第10章 二学期 第324話 剣王試験編ー㊷ 蒼焔剣の継承者
《アレフレッド 視点》
俺にとって、ジェシカは、俺の欲しいものを全て持って産まれてきた存在だった。
俺は最強の剣神の孫、ハインライン・ロックベルトの孫であったが、筋力も体力も闘気も、お爺様ほど才能を持った存在ではなかった。
だから、ジェシカが幼くして無意識に闘気を発現し、難なく数十枚の瓦割りを成功させた時は……驚き、自分が情けなく思った。
俺が彼女の隣で同じ数割った瓦は、まったくと言って良いほど、地面までには到達していなかったからだ。反対に、ジェシカの瓦は地面にまで到達して、割れていた。
嫉妬し、羨望した。
何故、兄と妹でこうも違うのかと。
俺は子供のころから、正義のヒーローに憧れていた。
だけど、ヒーローになるには、力も何も足りなかった。
妹に嫉妬して腐るのは簡単だった。だけど……俺が嫉妬を抱いた対象である妹は、俺が腐ることを、許しはしなかった。
『お兄ちゃんは、私にとって、ヒーローだよ!』
両親が事故で亡くなったため、俺たちは幼い頃から、お爺様の道場で過ごしていた。
だから、俺が殆ど、妹の親代わりをしていた。
そんな妹に、俺はヒーローだと、そう言われた。
敵わないなと、そう思った。
やっぱり妹は可愛い。俺はにとってお爺様と妹は、誰よりも大切な存在だ。
それからというものの、俺は、全力で妹を応援することにした。
ヒーローは、嫉妬なんてしないからな。
俺は兄として、妹が表舞台に立つ日を、ずっとずっと、待っていた。
学校で何かあったのか、落ち込んで帰ってきた日も。
泣きながら道場で修行していた日々も。
俺は傍で、ずっとずっとあいつを見守ってきた。
だからあいつがお爺様の汚名を晴らし、【剣聖】になりたいと打ち明けてきた日……俺は、お前なら確実になれると、そう答えた。
お前なら、お爺様を超えることがきっとできると。
なんたって、お前は、この俺の……お前のヒーローの妹なのだからな、ジェシカ。
「ジェシカ……」
回想を終え、今に戻る。
俺は剣王たちと共に席に座り、第三試合を見守っていた。
向かい合うロザレナとジェシカ。
俺はその光景を見て、強く拳を握ってしまう。
「勝て……ジェシカ……!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
《ロザレナ 視点》
「……」
「……」
お互いに黙り合い、剣を構えて睨み合うあたしとジェシカ。
すると、先に動いたのは……ジェシカだった。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ジェシカは連続して、あたしに目掛け剣を振り降ろしてきた。
あたしは上段に剣を構えつつ、その全てを避けていくが……段々と傷だらけになっていった。
どんどん、剣速が上がっている。どんどん、剣の威力が上がっている。
このままじゃ、上段を構えたままじゃいられなくな―――――――。
「そこ!」
青龍刀が、あたしの顔に目掛け放たれる。
あたしは寸前で上段の構えを解き、大剣を使って、その青龍刀を受け止めた。
キィィィィィンと音が鳴り響き、両手に重い衝撃波が伝わってくる。
「上段の構え……解いたね、ロザレナ」
「……!」
交差する剣の向こうで、ジェシカがしてやったりと笑みを浮かべていた。
せっかくチャージしていた闘気が、全て消え失せてしまった……!
強い……! 正直、この段階なら闘気石を付けたままでも勝てると踏んでいたけれど……グレイレウスやルナティエと当たるギリギリのところまで修行を続行して闘気を増やしていきたかったけれど……もう、そんなことを言っていられる余裕は、ないみたいね……!
あたしはジェシカの剣を弾くと、右脚に付けていた闘気石を外した。
そしてそれを、ポイッと、闘技場の外へと放り投げた。
するとその瞬間、爆発音が鳴り響き、巨大な土煙が宙を舞った。
その光景を見て唖然とする観客席。見ると、剣王たちも、驚いた様子を見せていた。
「な、なんと、ロザレナ選手……今まで、重りを付けて戦っていたようです……!」
「馬鹿もん。あれがただの重りなわけがあるか」
剣神ハインラインのそんな突っ込みが聞こえてくる。
「あれは、闘気石っていう、常時生命エネルギーを吸収し続ける代物じゃ。常人があれを一個付けて過ごしたら、常時呼吸が浅くなり、高山病のような状態になってぶっ倒れるのがオチじゃ。いや……一般人だったら、一時間過ごせるのかも怪しいところじゃの。なのに、あの娘は、そんな代物を付けても平気な顔をして今まで剣を振っておった。それもまだ二つ、あやつは両腕に付けておる。その意味が……お主には分かるか、司会者」
「……!」
ハインラインの言葉に、戦慄した様子を見せる司会者の男。
観客席からも、ザワザワと、どよめきが聞こえてきた。
「じょ、常軌を逸している……! 誰がうちの娘にそんな危険な修行を課したんだ……!」
「え? え? どういうこと? ロザレナ、そんな危険なものを今まで付けて戦っていたの? なんで、どうして……? い、今すぐ、残りの二つを外させなきゃ!」
お父様とお母様の必死な叫び声が聞こえてくる。
あはは。ごめんね、お父様、お母様。
心配してくれるのはありがたいけど、そんな生半可な覚悟じゃ、この先、あたしは絶対に剣聖になんてなれないの。
自分の身体を犠牲してでも、夢を掴みに行く。
そうじゃなきゃ、剣の頂になって、立てないのだから。
あたし……二人が考えるよりもずっと、本気で、剣聖を目指しているのよ?
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あたしは地面を蹴り上げ、大剣を振り回し、ジェシカに襲い掛かる。
ジェシカに大剣を叩きつけると、さっきとは立場が逆転し、今度はジェシカが剣を横にして、防衛の態勢に入った。
あたしの剣を受け止め切ったが、ジェシカはじりじりと背後へと追いやられていく。
「くっ……!」
「さぁ―――――――ここからよ!!!! ジェシカ!!!! ついてこられるかしら!!!!」
あたしは連続して、ジェシカに目掛け大剣を振り降ろしていく。
身体が軽い。もっと速く、もっと速く、あたしは動くことができる……!!
あたしはもっと、強くなることができる……!!
さぁ、どうかしら、ジェシカ!! 今のあたしに対抗できる術はあるのかしら!!
「……とりゃあっ!!」
その時。ジェシカが飛び上がり、あたしに拳を放ってきた。
あたしは腕を横にして、拳を防いでみせる。
先ほどとは違い、闘気石を外し闘気が増えたあたしに対して、ジェシカの拳は通らない。
あたしは、彼女の攻撃を完全に耐えてみせていた。
「う、嘘……!」
「隙だらけよ!!」
「あぐっ!?」
ジェシカの腹部に目掛け、蹴りを叩き入れる。
ジェシカはよろめくが、すぐに闘志をむき出しにして、あたしに襲い掛かってきた。
「くっ……!【心陽残刀流】風華の舞!!!!」
また、片手に持っている青龍刀を振り放ち、拳と蹴りを交互に使ってあたしに攻撃してくる。
あたしの格闘術は適当なものだけど、ジェシカの拳は、ちゃんと拳法に則ったものに思える。そういえば、【心陽残刀流】って言っていたっけ。ルナティエが使う格闘術と名前が似ているわね。剣と拳を器用に使って戦う戦法か……あたしも格闘術を覚えてみたいと思うけど、両手で剣を持つことを得意とするあたしには、不向きな戦闘法かもしれないわね。
アネットがあたしに【心陽残刀流】と【心刀無刀流】を教えなかったのは、何かしらの理由があったのだと思われるわ。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うっ! ぐっ、ま、敗けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 【気合斬り】!!」
あたしとジェシカはお互いに高速で剣を振り、剣戟を繰り広げる。
剣を振るごとに闘気の圧が飛んでいき、ジェシカの身体に浅い傷が作られていった。
反対に、あたしの身体には新しい傷はできていない。形勢は完全に逆転した。
闘気石を外したあたしの方が、完璧に、ジェシカよりもレベルが上だ。
(さっきは【覇剣】の隙を突かれたけれど、これなら、手数で押しきれば……!)
「【気合斬り】!!!!」
身体に目掛け青龍刀を振られるが、無傷。
反対にあたしは大剣を振って、ジェシカの肩に深い傷を作った。
「痛っ……!!」
肩から鮮血を巻き上げたジェシカは、肩を抑えて、一歩、後ろへと後退する。
あたしはそんな彼女に対して迫り、剣を振り放った。
「もう、諦めなさい。今の貴方じゃ、あたしには勝てないわ」
「あ」
あたしが振った剣が、ジェシカの青龍刀を、後方へと吹き飛ばした。
ジェシカは即座に振り返り、闘技場の外へと落ちそうになっている青龍刀を……空中に飛んで、キャッチする。
そして闘技場の際へと降り立つと、彼女はホッと息を吐いた。
「おしまいよ」
あたしはそんな彼女に対して、トドメの剣を振り放つ。
ジェシカは振り返ると、即座に青龍刀を構えて……あたしの大剣を受け止めてみせた。
しかし、ジェシカが立っていた場所は、闘技場の際。
このままあたしが圧しきれば、彼女は闘技場の外に落ち、敗北は免れない。
勝った! これであたしの勝ちよ、ジェシカ!!
「――――――ジェシカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」
その時。剣王たちが座っている席から、怒号が聞こえてきた。
視線を向けると、そこには、腕を組んで立っているアレフレッドの姿があった。
アレフレッドはジェシカに向けて、再度、声を張り上げる。
「忘れたのか、ジェシカぁ!! 蒼焔剣ロックベルト道場の門下において、絶対に守らなければならない三つの教えがある!! その一!!」
「倒れる時は、後ろではなく、前のめりで!!」
「その通り!! その二!!」
「無様な敗北は見せない!! 最後まで出し切って、逃げずに戦うこと!!」
「その通り!! その三!!」
「逆境の時こそ、根性と気合で……全てをぶっ飛ばす!!!!」
「その通りだ!! 敗けるな!! ジェシカァ!!!! この俺ではなく、お前が……お爺様の跡を継ぐのだぁぁぁぁ!!!! 気合が足りんぞ!!!! ふんばれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!! ジェシカ・ロックベルトぉぉぉぉぉ!!!!」
「押忍!! ド根性ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
ジェシカが、あたしの剣を押してくる。
その光景を見て、あたしは思わず、目を丸くさせてしまった。
「うそ……でしょ……?」
ジェシカの身体から、さらに倍の……闘気が膨れ上がる。
意味が、分からなかった。
あたしたち箒星の門下生に、気合いとか意味の分からないもので強くなる人なんて、いないからだ。
なに……これ? いったい、どういう原理なのよぉぉぉぉ!?!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
ジェシカが、あたしの剣を弾いてきた。
そして彼女はそのまま、あたしに剣を振り降ろしてくる。
「【気合斬り】ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」
瞬時に、やばいと思った。嫌な予感がする。
あたしは即座に左腕の闘気石を外し、大剣に闘気を纏い、ジェシカの青龍刀を防ごうとする。
いや――――――――これは――――――――――――!!
「受けちゃ、駄目な奴だ」
あたしは横に逸れて、その剣を避けてみせた。
するとあたしがさっきまで立っていた場所がドゴォォォォォンと爆散し……闘技場が、真っ二つに、割れてしまった。
闘技場に刻み付けられた斬撃の痕には、焼け焦げたような跡が見て取れた。
少し、炎が舞っていた。どうして……? ジェシカは確か、魔法因子がなかったはずよね……? 魔法剣じゃ……ないわよね……?
その光景を見て、あたしは唖然とする。観客席も、同じように唖然としていた。
「よくやったぞ、ジェシカ!! それでこそロックベルトの名を継ぎし娘だ!!」
アレフレッドは涙を流し、サムズアップをしていた。
あたしはアレフレッドから視線を外し、目の前にいるジェシカへと目を戻す。
あれほどの威力の斬撃を放ったというのに、彼女は息切れひとつしていなかった。
青龍刀を構え、彼女は、悠然とあたしを睨み付けている。
「まさか……闘気石を二つ……外されてしまうなんて……」
残りの闘気石はあとひとつ。
闘気石は付けたままで剣を振るごとに、筋力や体力、闘気のチャージ量などの能力が強化されていく代物。
あたしはグレイレウスやルナティエと戦うまで、この闘気石は全部外さないつもりでいた。あの二人こそが、あたしの一番の敵だって、理解していたからだ。その時まで無駄な力は使わず、他の者との戦いを修行として乗り越えるつもりでいた。
それなのに―――――――ジェシカに、二つも闘気石を外されてしまった。
「私がその石、全部外してみせるよ、ロザレナ。あんまり舐めないでよ。私だって……剣聖を本気で目指している、剣士の一人なのだから」
「……そうね。そうだったわね」
あたしはふぅと短く息を吐いて、大剣を構える。
さっきの一撃は凄まじいものだった。恐らく、石を三つ外した今のあたしが放つ【覇剣】よりも威力が上かもしれないわ。体力も向こうの方が上。最後の石を外さずに戦うのだったら……苦手だけど、どうやら頭を使って戦う必要がありそうね。
ルナティエだったら、どうやってこの窮地を乗り越えるのか。
脳内で、ルナティエを想像してみる。
『オーホッホッホッホッ! 簡単ですわ! 何処か怪我をしたふりをして、泣き脅しをすれば良いんですのよ! あの善人のジェシカさんだったら、確実に動揺して隙を作りますわぁ!! その隙に【覇剣】を叩き込んでおやりなさぁい!! オーホッホッホッホッ!!』
却下。あたし、あんたと違って、そういう卑怯な手、嫌いなのよね。
『なんですって!?』
今度は脳内で、グレイレウスを想像してみる。
『フン。あのアホ女はアホそのものだ。奴を罠に嵌めてやれば良い』
罠って何よ。
『知らん』
あんたに相談したあたしが馬鹿だったわ。
……どれも駄目ね。やっぱり、あたし自身で考えて、乗り越えなきゃ駄目みたいだわ。
何か……何かないか……。
「……そうだわ。あれを使えば……」
あたしの視線の先にあるのは、闘技場に刻み付けられた斬撃の痕。
ジェシカ自身が付けた、あの傷を利用することができたら、あるいは……。
すると、その時。あたしを見て、ジェシカが眉を顰めた。
「最後の石、外さなくて良いの?」
あたしは闘技場の斬撃痕から視線を外し、ジェシカに顔を向けて、口を開く。
「ええ。別に、これは貴方を舐めているわけではないのよ。どっちみち……ここで全ての石を外して貴方に勝っているようじゃ、あの二人に勝つことはできないから。少しでも、力を強化して、温存したいの」
「……私よりも、グレイレウス先輩やルナティエの方が強いと思っているの?」
「違うわ。そんなふうに思ってはいな……」
いや。ここの返答は、そうじゃないわ。違うかもしれない。
相手を挑発し、剣筋を惑わせる。それが、今、取るべき最良の策。
「……そうね。多分、今の貴方よりも確実に強いわよ。あの二人は」
ジェシカが闘気コントロールを覚えて、これ以上強くなったら……分からないけれどね。
彼女が、あたしたち3人よりも強くなる可能性を秘めているのは間違いない。
「むっかぁぁぁぁぁぁ!! 怒ったよ!! もう、ぜっーったいに、ロザレナが最後の石を外さなかったことを、後悔させてやるんだから!!」
ジェシカが地面を蹴り上げ、あたしに目掛け青龍刀を放ってくる。
「【気合斬―――――――」
案の定、あたしの挑発に乗って、安直な攻撃に出てきたわね。
これが考えて戦う、ということかしら。少しルナティエの気持ちが分かってきたわ。
あたしは敢えてジェシカの間合いに入ると、彼女の顎に目掛け膝蹴りを放ち、蹴り上げた。
「かはっ!?」
「とりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
あたしは続けて剣を振り降ろした。
何よりも先決なのは、ジェシカに【気合い斬り】を撃たせないこと。
多分、闘気石を三つ外したあたしでも、ジェシカの【気合斬り】は……受けきることはできないと思う。
闘気石を全て外さなきゃ、ジェシカの【気合斬り】を真っ向から止めることはできない。
「こ、このぉぉぉ!!!!」
ジェシカも青龍刀を振り、あたしの大剣を防いでみせる。
その後、あたしたちはお互いに剣を振り放ち、ガンガンと打ち合っていった。
素の殴り合いであれば、今のジェシカとあたしは互角。どちらにもダメージを与えられそうにない。だけど――――――――。
「ゼェゼェ……!」
「ロザレナ、体力が切れてきたみたいだね!! なら……!!」
ジェシカが攻め手に回り、あたしに剣による突きと、回し蹴りを交互に放ってくる。
あたしはそれを全て剣で弾いていくが、体力が持ちそうになかった。
(認めたくないけど……ポテンシャルでいえば、彼女の方が上みたいね……!)
闇属性魔法で相手の闘気を吸収できればわけなく戦えそうだけど、それはこの場では使わないとアネットと約束した。無尽蔵に体力のあるジェシカ相手と長期戦をすれば、こうなるのは最初から分かっていたこと……!!
「だけど……!!」
あたしは一歩力強く前に踏み出すと、全力で、横薙ぎに剣を振り放った。
「とりゃああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
ジェシカはそれを青龍刀で防ごうとするが……彼女が足を向けた先は、さっきジェシカ自身が闘技場に斬撃を放った、穴が空いている場所だった。
「わわわっ!?」
穴に躓き、よろめくジェシカ。
これを、狙っていたのよ……!!!!
「吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」
あたしは剣を振り放つ。すると、寸前で横にしたジェシカの青龍刀に当たるが……威力を殺しきれず、彼女はそのまま後方へと飛んで行った。
「こんんん……のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
ジェシカは空中でクルクルと回転し……地面に着地する。
そして彼女は、青龍刀をあたしに向け、咆哮を上げた。
「残念でした! 私は全然、ダメージを負ってないよ! さぁ、もう一回、私と勝負だよ、ロザレナ! 絶対、ロザレナの最後の闘気石を外してみせるんだから!」
さらに闘気を増やすジェシカ。
本当に……限界がないみたいね。
だけど…………。
「いいえ、ジェシカ。もう、終わりよ」
「え? な、何で? いったいどういう意味――――――――あ」
ようやく、ジェシカは気付いたようだ。自分が着地した場所を。
「……ジェシカ選手、場外落下!! 第三試合は、ロザレナ選手の勝利です!!」
一瞬の沈黙の後。わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、と、盛り上がる観客席。
「すごい戦いだったぜ!! 二人とも!!」
「レティキュラータスの娘がこれほど強いとは思ってもみなかった!! ただの没落貴族じゃないんだな!! これが……初代剣聖の末裔か!!」
「あの二人は、絶対に上に上がってくるぞ!! 剣王なんかで止まらないぞ!!」
「ロザレナ様ー!! こっち向いてー!!」
「二人とも剣王にしろー、審判ー!!」
わーわーと、それぞれ歓喜の声を上げる観客たち。
まさか、周りからずっと見下されてきた、レティキュラータス家の娘であるあたしが……こんな歓声に包まれるだなんて、想像していなかったわ。
あたしは「はぁはぁ」と荒い息を吐いた後、額の汗を拭った。
すると、闘技場の下に落下したジェシカが、闘技場に顎を載せて、ぷくーっと頬を膨らませてこちらを睨んできた。
「いまのーちょっと、なっとくいかないんだけどー。いしをはずさずにつづけてたら、わたしのほうがぜったいにつよかったー」
「悪いわね、ジェシカ。ルールでの勝利を優先させてもらったわ」
「なっとくいかなーい!! むきー!!」
「剣王試験が終わったら、いくらでも戦ってあげるわ。だから今は納得して。ね?」
「んー。わかったー」
不機嫌そうな表情のまま、ジェシカはコクリと頷く。
あの子の目的、剣王になることよりもあたしを倒すことにチェンジしていないかしら……。
「うぉーん! うぉーん! ジェシカ、よくやったぞぉぉぉ!! お前たち二人が、俺は、大好きだぁぁぁぁぁ!! うぉーん! うぉーん!」
腕を目元に当て、男泣きするアレフレッド。
「あっちゃあ~。駄目じゃったかぁ~。やっぱり、あの子には、周囲に目を配る能力が足りていないのう~」
顔に手を当て、ため息を吐くハインライン。
アレフレッドは他の剣王の制止を無視して、闘技場まで駆けてくると、ジェシカを強く抱きしめた。
「お兄ちゃん!? 何やってるの!? 暑苦しいし、恥ずかしいからやめて!!」
「うぉーん!! うぉーん!! ジェシカぁぁぁぁぁ!! 頑張ったなぁぁぁぁ!!」
ジェシカを解放すると、今度はあたしに向けて手を広げて向かってくるアレフレッド。
あたしはそんなアレフレッドの顔面を蹴り上げ、ノックアウトした。
それと同時に、会場からは、笑い声が漏れる。
まぁ……何とか、第三試合を乗り越えることができたわね。
欲を言えばアネットに見て欲しかったけど、しょうがない、か。
フランエッテの奴が、何かよく分からないけどピンチだものね。何かよく分からないけど。
次は、ヒルデガルトさんとアルファルドの試合、か。
そして、どちらか勝った方とルナティエが戦って……最後に残った者が、あたしと戦うことになる。
あたしはちらりと背後を振り返った。
その視線の先にいるのは、ルナティエの姿。
あたしとルナティエは無言で睨み合う。
そしてあたしは髪を靡くと、闘技場から降りて行った。
「さっさと上に上がってきなさい、ルナティエ。あの時の再戦……楽しみにしているから」
読んでくださってありがとうございました。
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