第11章 二学期 第376話 巡礼の儀―⑬ 天へと挑む箒星
《ルナティエ 視点》
「……念話が強制的に遮断された……?」
わたくしは耳元に手を当てて、驚きの声を溢す。
情報属性魔法【コンタクト】を阻止できる魔法があるとするのならば、それは、妨害属性魔法【アンチフィールド】の効果に他ならない。
中一級妨害属性魔法【アンチフィールド】は、念話系の【コンタクト】や透視系の【ビジョン】などの情報属性魔法を強制的に無効化する結界を張ることのできる魔法です。
この場合、わたくしかアネット師匠の周囲に【アンチフィールド】を張った魔術師がいると推察できますが……恐らくは、わたくしの方ですわね。走行中である馬車に対して結界を張るのは、難しい行為ですから。
領都ラオーレの近くにある村―――――エルセルの村の広場。
その広場の中央にある、噴水近くのベンチに座っていたわたくしは、ふぅと短く息を吐き……立ち上がった。
すると、近くに立っていたアルファルドが、口を開く。
「どうした?」
「やはり、わたくしの推測は当たりましたわ。既に敵はこちらを捕捉しています」
「何だと? 何故分かった?」
「妨害属性魔法を使用され、念話を無効化されました。もしかしたら、念話を盗聴されていた可能性もあり得ます」
「ハッ。誰だか知らねぇが、仕掛けてきたというわけか。どうする? 迎え打つか?」
「あちら側が明確に攻撃を仕掛けてくるのであれば、そうしますが……今は状況を分析します。相手がどのくらいの数なのか、把握もできていない状況ですから」
わたくしはそう口にすると、降り積もる雪の中を、アルファルドと共に歩いて行く。
村の中を歩いて行くと、多くの人とすれ違う。それなりに活気のある村ですわね。その殆どが、冒険者のような格好をしています。
まぁ……オフィアーヌは大森林と近い位置にある土地故に、多くの冒険者が訪れる場所になっていますから。不自然ではないのでしょうけれど……。
(ですが……この地に来てからずっと、何か嫌な視線を感じますわね)
誰に見られているのかは分かりませんが、明らかに、誰かがわたくしたちを見ているような……そんな感触を覚えます。
グレイレウスやジェシカさんは、そのことに気付いていない様子でしたが……わたくしには分かる。これは、明確な敵意です。
「……アルファルド。やはり、何者かに見られているような視線を感じます。貴方は気付きません?」
「何となく、言われてみれば……って感じだな。お前みたいに警戒心が高く無ければ、気付かないレベルのものだ。相手は、相当、敵意を隠すのが上手い奴だと考えられる。まるでハンターだな」
「ハンター……」
わたくしは顎に手を当てて考え込む。
何故、敵は、敢えて【アンチフィールド】を使用して、わたくしに存在を感知させたのか。そして何故、直接的な攻撃をして来ないのか。
何かを狙っている……? 目的は、わたくしたちではない……?
「別働隊……そう、か……敵は、本隊にロザレナさんがいないことを悟って、わたくしたちが別働隊と連絡する時を待っていたんですわ……!! 敵の目的はわたくしたちではない、ロザレナさんを狙って……!! まずいですわ!! きっとこのままでは、別働隊はそのままラオーレに……!! これは、罠……!! 急いで師匠に伝えないと……!!」
「―――流石はお嬢だぜ。まさかそんな少ない情報だけで、そこに辿り着くとはな」
その時。パチパチと拍手をして、村の奥から……茶色の髪を結んだ一人のくたびれた男が姿を現した。
わたくしとアルファルドは即座に腰の剣に手を当てて、戦闘態勢を取る。
しかしわたくしは、男が近づいて来たことで……彼が顔見知りであることを理解した。
「……ディクソン……!?」
「よっ! 久しぶりだな、お嬢!」
まるで旧友との挨拶を交わすように、気軽に手を上げて挨拶をしてくる、わたくしの元従者ディクソン。
その姿を見て、アルファルドは首を傾げた。
「知り合いか?」
「わたくしの元従者……フレイダイヤ級冒険者のディクソン・オーランドですわ。学園入学時までは一緒にいましたが、師匠に敗北した後、ずっと行方をくらましていました」
「なるほど。オレ様の前任者ってわけか」
アルファルドのその言葉に、ディクソンはやれやれと言った様子で後頭部を撫でる。
「お前さんも、お嬢の従者は色々と大変だろ? 元従者として同情するぜ」
「ハッ。まぁ、その点については同意だが」
「同意するんじゃないですわよ!!」
「何故、ルナティエの元従者であるお前が、オレ様たちに敵意を示してくるんだ? お前なんだろ? 妨害属性魔法で念話を遮断した奴は?」
「やや外れ、だな。妨害属性魔法なんて魔法を、俺は使えねぇよ。あと、元従者が何で元雇い主に喧嘩を売っているかと言うと、こっちも新しい雇い主様と出会ったんでね。仕事を円滑に進めるためには、あんたらが邪魔なんだ。だから俺はお前たちの前に姿を現したってワケさ」
「新しい雇い主というのは……まさか、ゴーヴェンのことなんですの……?」
「正解だ。なぁ、お嬢。俺はさ、別に巡礼の儀の勝者になんざ興味ないのよ。ただ俺たち冒険者がやることと言ったら、化け物退治だけだ。俺たちの敵は人間じゃない。魔物だ。だから……ロザレナを狩るまでの間、お前たち、宿屋にでも待機してくれねぇかな。これは交渉だ。頭の良いお嬢なら、俺の言いたいことも分かるんじゃねぇのかな?」
「お断りですわ。わたくし、仲間を売るつもりはありませんの。それに……わたくしたちは、あの子を助けるためにこの戦いに挑んでいる。あの子がいないのであれば、戦う理由なんてなくってよ」
「おいおい、何だそれ? お前、本当に俺の知っているルナティエ・アルトリウス・フランシアかぁ? お嬢は、自分の勝利のためならば、他人を平気で売る人間だっただろうが。それに、ロザレナは、お嬢の敵だったはずだろう? いったい全体どうしたってんだよ。ロザレナさえいなければ、お前さんだってさらに上に行けるだろう!?」
「そうですわね。過去のわたくしは、そういう人間でしたわ。ですが……このような形であの子を倒すのは、今のわたくしのポリシーに反するんですの。わたくしは必ず、あの子と剣聖の座を賭けて決着を付けますわ。だってわたくしは……あの子のライバル、なのですから!」
「はぁ? 何だそれ、青臭ぇなぁ。俺が知っているお嬢は、もっと捻くれてて、現実主義者だったってのに。誰の影響でそんなくだらない性格になったんだか……昔の方がよっぽど好感が持てたぜ。どんな手を使ってでも上に行ってやるっていう、あの野心が宿る目に共感を得たからこそ、俺も従者になったんだぜ? ガッカリだ」
はぁと、大きくため息を吐くディクソン。
そんな彼に、アルファルドは盛大に笑い声を上げた。
「キヒャヒャヒャヒャヒャ!! 何だ、それ。要するにお前、昔のこいつに自分と近しい何かを感じていたから、一緒に居たってだけなんじゃねぇのか? 成長したこいつを見て、自分は何も変わっていないことに気付いたんんだろ? 小せぇ男だなぁ、オイ!!」
「あー、確かに。それもあったのかもなぁ。でも、まぁ、オッサンは早々変われるものでもないのよ。ましてや、本物の剣士の頂点を見た日には……自分じゃどう足掻いても上へ行けることはできないって、悟ってしまうものなのさ、俺たち大人って奴はな」
ディクソンは……きっと師匠に負けて……剣の修行をすることが馬鹿らしいと、そう思ったのかもしれませんわね。
何となく、その在り方は……お婆様に見捨てられ、リューヌに敗北し続けた、過去のわたくしに近いのかもしれません。
天才たちには勝ちようがないから、卑怯な手を使ってでも上へ行こうとしていた、あの時の自分に。
「さて……それじゃあ、お前たちは邪魔だから、早々に退場して貰おうか。安心しろ。殺しはしないさ。加減はしてやる。女子供に本気になるほど、俺も鬼じゃない」
そう言ってディクソンがパチンと指を鳴らした瞬間、周囲に、冒険者たちが集まってきた。
そこでわたくしは気付く。この村にいる冒険者全員が……わたくしの敵だったのだと。
「なるほど……敵意の正体は、これでしたの……。まさか通り過ぎていく全ての冒険者が敵だとは、予想もしていませんでしたわ」
「ここには、銀等級からアダマンチウムまでの冒険者たちが揃っている。痛い目に遭いたく無ければ、大人しく投降することだな」
「悪いですけれど、わたくしたちだけを抑えても、他に仲間が――――」
「酒場に置いてきた、二人のことか? なら、既に手は打ってある」
「ぐかーぐかー」
その時。ある冒険者が、爆睡しているジェシカさんを背負って姿を現した。
そんな彼女の姿を見て、わたくしは思わず額を手で覆ってしまう。
「ジェシカさん……なんて間抜けなんですの……」
「お前たちが酒場で食事を頼んだ時に、夕食に睡眠薬を混ぜておいた。まぁ、何かを感じて酒場から出て行ったお前たち二人は、運良く薬を飲まなかったってようだけどな。……って、待て。おい、酒場にいたのは、二人じゃなかったのか? マフラーの奴はどうした?」
「そ、それが……何処にも……」
「はぁ? ちゃんと見とけって言っただろうが!! ジェシカ・ロックベルトとグレイレウス・ローゼン・アレクサンドロスは、【剣王】なんだぞ!? 【剣王】は何としてでも先に潰しておくっていう、俺の計画が……」
ディクソンが部下に怒りをぶつけていた、その時。
近くにあった建物の扉が蹴破られ、そこから―――肩にハンマーを背負った鉱山族の女性が、姿を現した。
「くっだらねぇ。罠を張って【剣王】を潰すだぁ? 【剣王】如きにびびってから、テメェらは雑魚なんだよ、冒険者ども」
「あ、あれは……っ!!」
わたくしは思わず驚きの声を上げてしまう。
そこにいたのは……元【剣神】ルティカ・オーギュストハイムだったからだ。
ルティカの登場で冒険者たちは皆、恐れ慄き、道を開けていく。
その光景など気に求めず、ルティカは樽のような巨大なジョッキを片手で持つと、豪快にその中にある麦酒を口の中に煽っていく。
そんな彼女に対して、ディクソンは肩を竦めた。
「だから何度も言っているだろ、ルティカさんよ。今の剣王のレベルは、かつての剣王とは違うって。特に、箒星の連中の何人かは、剣神の領域に足を踏み込んでいる奴もいると聞いている。舐めてかかるのは間違いだ。俺は勝つためならば、確実性を取りたい」
ディクソンのその言葉に、ルティカは目を細めると、ハンマーを持ち上げてディクソンの首元に差し向けた。
「剣神の領域に足を踏み込んでいるだって? はっ、笑わせんじゃねぇよ。剣王が束になったって、剣神に勝てるはずがねぇだろうが。剣神のレベルっていうのはな、剣王とは大きくかけ離れたもんなんだよ。本当だったら、そこの間にもう三つくらい称号があっても良いレベルだ。それくらい俺たちと剣王は違う」
「あー、機嫌を損ねたのなら悪かったよ。だけど、今仲間割れしてる時じゃないだろう? もうすぐここに本命のロザレナがやってくるんだ。それまでに、邪魔者は片付ける。それはあんただって同意しただろうが」
「雑魚借りはテメェらが勝手にやってろ、雑魚冒険者ども。俺は先に行って、ロザレナを狩る」
そう言って踵を返すと、ルティカは村を出て行こうと歩いて行った。
そんな彼女の前に、二人の冒険者が姿を現した。
「邪魔だ」
ルティカは手に持っていた樽のジョッキに闘気を纏うと、それを振り上げ、二人の冒険者を弾き飛ばした。
冒険者たちは建物の壁へと減り込み、家屋が倒壊して……瓦礫の下敷きになっていった。
「なんて……滅茶苦茶な方なんですの……」
まるで歩く暴風雨。あれが、元剣神【旋風剣】のルティカ。
アネット師匠が相手なら問題ないとは思いますが、果たして、わたくしたちが相手となって、あのレベルの剣士を倒せるのかどうか……。
もしアネット師匠の手が塞がっていた場合、下手をするとフランやオリヴィア、ジークハルトが彼女の相手をする可能性だってある。
それだけは絶対に、避けなければ……!!
「お、お待ちなさい!! 貴方の相手は、わたくしが……!!」
「―――――――――その必要はないぞ、ルナティエ」
その時。付近にある家屋の屋根の上から、声が聞こえてきた。
頭上を見上げてみると、そこにいたのは……マフラーを風に靡かせる小柄な剣士。
【剣王】『瞬迅剣』グレイレウス・ローゼン・アレクサンドロスだった。
グレイレウスはルティカに、声を掛ける。
「フン。いったいどこに姿を隠していたのかと思えば……まさか、ゴーヴェンなどの下に付いていたとはな、ルティカ・オーギュストハイム」
「あぁ? 誰だ、お前?」
「覚えていないのか? オレとお前は、大森林で会ったはずだ」
「大森林……? ……あぁ、そうか。そのマフラー……俺が前にぶっ飛ばしてやった、生意気なガキか。はっ! 今更何の用だ、クソ雑魚! お前確か俺にぶっ飛ばされて、ピーピー泣いてやがったよな? 何故【剣神】ともあろう者が、助けを乞う民を見捨てようとするのか……だったか? まさか、今もそんな眠たいことを言っているんじゃねぇだろうな?」
「……」
「まさか、俺がロザレナを狩ることを止めるだとか言わねぇよな? あの時も言ってやったことだが、もう一度言ってやる。そもそもお前たちが何かを言えるような立場にいるだなんて考えるな。俺は【剣神】、お前たちはそれ以下。その差は歴然だ。強者の弁には素直に従え、人族のガキ。俺を止めたければ、【剣神】レベルを連れてくることだ――――――――」
その時。グレイレウスは姿を掻き消した。
そして彼はルティカの前に現れると、彼女の肩に目掛け一閃、剣を振り放った。
「……ッ!?」
あまりもの速さに闘気でガードすることができなかったのか、肩を斬られたルティカは、そのまま後方へと吹き飛ばされる。
そして――――――――――――村の外にある森林地帯へと入り、木々を薙ぎ倒しながら、背後にあった崖へと叩きつけられた。
ドシャァァァァンと、巨大な音が鳴り響くのと同時に、崖から雪が雪崩落ちる。
その光景を見てポカンとした表情で口を開けて固まるディクソンと冒険者たち。
グレイレウスは地面に降り立つと、小太刀を回転させて逆手に持ち替える。そしてルティカが吹き飛ばされた方向へと顔を向けた。
「奴の相手はオレがする。その冒険者どもは、お前に任せても良いか、ルナティエ?」
その言葉にわたくしは笑みを受けべると、コクリと、強く頷きを返した。
「仕方ありませんわね。アレは貴方に譲りますわ。にしても、よく、睡眠薬に気付きましたわね、貴方」
「元々洞察力は良い方なんでな。店主が何か嘘を吐いていることには薄々気付いていた。あのアホ女にもそのことを伝えようと思ったのだが……あいつは既に配膳された食事に手を付けていた。フン。誰よりも剣の素質はあるというのに、頭だけは一向に改善されないな、あのアホは」
「フフ。まぁ、仕方ありませんわね。さて……箒星の出陣と致しますか」
わたくしはグレイレウスに背を向けて、ディクソンへと顔を向ける。
そして同時に――――――駆け出した。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!」
ルティカの怒りの咆哮が、大地を響かせる。
その咆哮に冒険者たちは怯んでいるが……わたくしはただ真っ直ぐに、ディクソンだけを捉えていた。
「……チッ!! ……の野郎!! 舐めんじゃねぇぞ、お嬢!! 俺はフレイダイヤ級冒険者だ!! 格としては剣王よりも上の立場だ!! そして俺は元師として、お嬢の手札の内は既に分かっている!! お嬢が俺に勝てるはずが……!!」
「【心月無刀流】――――一の型、【断崖絶波】!!!!」
わたくしは【縮地】を使ってディクソンの側へと接近すると、彼の腹部に向けて、掌底を放った。
するとディクソンは血を吐き出し、背後にある家屋の壁へと叩きつけられた。
「かはっ!?」
「ディクソンさん!?」
戸惑う冒険者たち。
わたくしはそんな彼らを無視して、口元に手の甲を当てて、高笑いを上げる。
「オーホッホッホッホッ!!!! さぁて――――箒星の弟子として、剣神クラスに挑戦してみると致しましょうか。まぁ、わたくしの相手はグレイレウスに比べたら、少し劣るでしょうけど。それでも……この戦いが、上へと登る足掛かりになることは間違いありませんわ」
腹部を抑えながら、ディクソンは上体を起こす。
「……ど、どういう、ことだ……? 俺は闘気で確実にガードしたはずだ……そ、それに、あのお嬢が俺を吹き飛ばしただと……!? あり得ねぇ……お嬢は速剣型だったはずだ……!!」
「お婆様の時もそうでしたけど、わたくしの場合、わたくしをよく知る人間の方が上手く不意打ちができますわね。舐めてかかって来るのはこちらとしても僥倖。さて……【剣王】『色彩剣』ルナティエ・アルトリウス・フランシアが相手をしてさしあげますわ。立ちなさい、ディクソン・オーランド。わたくしはもう……あの時のわたくしではありませんわよ」
「野郎……!!」
ディクソンはギリッと歯を噛むと、仲間に合図を送る。
すると周囲にいた冒険者たちは、剣を構えてにじり寄ってきた。
その光景を見たアルファルドは、わたくしの背中を守る様にして、背中合わせで立つ。
「ヒャッハァァァ!!!! 面白くなってきたじゃねぇか、クソドリル!! こいつら全員ぶっ倒せば、経験値アップ間違い無しなんじゃねぇのかぁ!?」
「オーホッホッホッホッホッ!! そうですわねぇ!! この窮地を乗り越えることができれば……わたくしの剣聖になる夢に、一歩近づくというもの……!!」
「剣聖だぁ!? 無理に決まってんだろ!! お嬢も、その夢を語るロザレナのことを、馬鹿にしていたじゃねぇか!!」
「そうでしたわね。ですが、今は違います。剣聖になるのは……わたくしたち箒星の誰かですわ!! わたくしはもう、自分は偽らない!! 頂点を見て諦めてしまった貴方とは違います!! わたくしは―――――――才能が無くても、頂点に立てるということを、証明してやるのですわ!! 我が師がくださった、【色彩剣】の名に賭けて!!」
「青臭いこと言ってんじゃねぇぞ、クソガキどもがぁぁぁぁぁ!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《アネット 視点》
「……領都ラオーレの近くまでやってきましたが……相変わらず、ルナティエと念話が繋がりませんね……」
あれから何度も魔道具を使って【コンタクト】を発動させてみたが、ルナティエはおろか、本隊にいるグレイやジェシカ、アルファルドにも念話は届かなかった。
そこから推察できる状況。恐らく、ルナティエたちは妨害属性魔法の範囲内にいるということに他ならない。
(ルナティエたちは、敵対陣営に攻撃を仕掛けられたのだろう。ゴーヴェン陣営か、もしくはエステル陣営か。どちらかは分からないが、オフィアーヌにもまた、敵がいることは間違いない)
フレーチェルやヴィンセントが、こちらに攻撃を仕掛けてくるはずがないからな。
レティキュラータスと同様、オフィアーヌにも敵がいたということか。
「なるべく、彼らを巻き込みたくはなかったのですが……仕方ありませんね。こうなったら、シュゼットたちに念話を飛ばして、予め報告を――――」
「師匠!」
ソファーの上でそう思考していると、突如、窓の外に鳩を飛ばして周囲を警戒していたフランが俺に声を掛けてきた。
俺は何事かと、窓際に立つフランに声を掛ける。
「フラン! どうしたのですか! 何か見つけましたか!」
「ま……まずいのじゃ……この先に……!!」
「え……? いったい何が……」
俺は言葉を言い終える前に、全員に向けて、声を張り上げる。
「みんなッッッ!!!! 頭を下げろッッッ!!!!」
「え? どうしたのよ、アネット?」
「アネットちゃん?」
「む? メイドの姫君?」
「どうしたんだ?」
「いいから、早くしろッッッ!!!!!!」
俺がそう叫び、全員頭を下げた……その時だった。
乗車台にまっすぐと亀裂が入り……屋根の部分が切り落とされ、宙に吹っ飛んでいった。
「……嘘、でしょう……?」
困惑の声を上げるロザレナ。
俺はそんな彼女を守るようにして前に立つと、馬車の進む先に立ちはだかるように立っている、一人の少女へと目を向ける。
金の髪に、長い耳。腰にある青い鞘に入った刀。
間違いない。アレは―――――――――――――。
「リトリシア……!!」




