第44話 彼女の転機
〜side:シルフィア〜
「誰かここから出して!私をここから出して下さい‼︎お願いします‼︎」
辺りは真っ暗な空間の中でフェンリルの獣人族の女性であるシルフィアは檻の中に閉じ込められていた。
「この恥晒しがッ‼︎」
「お前なんていらないんだよ‼︎」
「我等のフェンリルの獣人族の名前を汚しおって‼︎」
「このろくでなしが‼︎」
「このゴミが‼︎」…………
彼女が閉じ込められた檻の外を周りから何十人もの彼女と同じフェンリルの獣人族であり、また同じ村に住んでいた村人たちが囲みシルフィアを罵倒していた。
「違う‼︎。私は悪くない‼︎。私はゴミなんかじゃない‼︎」
檻の中のシルフィアは耳を両手で塞ぎ、その場にしゃがみこみ、そして周りからの言葉を全て否定する。
「ゴミが何を言っておる!お前はゴミじゃ‼︎」
「そうだ‼︎この役立たずのゴミが‼︎」
「ゴミはゴミらしくさっさと捨てられろ‼︎」
「お前なんか奴隷商に売ってやる‼︎」
「「「「「ゴミ‼︎。ゴミ‼︎。ゴミ‼︎。ゴミ‼︎。ゴミ‼︎。………」」」」」
しかし、彼女の言葉に耳を貸すものはおらず、シルフィアは周りからゴミとしか扱われなかった。
「私はゴミじゃない‼︎。ゴミなんかじゃない‼︎。誰かお願い‼︎。誰か私を助けてよ‼︎‼︎」
シルフィアは檻の中で周りの声より高く、そして心からそう叫んだ。
自分をこの檻から助けてくれる人物に向けて。
〜〜〜
「助けてよ‼︎」
<ガバッ>
シルフィアはベットからそう叫びながら勢いよく上体を起こした。
「ハァ、ハァ、ハァ……また、あの夢……」
村から捨てられ、奴隷商に売り飛ばされてからこの夢を彼女は毎晩見るようになった。
外はまだ真っ暗であり、この暗闇の中で彼女は自分のことを考え始めた。
(私はやっぱりゴミなのかな)
彼女は自分自身にそう尋ねるものの、それで何かがわかる筈もなかった。
そんな時だった。
「ん…どうした…シルフィア?」
「‼︎‼︎」
隣から突然掛けられ声にシルフィアは驚きながらも声のした方へと顔を向ける。
「レイジ様……」
隣にいたのはこの世界では珍しい瞳の色と髪の色が両方とも黒色であり、シルフィアの御主人様であり。また家族である礼治が上体を起こして目を擦っていたのだ。
因みにこの時彼はフェンリルの獣人族なので月明かりがない夜でも彼女の目はよく見え、自分の御主人である礼治の顔がはっきりと見えていた。
「もも、申し訳ございませんレイジ様!私の声のせいで起こしてしまい本当に申し訳ございません‼︎」
シルフィアは直ぐに礼治に謝罪する。
「そんなに謝んなくてもいいよシルフィア。それよりどうしたの?なんか怖い夢でも見た?」
それに対して礼治は怒鳴ることはせず、シルフィアのことを心配していた。
シルフィアそんな心優しく、また彼は元からモテる容姿をしているからこそ異性として好きになったのだろう。
「おーい、シルフィア?。大丈夫?」
そんな彼女は礼治のことを考えてしまうあまり、あろうことか礼治本人のことを無視していたのだ。
「スミマセンでした‼︎」
彼女は自分の失態に気づくとまた直ぐに今度は土下座して謝罪をした。
「だから謝らなくてもいいから。それよりもなんかあったの?」
そんな彼女に礼治はまた優しくしてもらえたことに嬉しそうにしていた。
その後、シルフィアは礼治に自分が奴隷になってから見るようになった夢のことについて話した。
「それは辛かったね」
シルフィアの話を最後まで聞き終えた礼治はまるで自分のことのように哀しい顔をした後、シルフィアの頭を優しく撫で始めた。
「ハフゥーーーーーー////」
シルフィアは礼治が頭を撫でてくれる度に身体が熱くなり、自然に哀しい気持ちが吹き飛びとても癒されていた。
「シルフィアの気持ちはわかるよ。俺もそんなのだったし」
「え⁇」
しかし、礼治のその一言を耳にしたシルフィアにとってはあまりにも衝撃的のことだった。
「レイジ様も私と同じで捨てられたのですか⁉︎」
彼女はこの時驚きとともに今までに感じたことのない怒りが心からこみ上げてきていた。
「レイジ様。レイジ様を捨てた奴の居場所を教えてください。私が今からそちらに向かいレイジ様を捨てた奴を殺してきますので」
「いやいやいや!そこまでしなくていいよ。それに『捨てられた』じゃなくて、『逃げた』が正しいしね」
彼女のあまりにもガチめな言葉に礼治は慌てて言葉を訂正した。
「『逃げた』がですか?」
「そう、『逃げた』が正しい。まあもしも『捨てられた』が正しかったとしても、シルフィアがその人を殺るのは無理だね」
「もしかしてその方はもうこの世にはいないのですか?」
礼治の話からして彼女はそう判断した。
「いや生きてるよ。多分だけどね」
「⁇⁇」
しかし、礼治の言っていることが理解できない彼女は首を横に傾ける。
「ああ、ゴメンゴメン。そんなことを言われてもわからないよね」
シルフィアが考えていると礼治は彼女を混乱させてしまったことに謝罪をしてきた。
「シルフィアにも早めに俺のことを話さないといけないけど、今はまだ夜で日が昇るのにもまだ時間があるから今は寝て、今日の朝起きてから時間が空いたその時に話すよ。それでいいかな?」
「レイジ様がそうしたいのであれば私もそれで構いません」
本当は今直ぐにでも聞きたいシルフィアであるが主人である礼治が眠たいのなら彼女はそれに従うしかない。
そうして礼治が横になった後、シルフィアも横になる。
「どうかしたのシルフィア?」
しかし、寝ようとしていた礼治がそう尋ねたのだ。しかし、それもそのはず。今のシルフィアは自分の身体を礼治の方に寄せて彼に抱きついていたからだ。
「ス、スミマセンレイジ様!。…実は夢を見た後だと怖くてなかなか寝付けなくて、そのですね…このまま、レイジ様に抱きついたままで寝てもいいですか?」
シルフィアはそう言い終えた瞬間、恥ずかしさのあまり自分の顔が熱くなり、真っ赤になった顔を隠すように下を向いた。
「シルフィアがそうしたいならそれでいいよ」
礼治はそう言ってシルフィアの頭をまた優しく撫でる。
「ハフゥーーーーーーーーーーーー/////」
シルフィアの顔は更に真っ赤に染まり。また礼治が自分の頭を優しく撫でてくたことがとても嬉しく、自然と尻尾をブンブンと振ってしまった。
「じゃあおやすみシルフィア」
「お休みなさいませレイジ様」
シルフィアと挨拶を交わすと礼治はものの数秒で寝息を立て始めた。礼治は昨日、シルフィアや今は彼を挟んでシルフィアの反対側でスヤスヤと寝ているフールを守るために一人で十八人の敵と戦っていたためにとてもお疲れていたのだ。
そんな彼をシルフィアは自分の人生を変えた礼治の家族として力をつけて彼を守っていきたいと心からそう強く誓ったのだ。
<クンクン>
(やっぱり、レイジ様はお日様みたいに暖かい匂いがしますね。なんだかとても癒されます)
シルフィアは礼治から漂う、彼女にとて落ち着く匂いを嗅いだ後そのまま眠りにつくのであった。
P.S.
その日以降、シルフィアはあの悪夢を見なくなり、そのことにシルフィアは礼治に対して更に感謝の気持ちを向けるのであった。




