40話 最終マッチ 1
「全員の尽力のおかげで最終マッチに辿り着くことができた、感謝する」
フロランさんは深々と礼をした。
「リーダー、まだ早いぜ。最終マッチに勝ってこそ、感謝を伝えられるってもんだろう?」
「フロラン、そういう言葉は聞き心地良い音楽を楽しみ、掲げた酒器から雫をこぼしながら言うものだよ」
「そうか…そうだな。なら蒼陣営のリーダーたる私の言葉はこうだ!全員、このエキシビションマッチに勝利し、今晩はジェルブ・ドールで宴会する!覚悟しておけ!」
「おう!」
「よっしゃあ、いっちょぶちかますぜ!」
「はーいっ!」
私たちは思い思いの返事をしてから、最終マッチのエリア分布を確認する。
「最終マッチって、第一マッチと近いんですね」
「そうらしい。中央には森林エリアがあり、その左右に荒原エリアが広がっている」
「リーダー、メンバーはどう分ける?」
「………。どうせなら全員で前に出るか」
「え?」
「ヴァン・フェール第一と第三が右手の荒原に。ヴァン・フェール第二と星蘭&アコアが左手の荒原に。そして、アローズに正面の森林を突破してもらう」
「拠点の防衛は大丈夫なんですか?」
「んー…どうせ最後なんだ、全員で前に出て戦ったほうが楽しいだろう?」
フロランさんは、少年のような笑みを露わにしていた。
私も含め蒼陣営の皆さんは、フロランさんの決定に呆気にとられて目を丸くしていた。
―――
「後れを取ってしまった、申し訳ない」
私、ラバン・シュタールは紅陣営の皆に頭を下げる。
「別にリーダーが謝ることでもないでしょう。今回はヴァン・フェールの機動力に、こちらが対応できなかっただけです」
「我輩も負けてしまったしな」
「ジネストラ…最強を自称する割に情けない結果を出してるんじゃねえよ」
「クックック。ジーク、キミでもあの初見殺しは対応できないさ。破れかぶれの一撃とはいえ、素晴らしい反撃を見せてもらったな、ハッハッハ」
「チッ」
「さて、我輩をはじめシュトラーレンゾンネのメンバーは、クランリーダーの謝罪を受け取る気はない。それこそ我々はまだ負けていないのだからね」
「仕切んなよ、出しゃばり」
「クックック…『黒き混沌の烏』のリーダーは我輩だぞ?出しゃばって何が悪い?」
「ただの、形式上の、リーダーだ!」
ジネストラやジークヴィンといった次を担う若者たちが、クランを引っ張っていく姿に私は感動を覚える。
惜しむらくは、ここに娘のノクサラがいないことだろう。
幼馴染として切磋琢磨し育っていった三人は、一度もパーティを組むことなく、お互いに別の方を向いて歩き出してしまった。
大人が口を煩くするべきではないと思い、彼らに口出しをしなかった結果がこれだと考えると、少し勿体ない気がしなくもない。
「さてさて最終マッチの話だがね。中央に森林エリア、左右に荒原エリアという、第一マッチに近い分布となっている」
「ヒッポフォロスの面々が強く出れる場所か。となると『アローズ』は正面の森林か?」
「だろうね。先のマッチでのコハクさんが、次はアローズとして挑むって言っていたから、三人が纏まっているだろう」
「では防衛は…ティグリフォロスと狐系テリアントロポスのパーティと見るべきか」
私の言葉に頷いたのが半数。
もう半分は相手がどう出るかを思い描いている。
「あの犬っころの魔法は厄介でしたわ、私なら防衛に置きます。…思い出しただけでも気分が悪くなりそう…」
「範囲系の呪術か?」
「ですわね。ただ、純粋な魔法使いではないようで、杖を使った近接戦闘をしてました」
各員は自身の経験を会話として集めつつ、ジネストラとジークヴィンがそれらを元に作戦を立てていく。
「では、今回の防衛は我輩一人で受け持とう!」
「ジネストラが空を飛んで敵陣を叩いたほうがいいのでは?」
「あれは一度きりの戦術だ、二度は使わん。…というより補助魔導具に貯めていた魔力は復活しない都合、敵陣まで飛べる魔力がない」
「意外と使えませんのね」
「あれは試作品だ、仕方あるまい」
「…はぁ」
「それでは中央、森林エリアにはクランリーダーとジークに行ってもらう。言うまでもないと思うが、コハクさんは厄介だ、気をつけたまえ」
「あの電光石火パクリ女か…」
「我輩の宿敵に対して相応しくない呼び方だと、思わないかな?」
「知るかよ」
「私に異論はない。最善を尽くすまでだ」
このエキシビションマッチで、私とノクサラは直接戦っていない。
避けられていたわけではないだろう、そんな余裕はないからだ。
…もしかしたら、これが最後の手合わせになる可能性は大いにある。
娘の実力をしっかりと見極めよう。
「あーそれと、クランリーダー」
「なんだジネストラ」
「ノクサラとしっかり話ししてください。クランリーダーはちょっと、いや結構な言葉足らずです。色々と教えてもらった弟子からの助言です」
「…私は、言葉足らずなのか?」
「え?あっはい。色々と別の要因もありますけど、クランリーダーがもっとノクサラにしっかりと向き合っていれば、クランを出ていくこともなかったかもしれませんし。…というわけだラバン・シュタール。貴殿はしっかりと娘と向き合い、…このエキシビションマッチが終わってからでもいいから、しっかりと親子の会話をしたまえ!ワーッハッハッハ!」
驚いた。
他人から見た私は、親として優れていなかったようだ。
「なにが、親として足りなかったのだろうか?」
多くのものが目をそらす中、ジネストラとジークヴィンは口を揃えて『コミュニケーション』だといった。
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