39話 第四マッチ 1
休憩を終えた後の第四試合。
これは私たち蒼陣営の敗北となり、紅陣営は勝利に王手をかける結果となった。
私とアザレアさんで防衛に就いていたのだが、前線を抜け出たラバン・シュタールさんとキンキラ男のジークヴィンさんとの交戦でアザレアさんが倒され、隙を穿つように核が破壊された。
「次のエリアは巨大樹林と浮群島の半分半分。浮群島を渡れる者が限られるが故に、巨大樹林に人員が割かれるはずだ」
つまりは浮群島は、私とジネストラさんとの戦闘になる可能性が高いということなのだが、二回も負けている私でいいのだろうか。
「コハクさん、キミには浮群島での索敵と相手に応じた交戦をお願いしたいのだが、いいかな?」
「はい、問題ないです」
「…ただ、想定される相手であるジネストラ・フォム・アープグルントに、コハクさんは負け越している状況だ。注目を集めやすい配信者の相手を任せてしまうことになるのだが、今後の配信活動のことを考えると、コハクさんに苦労を押し付けるのを、あまり快く思えない。…嫌であれば断ってもらっても構わないのだがね」
「それは構いませんよ。私は助っ人なんで、助力できることに尽くすだけです。…むしろ、勝ちの目が薄そうな私でいいんですか?」
「…正直なところ、彼女を引きつけてもらえている状況はありがたい限りだ。第四マッチも、魔導弓による爆撃の隙を突かれ、二人が前線を抜け出てしまったのだから」
「そうですか。それなら挑ませてもらいますっ!…ただ、三度やって三度負けたでは悔しいので、勝つために魔導具をお借りしたいんです」
「誰かが使っているものかい?」
「いえ、試作品の槍なんですが」
「あれか…」
今回のエキシビションマッチに向けて、ブレオンヌ帝国からパルロレイユ以外の魔導具も送られてきて、必要な人が選択して使用している。
ただその中に、少しばかりクセの強い魔導具が一つあった。
「使いたいというのなら構わないが…無茶はしないように」
「はいっ」
―――
アタシ、ノクサラは次のマッチに闘志を燃やすコハクを、少しばかり羨ましく思っていた。
コハクもジネストラも、地形に囚われず動き回れる都合上、半数のマッチで交戦をしている。
…別にアタシは、親父と戦いたいなんて思っているわけじゃないが、それでも一度たりとも面と向かって戦えてないのは消化不良気味だ。
ただまあ、ここ最近の練習や、この本番を含めて思ったことは、スフル・デュ・クラージュのメンバーと組むのは悪くないということだ。
あいつらはコハクを、一度面接で落としている。
それは足並みの合わなさや、今までの戦術に組み込むことが難しいという理由だった…らしい。
今回の助っ人期間で、改めてコハクとヒッポフォロスたちの連携を眺めていたが、あまり噛み合ってるとは言えないのだから、選択としちゃ間違っていなかったんだろう。
だがヒッポフォロスたちも、コハクやアタシたち二足種族に合わせるようになってきて、戦いの幅は広がっているようにも見える。
あいつらも変わろうとしている、過渡期なのかもしれない。
スフル・デュ・クラージュが、『アローズ』をクランに誘ってくれている。…調子のいい話だが、話を受けるのも悪くないと思い始めている。
だからこそアタシは、古い柵を取っ払い前に進めるようになりたい。
「コハク」
「なんですか?」
「ジネストラに勝ってこい。そしたら、アタシが前に進めるように、アタシを手伝ってくれ。…アザレアも」
コハクとアザレアが目を丸くしている。
エキシビションマッチ本番のアタシは、大した活躍をできていないし、全然目立ってもいない。味噌っかすの『落ち目』だ。
自分のことながら恥ずかしくなる。
言い訳がましくなるが、このエキシビションマッチでは『アローズ』として戦えていない。
偏にジネストラの影響なんだが、それが地味に刺さってる。
「はいっ!」
「ふふっ、仕方ありませんね」
「ということだフロラン。わがままだってのはわかっているんだが、“次”のマッチではアローズ三人で動けるようにしてくれ」
「心得た。助っ人として多大なる尽力をしてくれているアローズの願いだ、叶えるためにこちらも力を尽くさなければね」
フロランが蒼陣営の全員を見回す。
このマッチで勝たなければ、次なんてものはない。
ヴァン・フェールもアローズも星蘭&アコアも、その全員が力強く頷いた。
―――
作戦の確認を終え、各々の部隊で話し合う段階。
アタシは、部隊を離れてコハクの許に向かう。
「なあコハク。さっきの休憩時間のダイジェスト映像で観たんだけど、電光石火ってどうやってるんだ?…いや、それを使うやつに昔聞いたんだけど、『なんとなく』って返されちまってさ」
「なんとなくって言ったら怒ります?」
「キレそう」
「そうですか。じゃあちょっと考えを整理させてください」
「お、おう」
ダメならダメで良かったんだが、考えてくれるってその言葉に甘えよう。
コハクは表情をコロコロと変えながら、深く考え込んでいる。
…よく考えたらコハクって、直感的なタイプっぽいし、やっぱ難しいか?
「ウチも聞いていいッスか?」
「おう、別にいいぞ。コハクが答えを出せるかは分からないが」
そそそっ、と歩み寄ってきたのはアコア。
こいつは他人の武技やら技術やら、魔法以外のことを何でも覗きに来る。
「まず前提としてなんですけど、私はノクサラさんたちみたいな魔力を使った技術じゃないんで、根っこの部分が違う可能性があると覚えておいてもらえると助かります」
「そいつは大丈夫だ」
「大丈夫ッス!」
「アコアさん、いつの間に」
「考えてる間ッス。聞いてもいいッスかね?」
「いいですよ。…それじゃあ」
アタシはコハクの言葉を待つ。
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