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ルーシッド・エデン ―ライバー冒険者の面接に全落ちした私は、実績作りのためにダンジョンを攻略する―  作者: 野干かん
交錯する足々

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39話 第四マッチ 3

 私は浮群島を渡っていく。

 浮群島はところどころに這松のような樹木が地面を覆っている程度で、これといった障害物はなく、よく射線が通り、強めの風が吹く場所だ。

 この状況では、矢が風に煽られ軌道が逸れてしまうので、相応の射線取りをする必要がある。


 弓を握る手に力がこもる。

 ジネストラさんとの対戦を任されたという形になるのだが、実際のところ私自身が戦いたいと、負けたままでは悔しいと思う気持ちが強い。

 だから私は、使いこなせるかも分からない魔導具を背負い、こうして浮群島を突き進んでいる。

 勝てるかは分からない。けれど絶対に勝ちたい。

 浮群島を踏み締める足にも力がこもる。


―――


 ある程度進むと、前方に黒翼を羽ばたかせるジネストラさんを捉えることができた。

 一度足を止めて、最大限の力をもって弦を引き絞り、矢を射掛けたものの、届くことなく足元の空に落ちていく。


 さて、二回ジネストラさんとの戦闘を経験して理解できたことは、彼女の魔力は尽きることがないということだ。

 第三マッチでの混戦、そこでは味方を巻き込まないようにと、爆発する炎の矢は使われず、雷の矢だけを用いて戦闘していた。

 基本的には私を狙っていたものの、他の人狙いつつといったところ。

 その際に、雷の矢が何度も放たれたのにも関わらず、魔力が切れるような様子は一切なく、矢が勢いを失えば次の矢を射掛けていた。


 魔力を回復する、もしくは魔力を吸収する魔導具があるとするなら、それを狙ってしまうのが無難なのだが、それらしい装備品は見つけられていない。

 それかアノマリーか。

 …アノマリーとなると対処法がないうえ、長期戦になればなるほど、私に不利がのしかかってくる。

 ともすると短期決戦だが、それを許してくれるだけの相手では、ない。


 距離が近くなったことを確かめ、私はジネストラさんに狙いを定めて矢を射掛ける。

 私は、ジネストラさんがこの攻撃を回避して、進行方向を変えるとばかり思っていたのだが、彼女は羽ばたかせる翼で矢を受け、自信満々な表情を浮かべていた。


「コハクさん、キミは強いが、キミの強さの根源を我輩は理解した」

「答え合わせでもしますか?」

「クックック。コハクさんの、短弓という武器に見合わない威力は、フィニッシャーとして用いられた武技によるものではなく、威力を向上させるアノマリーによるものだ。そしてそれは、常時効果が適応されるものではなく、決まった条件下で真価を発揮する」


 一部を除いて合っているので、私は頷いたところ、ジネストラさんは楽しそうに笑みを浮かべた。


「それは『頭部特効』とでもいうべきかな。頭と首に命中した際に爆発的に威力が上がるアノマリーなのだろう?」

「はい、そうです。私は、“頭部を中心とした部分”に攻撃を当てると攻撃の威力が上がり、それ以外の部位に当たった際は威力が低減します。…特定の場所ばっかり狙いすぎてしまいましたかね」


 私のアノマリーは“暴かれてしまった”ので、肩をすくめて残念がる。


「コハクさんの弓は精確だ、いや精確すぎると言っても過言にはならないだろう!だからこそキミは、誰が相手であろうと相手の頭を狙って、確実に倒そうとする。モンスター相手であれば強力だが、対人では一歩足りないな!」


 空中のジネストラさんは、翼を水平に寝かせつつ、自身の身体を起こした、滑空状態に移っていた。

 会話の最中で悪いとは思うものの、あの状態では素早く移動したり、翼で矢を弾いたりはできないはずだ。

 私は素早く弓を構えてから、矢を射掛ける。


「わっ、ちょっ!?今話してる最中!!」

「すみません。勝ちたいんで」

「っ!…ククク、クックック、ワーッハッハッハ、そうでなくって―――ちょっと、うわっ!」


 器用なことに、ジネストラさんは魔翼を操り、私の矢を防いでいく。

 魔翼というのは魔力でできているため、傷がつこうとも素早く再生し、あまり効果を感じられない。

 それは数度の矢を放ったところで同じこと。

 こちらは矢の本数が攻撃回数の上限ということを考えると、やはり長期戦には不向きだろう。


 相手は、野山を逃げる鹿ではなく、こちらを殺し得る牙と爪を持つ熊なのだ。


「私が個人、『白き死の姫ヴァイセ・トーデスプリンツェッシン』の恋白として、ジネストラさんと腕を競い合えるのは、この試合が最後です!次の試合では『アローズ』のコハクとして戦いますので」

「ほう!この試合を勝ち取る気か!」

「はいっ!だから私は、この自慢の足で勝ち逃げをさせてもらいます!」

「クハハハッ、やれるものならやってみたまえ!『深淵からのジネストラジネストラ・フォム・アープグルント』が受けてとうじゃあないか!」


 空中のジネストラさんは、一旦羽ばたいてから高所を目指し、滑空状態に戻ってから弓に雷の矢を番えた。

 それを確認した私は、ウッドピラーを使って身体を押し出し、彼女に急接近をする。

 そう、体当たりといっても過言じゃないほどに。

 目を丸く見開いたジネストラさんは弓の構えを解きつつ、翼を折りたたんで防御するような姿になるのだが、魔翼は広げていないと飛行や滑空はできない。


「『ウッドピラー』!」


 自重で落ち始めたジネストラさんの位置にウッドピラーを発生させても、私の足先より低い位置にいたので命中はしない。

 けれど、伸び終わったウッドピラーは、その自重のままに地上を目指して落ちていく。

 私はウッドピラーの上から、ジネストラさんを射下ろしてから、近くの浮群島に跳ぶ。


「ぬうあああ!?落ちてたまるかぁああ!!」


 バサバサと忙しない羽ばたき音が聞こえ、私はその音を頼りに下を覗き込み、ジネストラさんの進行方向に矢を射ち下ろす。

 すると彼女は速度を落として矢を躱し、くるりと上下を反転させて、雷の矢を放った。


 この状況での雷の矢は、完全な制御ができないので、牽制射撃とみていい。

 だから、真に警戒すべきは二の矢。


 私はジネストラさんを見下ろしていると、弓に炎の矢が番えられ、私の足元を破壊すべく幾多の爆発が発生する。

誤字脱字がありましたらご報告いただけると助かります。

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