エピローグ
(何で僕怒られているんだろう……)
正座をさせられているキープはそう思った。
目の前には台座に浮くキューブ。
ここは……キープが大魔法を覚えた場所であった。
魔王の戦いで『神界』を唱えてから、気が付いたらここにいて……そして、
「こら! 聴いているのか?」
「は、はい! 聞いています!」
「全くお前と言うやつは……」
そこから何故か目の前のキューブに怒られている。
いい加減正座している足が痺れてきた。
「慈愛が強いとは思っていたけど、ここまでとは思わなんだ……」
キューブの話はまだ続いている……。
仕方ないのでキープから声を掛ける。
「あ、あの〜? 何故僕は怒られているでしょうか?」
キープの質問にキューブはフヨフヨ漂いながら、
「お前が自己犠牲すぎるからだ!」
口は無いくせに強い口調で怒られる。
「あれほど使い方に気をつけろと言ったであろう」
「ですが、魔王を倒すにはあれしか……」
「……あの状況ならそうかも知れん。 しかし……お前に伝えた様にお前の事は私も応援していたし、こうなるとは思いもしなかった」
「えと、それと、僕なんで消えてないんですか?」
「私が消えそうになるお前を引っ張ったからだ」
「??」
「お前はここを不思議だと思わんか? 永劫崩れない、風化しない、そして適正者以外は入れない」
確かにここでの試練中はお腹がすくなどの生理的現象もなかった。
「ここは、時間、時空、次元が乱れている場所、お前さんがいた世界とは色々違うのだ」
「???」
「まぁ、分かれとは言わん。 簡単に言うとお前さんが消える前に私がこの世界に吸い上げたと言うことだ。」
「そう……ですか」
言っている意味は今一つだが、どうやら僕はまだ消えていないらしい。
こんな事が出来るなんて……一体この人?は何なんだろう?
「私か? 私は……と言う」
「? ごめんなさい。 聴き取れなかったです」
「いや……恐らくお前さんには聞えない言語かもしれん」
キューブがクルッと一回転する。
「さて、ここからが本題だ。 私は『神界』を創り出した者。 その方法は運命の転換だ」
「運命の……」
「そしてキープ。 お前の運命を戻そう」
「えっ……」
僕が驚いていると、キューブの周囲に魔法陣がいくつか現れる。
「で、でもそうしたら魔王は?」
「心配するな、お前の運命の代わりには私の運命を使う」
「えええ! それだと貴方が!」
「……元々私は大賢者や神の遣いと言われていただけの、お前さんと同じただの人だ。 しかし生まれつき体が弱く不自由な身体をしており、魔王を倒しに行くことは出来なかった。 そこでいくつかの大魔法を創り出し、それを後世に残すためこの場所を造り……」
キューブが少し回る。
「この魔法的な身体に命を移した……いつ迄続くか分からない後世の為に……魔王を倒すその日まで……」
「じゃあ……」
「ああ、お前さんのおかげだ……これでようやく役目からも解放される」
キューブは変わらずフワフワしている。
「でも貴方が消えたら『神界』の存在も消えちゃうのでは?」
「前にも言ったが事象は消えん。 魔法自体は別な流れで形作れるだろう」
そして……キューブが、台座に落ちる。
「魔王までの長い旅路と命を賭しての討伐。 本当にありがとう」
あれは跪く感じなのだろうか?
「いえ、そんな……」
「自分自身を大切にしないのはイラッとしたので説教したが……まぁ、今後はその運命大事に使う様にな」
キューブが再び浮くと、
「では行くぞ! 今度こそお前さんが幸せになるようにな!」
魔法陣が全て光り始め……キープが何か言う前に意識が途切れた。
「ん?」
目を覚ましたキープは軽く背伸びをする。
今は短く肩までのセミロングになった髪がサラサラと風に流れた。
(寝ちゃってた……天気もポカポカ陽気だし下は原っぱだし、これは寝ても仕方ないよね)
誰に言うでもなく寝ていた原っぱから立ち上がり、体を払う。
(久しぶりに見たなぁ……あれから、もう二年になるなぁ)
今の夢を思い出す……いや、夢ではなく記憶だ。
魔王を倒してもうすぐ二年になる。
二十歳前になったキープの姿は……やっぱり変わらない。
未だこの姿のせいで色々誤解されたりナンパされたりしていた。
「キープ!!」
遠くからキープの名前を呼ぶ声がする。
振り返ると一緒に旅をしている大切な人だった。
キープが手を挙げるとその人が走ってくる。
魔王を退治してテイル村に戻った後、一年後また旅に出た。
と言っても今度は思い出を積み重ねる為。
思い出を重ね、キープ自身の運命と言う本にする為。
駈けてきたその人にキープは笑顔を見せると、
「えへへ、ごめん。 寝ちゃってた」
そしてその人が何か言い出す前に、その手を握り楽しそうに、
「行こう! 思い出の頁を集めに!」
そう言って一歩踏み出した。
完
長い間お付き合い頂きありがとうございました。
初投稿から毎日更新、そして最後まで辿り着けたのはひとえに皆様のおかげです。
心より感謝申し上げます。
ありがとうございました!!!




