょっとねぇ』

 『シュタール様から何も教えてもらわなかったのかよ』


 煩い、煩い。


「うるさいんだよ!!……はぁ、クソ、うざってぇ」


 翌朝、アタシはいつもの悪夢によって目を覚ます。

 もうクランは抜けたんだ。いい加減、アタシの頭から出ていってくれよ。


「酒は…いや、酒はダメだ」


 コハクとルーシッド・エデンに潜るんだ、酔ってなんかいられねえ。

 昨日はコハクが動けなくなっちまったから、足を先に進められていない。もっと遠くに行って、酒代と家賃を稼ごう。


「あークソ、酒瓶が邪魔だ」


 足元の酒瓶に苛つきながら鏡に前に立てば、祖父さんと同じ銀色の瞳が鏡を通してアタシを覗いてくる。


 コイツとは一生付き合っていかなきゃならない。コハクも、アタシが『銀眼』のシュタールの孫だって知ったら、幻滅するんだろうな。


 髪くらい整えようと思っていたのだが、なんとなく気が重くなり、ボサボサのまま身支度を終える。


―――


 私恋白(こはく)がルーシッド・エデンに向かう準備を終えると、宿屋『Gerbe d’Or(ジェルブ・ドール)』は賑やかな雰囲気であった。


 そういえば、ヴァン・フェールの総力でボス級に挑むんだっけ?

 ちょっと挨拶しておこう。

 私が急いで宿を出ると、装備や物資を携えたヒッポフォロスの方々が揃っており、私の方へと視線を向ける。


「ボス級モンスターの討伐に行くんですよね、頑張ってくださいっ!」

「はははっ、応援ありがとう、コハクさん!キミもルーシッド・エデンで冒険をするのだろう、頑張ってくれ!」

「はい、頑張ります!」


 ヴァン・フェール第一のリーダーさんは爽やかな笑顔を露わにし、他のメンバーに指示を出して出発する。

 ヒッポフォロスはみんな大きいから、一斉に動き出すと大迫力だ。


 ボス級を倒したり、華々しい活躍をするためには、あれくらいの人数は必要なんだろうか。

 …誰の記憶にも残り、名前を轟かせるスターを目指すなら、大きなクランに所属しないといけないね。


「さあ、私も行こう」


―――


 ノクサラさんとは第六ゲートで待ち合わせの約束をしている。

 少し早くに着いてしまったということもあり、ノクサラさんの姿は見えず、私は弓の弦を張ってルーシッド・エデンに潜る準備をする。


 窓口のアザレアさんは不在。

 昨日もいなかったし休暇中かな?

 お仕事の邪魔をしたいわけじゃないけど、武技の詳細をノクサラさんが解明してくれたことを知らせたかった。

 明日でも明後日でもいいかな。


 準備を終えた私が、ヒッポフォロス用の長椅子に腰を下ろし、冒険者たちを眺めていると、使用される武器は似たような系統が多い。


 王道の剣に、派手さと威力を備えた魔法杖。この二つは圧倒的だ。

 次は槍など、剣以外の近接武器。間合いの確保や、威力目的でそういったジャンルを選ぶ人もいる。

 そして、魔導具。同じ魔法しか使えないけれど、魔力の続く限り安定した攻撃ができる武器らしい。…見た目は短い杖のような形状が多い。


 弓を携えている冒険者は一人も見つけられない。

 たくさん言われた通り時代遅れの地味武器だ。

 …でも、ヴァン・フェール第二と第三には一人ずついるんだよなぁ。アルセルさんともう一人。

 何か役割があるのだろうか?


 冒険者の観察をしていると、黒髪銀眼の冒険者がロビーに入ってきて、私を見つけてくれた。


「おはようございます、ノクサラさん」

「おう、おはよう。…コハクは真っ白だから、楽に見つけられていい」

「ノクサラさんも見つけやすいですよ」

「…なんで?」

「背が高くって、この辺りだと少ないアントロポスだからです」


 私の見立てではノクサラさんの身長は一九〇バシコン(190センチ)ほど。アントロポスとしては大きい。


「そっか。第二類と第三類、まあ獣人系が多いもんな」


 ノクサラさんはどこか安堵したような表情を見せる。


「この辺りにお住みなんですか?」

「まあ、そう。楽なんだよ、この辺りは」

「そうなんですね。私としてはノクサラさんが近くに住んでくれていたおかげで、パーティを組むことができましたし、喜ばしい限りです」


 アントロポス系の第一類種族は、基本的にアントロポス系向けの区画が用意されている。

 なにか理由があるんだろうけど、踏み込まれたくないことはあるよね、きっと。


「話が少し戻ってしまうんですが、ノクサラさんを見つけられた理由は、もう一つあります。鏡のように綺麗な銀の瞳です」

「あ?」


 ノクサラさんは不機嫌そうな表情を露わにする。

 これは余計なひと言だったかもしれない。


「“お前”が憧れてる、『銀眼』に似てるからか?」

「最初はそう思いましたが、ノクサラさんの瞳は、ノクサラさん自身もので、『銀眼』のシュタールとは別です。だから、私は“ノクサラさんの銀の瞳”が綺麗で、自然と目で追ってしまうんです」


 チラリと私の瞳を覗き込んだノクサラさんは、自身の目元を手で覆い、顔を背けてしまう。


「…めんどいよ、コハク」

「伝えたいって思ってしまって」

「…悪趣味」


 『銀眼』のシュタールみたいだと、はじめはそう思った。嘘偽りない真実だ。

 だけど、憧れている人に似ている部分があるからって、勝手にその人を重ねるのは良くない。

 私は、恋白としての私を色んな人に見てもらいたいし、知ってもらいたい。

 そして、ノクサラさんをノクサラさんとして見たいんだ。


「ごめんなさい」

「…いいよ、別に」


 私たちは冒険者証明書を重ね合わせてパーティを組み、ルーシッド・エデンに潜行する。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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