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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
交錯する足々

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39話 第四マッチ 6

 紅陣営には、フロランさんとアコアさんを含めた四名で向かっているらしい。

 立地の都合と紅陣営による防衛により、大きく人員と時間を失う形になった、とパルロレイユで報告を受けた。


 そして蒼陣営の拠点では、ジークヴィンさんを始めとした数名が到着しており、アザレアさんと星蘭さんを含めた四名で防衛中とのこと。


 ウッドピラーを使えない状態での浮群島の進行は、若干の苦労があったものの、紅陣営の拠点を目視できる位置に到着できた。


「こちら恋白です。紅陣営の拠点を目視できました。敵の数は三人で、ラバン・シュタールさんが確認できます」

『承知した。我々はもうじき到着する。こちらの攻撃に合わせて撹乱や、囮を任せたい』

「わかりました」


―――


 ウチ、アコアはヴァン・フェールの面々を追って走る。

 紅陣営の拠点は目と鼻の先で、防衛人数は三人。

 コハクっちが戦える状態じゃないってことだから、人数に含めないとしても、こっちの方が人数で勝ってる。

 …ウチ的には勝敗に関心はないのだが、ほかの全員にやる気があるようなので、勝利のために尽力しようと思う。


「それじゃ予定通り、射撃が始まったら全力で突撃するッス」

「よろしく頼むよ、アコアさん」


 魔法使いが一人、魔導具使いが一人。二人とも中衛ポジション。

 そして、二人を守るための前衛が一人。

 ウチが落ちても、この三人なら後詰めは出来るはず。


「〜〜♪」


 今回のエキシビションマッチ。練習と本番を合わせて、色んな武技や技術を見ることができたし、参加報酬もたんまりと入る。

 とっても美味い仕事だった。

 こんな機会を用意してくれたスフル・デュ・クラージュには感謝をしないといけないし、報酬泥棒なんてする気は起きない。

 …だから、最大限暴れようかな。


「いやぁ〜、楽しいッスね〜」


 射撃が始まると同時にウチは駆け出すと、時を同じくしてコハクっちが茂みから出てきた。

 戦闘で左腕と弓を失ったと報告が入ったけども、まさか木の棒を武器に飛び出してくるとは思いもしなかった。

 …ちょっと面白い。


 ウチは槍だけを手に取り、コハクっち流の縮地をモノマネして、敵との距離を詰めながら身体を回転させる。


「そんな攻撃が当たりますか!」


 回転を伴う大振りな薙ぎということもあって、軽々と回避されてしまったが、一手回されただけならどうってことはない。

 そのまま回転力を利用してナギナタのウンリューを投げつけ、腰に携えた二本の剣を抜き取る。


「『クレセント☆ループ』!」

「なっ、双剣!?」


 シュタールの双剣術を真にコピーすることはできないが、見たものを取り込み自分流に改造することはできる。

 剣閃が弧を描く三日月の連撃を繰り出してみると、相手は目を丸くして防御に専念し始める。

 しかし、二足種族ではティグリフォロスであるウチの筋力と体格に対抗するのは難しいみたいで、徐々に相手が疲弊していく。


「それじゃあ、新技のお披露目ッスよ。呑み込め『ダイヤモンド☆ラトルスネイク』ッス」


 これはコハクっちが使っていたバッタとかいう武技のモノマネだ。

 矢が反射して獲物を捕らえる、それをウチの鞭剣で再現した。

 魔力を込めることでバラバラになった剣身は、魔力によって紡がれて鞭のようにしなり、地面を跳ね返って相手に喰らいつこうと突き進む。


 本来なら相手の首を落とせる軌道だったのだが、ウチの鞭剣は二本の剣閃によって斬り落とされた。

 それと同時に、銀色の瞳がウチを見据えては、離れた位置なのにも関わらず剣を振る。


「…『モントシュニット』」


 これは、斬撃が飛ぶ武技だったはず。

 今から防御しても間に合わなそうもないから、後は他の面々に任せて退場してしまおう。

 しかし、これは面白い武技だ。アノマリー『ヒューリメシス』で真似できないかな。


 ウチが退場を覚悟した瞬間。

 ウチと飛ぶ斬撃との間に、白い何かが入り込む。

 真っ白な髪に、真っ白な体毛。そして右手に握った木の枝は…コハクっちッスよね。


「コハクっち、なにを」

「これくらいしかでき―――…」


 コハクっちはモントシュニットを受け止めると、言葉を言い終わる前に消滅していった。


 …彼女は異教の神に仕えていた元神官で、ウチの信じる神の使いではない。

 それでもお祈りに協力してくれたりと、かなり親切な人だ。


 コハクっちが盾になったのなら、その分の活躍はした方がいいはず。

 主役はヒッポフォロスたちだから、役割を喰わない程度に本気を出そう。


 四つ足を屈めて力を溜め、飛びかかるような勢いでラバン・シュタールに向かって剣を振るのだが、それは片手の剣で容易く斬り払われ、もう片手の剣でウチのお腹が斬り裂かれた。

 鞭剣を引き戻せれば防げたが、そんな余裕なんてない。


「シュトラーレンゾンネのリーダーなのに、ちょぉっと甘くないッスか?」

「なに、を?……そういうことか」


 ウチの武器はナギナタと二本の剣だけではない。

 プリティな前足から生えた爪は、ラバン・シュタールの両足に突き刺さり、足を十全に使えない程度にズタボロにする。


 その後、ウチは紅陣営の三人によって討ち取られる。

 けれど、足を負傷したラバン・シュタールや、紅陣営のメンバーは、突撃するフロランたちを防ぐことができず、拠点の核が破壊されて、ウチらが第五マッチを取ることができた。

 泣いても笑っても、次のマッチが最後だ。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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