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最後の戦い〜覚悟


「仲間を……救えるだと?」


キープは目を閉じて体の中で魔力を高める。


(みんなを助けたい! お願い!!)



魔王はそんなキープを見ると、

「バカめ! 魔法など発動する前に消えるわ!」



そう、この部屋は魔力を自然エネルギーに還元する。

それは魔力が自然エネルギーから転化されたものだから。


(でも僕が今使おうとしている魔法は……)


「『大回復範囲(セイントヒールリング)』」

魔法が……発動する!!


仲間達の体が光り輝いた。



レジーナが復活した翼を羽ばたかせて群がっていた魔物達を吹き飛ばす!

そして龍爪で魔物を一掃していく!

((キープ……またもや助けられるとは))



ミラとアルタイルが押し込まれていた剣を跳ね返す!!

「これって……」

「ああ……キープだ」



「傷が……手が……」

治っていく体……ミアプラの心に暖かな物が流れ込む。

何故か涙が零れた……。



「キーちゃん……」

クルサがすれ違いざまに犬の双頭を刎ねる!

綺麗に治った猫耳と尻尾が嬉しそうにピンとなった。



「これは……」

「もしかしてキープ?」

ロードとアリアはお互いに頷き合うと駆け出す!



「やった! カペラ、きっとキープだよ!」

「ベガ? それにキープって」

まだ少し朦朧とするカペラにベガが涙目で抱きついた!



「師匠……ありがとうございます!」

痛む腕が治って力が入る。

組み合っていたミーシャを押し戻して押さえつける!



アレスの傷が治っていく……。

折れた骨やねじれた体がもとに戻る。

気を失ったままだが、その顔から苦痛の表情が消えていく。




映像の向こうで回復する仲間達を見て魔王が信じられ無いと声を上げる。


「そんなバカな!!!」


キープが微笑み、

「回復魔法は相手が見えないと使えないです。 貴方が見せてくれたお陰で助かりました」



「城の外にいる者まで回復するなど……」


「僕、王都丸ごと魔法かけたんですよ? これぐらいの範囲なら大丈夫です」


「……何故魔法が使える?」


「内緒です」

魔王に手の内は晒せない。


これはキープにしかできない。

生命力を魔力に変えることが出来るキープにしか……。


この部屋は自然エネルギーの魔力が還元対象。

生命エネルギーからの魔力は還元出来ない……キープの推測通りだった。



(そして……ここからも僕にしかできないこと)

魔王には物理も魔法も通じない……実はキープはその可能性を考えていた。

歴代勇者が一人も倒せないのだから……。


だから魔王を倒すと決めていた時から……考えていた。




神命(ディスティニー)




魔王の存在をなかった事にする……僕の運命(いのち)で。


使用する運命は本人が了承していなければ使えない。


だから僕は了承する……自分の運命で魔王を倒す。



キープは魔王に目を向ける。

その気迫に魔王がたじろぐ。


キープが生命力を使って魔力を高める。



魔王が慌てたように魔法を使う!

キープが魔法を使える事に焦ったようだ。


「何をする気か分からないが……死ね! 『生命停止(エンド)』」


魔王から黒い波動が放たれる!!

触れた物の命を終わらせる死の魔法!


その魔法がキープに当たる寸前!!

キープの懐から眩い光が溢れる!!



「ぐわぁ! なんだこの光は!」



光は黒い波動消し飛ばした!


キープが懐から光る物を取り出す。


それは『龍の涙』


どんな厄災からも守る御守り。

最後の夜にレジーナから貰い、効果も聞いていた。


キープが死にそうになると勝手に発動し、虹色の分……七分間は全ての攻撃から身を護ってくれると。

一回きりだが……今のキープにはそれで充分だった。


これで魔王を気にせず『神命(ディスティニー)』を詠唱出来る。


キープは目を閉じて魔力を高め始める……。






そんなキープを見てナシュは不安にかられた。


(何をする気なの?)


さっきから体が押さえつけられた様に動かない。

キープの元に寄りたいのに足も手も動かなかった。


「キー……プ」

必死に声を上げる。


「何を、する……気なの?」


私の声にキープがこちらを向く。


困った様な……それでいて優しく守ってくれる様な……。


「何を……? ねぇ!」

その顔を見ると少し力が入る。


私の勘が、心が、考えが……全てが告げる。

キープは何かする気だ。

そしてそれは……きっと自分を犠牲にするものなのだと。


「待っ……て。 やめて」


「ナシュ……」

再度キープが困った顔で見てくる。


「何かするなら……私も……一緒に」


動かない足が、手が、もどかしい!

這ってでも良い、転がってでも良いから、キープの側に!!


キープが首を振る。

これは僕にしかできないことだから……そう告げた。


「いや……だ。 待ってよ」

お願い動いて!!

今だけで良いから!! キープを止めさせて!


「心配しないで。 僕はみんなを幸せにしたいから」

キープが私に微笑んで見せる。

いつもと変わらない可愛い微笑み。


でもきっと違う。

いつも通りなわけ無い。


「そのみんなに……キープは居るの?」


私の言葉にほんの一瞬だけ目を伏せた。

直ぐに微笑み頷く。


きっと嘘。

優しい嘘。


「お願い……私は貴方と一緒が……」

動いてって!!

何で動かないの!!!


体は動かないのに涙だけは出る……。

きっと顔も酷い有様……でもそれでもいいから!


あまりに泣く私に微笑みながらも困った顔をするキープ。


そして私の方に歩いてくると、膝立ち状態で動けない私の前にしゃがみ込んだ。


そして、ハートがついたローブの袖で私の涙を優しく拭きながら、

「大丈夫だよ、ナシュ。 辛くなくなるから……だから心配しないで」


そう言ってくれる。


「いや、キープがいないと私は!」

泣きながら叫ぶ私の頭をポンポンして、


「ナシュ……泣かないで」

私に優しい笑顔を向ける。


「む、無理だよぉ……あ、あなたが居なくなるなんて」

首を必死に振ってイヤイヤをする。


行かないで……消えないで……いなくならないで……

涙にぼやける彼の顔は……やっぱりいつもと同じ優しくて……。



そして気付いてしまった。

彼の紅玉色の瞳に映る、その覚悟に……。


(ああ……やっぱり私には止められないのね)

気付いてしまった。

彼の覚悟を変えられない事に。





キープは一度だけナシュを力強く抱き締めると、直ぐに立ちあがり魔王に向き直った。




ナシュが手を伸ばす……しかしキープには届かなかった。





魔王は先程から色々魔法を唱えているようだが、そのどれもキープには届いていなかった。


「なんだ! 一体お前は何なんだ! 勇者だろうと私を倒せない! いや、誰にも私は倒せないはずだ!」


影が動揺する様に大きく揺れる。



そんな魔王に向かってキープは詠唱を始める。


後ろでナシュが何度もキープの名を呼ぶ。

しかしキープの詠唱は止まることはない。


詠唱をしながら思い出す……。



「来たれ聖光……」


お父さん、お母さん、ミーシャ……村のみんな。 お元気で。




「先々の路……」


レッドさん、イリーナさん、シャウラさん、冒険者として助けて頂きありがとうございました。




「岐路を現し……」


王様、ミモザ王女、レグルスさん、アルドラさん、国の事頑張って下さい。



「無数の果て……」


エニフ女王、アルミナさん、ダビー公爵、レサトさん、コルさん、ハマルさん、そしてみんな、お幸せに。



「無限の導……」


レジーナ、あなたは誇り高くそして信頼出来る龍でした。 



「無常の世……」


マタル、君ならきっと立派な女王になれるよ。



「地の終わり……」


カペラさん、いつも暖かな背中に背負ってくれてありがとう。

ベガ、君の明るさはいつでもみんなを笑顔にしてくれた。

アルタイル、優しい雰囲気は常に皆を安心させてくれました。



「大海の先……」


アレスさん、あなたは正義のヒーローみたいで格好良かったです。

ミアプラ、君の残りの人生は楽しく幸せに生きてほしい。

    


「空の彼方……」


クルサ、君ならきっとたくさんの親友が出来るよ。



「無縁の回帰……」


ミラ、貴方は立派に役目を果たした誇り高き騎士でした。



「交差し命……」


ロードさん、貴方が後ろにいる事でとても安心出来ました。

アリアさん、貴方ならきっと世界一の魔術師の夢を叶えるでしょう。


    

「無上の願い」


ナシュ。 君には本当に救われた。

僕を大事にしてくれて、護ってくれて、想ってくれて、好きになってくれて……本当にありがとう。


最後泣かせてしまった事だけが心残り。

でも、もう少しで僕を忘れるから……そうしたら、いつもの素敵な笑顔に……幸せになってね!



「キープ!!!!」

ナシュが思いっきり叫んだ!


最後にキープはナシュを見て……ニッコリと笑い頷く。


(大丈夫……だからね)


(僕が……みんなを守るから)


そんな声が聞こえた気がした……。



そしてキープが叫ぶ!


「『神命(ディスティニー)』!」



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