第39話 新しい家族
久しぶりの連日投稿です。
(どうしてこうなった?)
今は礼治とフール、それから新しく家族(奴隷)になったシルフィアの三人はボグレスが取締まる奴隷商『ボグレス』本店をあとにして街を歩いているところだった。
礼治がなぜそう思ったかというと今の状況にある。
(フールはいつも通りだから良しとしよう)
礼治の左側にはフールが礼治の腕に抱きつきながら歩いていた。
(問題はこっちだよな。どうしてこうなったんだ?)
フールが礼治の腕に抱きつくのはいつものことであり、なんら変わりはない。しかし、礼治の右側に目を向ける。
そこには何かに怯えるような様子で礼治の腕に抱きつきながら歩くシルフィアがいた。
(シルフィアって改めて見ると結構可愛いよな)
シルフィアの身長は156センチで首には奴隷の証である黒い首輪をはめていた。
着ているものは茶色の質素な服だったが、身体つきはバストは少し大きめ、ウエストはしっかりと引き締まっており、ヒップはシルフィア自身のバストより少し小さめ、所謂モデルに近い体型の為にとても品があるように見える。また背中にまで軽く届く綺麗な銀色の長い髪に、顔は少し肉付きのある三角顏、瞳の色は初めて出会った時に比べて光がともっておりサファイアのように明るく透き通った青色で少し垂れ目、鼻はちょっぴり高めで彼女が喋る時には上顎から生えている尖った犬歯が見え隠れし、それに加え獣人なので頭の上にはピンと立った犬耳があり、腰のあたりから少し膨らみのある尻尾が垂れ下がっていた。
そんな見た感じは落ち着きのあるおっとり系の彼女なのだが今は礼治の右腕をシッカリと両手で握りしめモデル体型の身体を押し付けながら辺りをキョロキョロ忙しなく見渡しており、見た目に合わず全く落ち着いていなかった。
「大丈夫かシルフィア?」
先程からシルフィアの落ち着きのない行動をしているので礼治は心配になり声を掛けてみた。
<ビック‼︎>
「も、もも、申し訳ございません御主人様!」
突然声を掛けられたシルフィアは驚くあまりに身体をビクつかせ、慌てた様子で謝罪をしてきた。
「私は今までずっと山奥の小さな村から出たことがなく、奴隷としてこの街に連れてこられた時も馬車の中にいたためにこんなに多くの人混みの中を歩くのは初めてで、その…あのですね……」
シルフィアは話してる途中で黙り込み俯いてしまった。
その時はピンと立っていた耳は垂れ下がり尻尾は元より更に垂れ下がっていた。
「もしかして人混みの中が落ち着かないのか?」
<コクリ>
礼治はシルフィアの途切れてしまった言葉をなんとなく繋げてみたら当たっていたらしくシルフィアは頷いて肯定してきた。
「じゃあどっかでちょっと休憩しようかな」
シルフィアの今の状態を考えて礼治は何処か静かな場所で一休みすることを提案した。
「申し訳ございません御主人様!奴隷の私なんかのために配慮していただいて…本当に申し訳ございません‼︎」
そう提案するとシルフィアは今まで抱きついていた礼治の腕から両手を離し、涙を少し流しながら謝ってきた。
そんなシルフィアを見た礼治は今空いたばかりの自身の右手でシルフィアの頭を優しく撫でる。
「シルフィアがそんなに謝らなくてもいいよ。俺も疲れたから休憩したいし、それにシルフィアは世間から見たら奴隷だけど、俺やフールにとっては新しい家族なんだからそんなに畏まらなくてもいいんだよ」
「そうですよシルフィアさん。私達はもう家族なんですからそんな他人行儀な喋り方をせずに自分の話しやすい喋り方でもいいんですよ」
礼治がそうシルフィアに伝えると礼治の隣にいたフールも自由な喋り方をしていいことをシルフィアに伝えた。
「ありがとうございます御主人様、フール様。私みたいな奴隷にそんな「はい、ストップ」<コツン>……エ⁇⁇」
優しい二人の言葉にシルフィアは顔を赤くしながら、また自分を蔑む態度で話している途中、礼治から言葉を遮られ頭を軽く扉を叩く要領で叩かれてシルフィアは驚き喋るのを止め顔を上げた。
「最初にも言ったけどシルフィアはもう家族なんだから他人に自己紹介する時以外は今の身分、つまりは奴隷と言うのは禁止な。そうしないと家族と言えないし、それに俺が嫌だからさ。後、俺の呼び方も『御主人様』じゃなくて名前で呼んでくれると嬉しいんだけどな」
シルフィアに最初は少し怒り気味で自分のことを奴隷と言うのは禁止と命令し、その後は優しい感じで主人である礼治を呼ぶ時も名前で呼んでくれるようお願いした。
「…ス…スゥ…。はい、分かりました。喋り方は前からこんな感じなので許して欲しいのですが、ヒク…。これからは私自身奴隷としてではなくレイジ様の家族として振る舞えるよう頑張ります。不束者ですがどうぞよろしくお願いします」
シルフィアは泣きながら礼治の申し出を受け入れてくれた。
「ありがとうシルフィア」
礼治はシルフィアの言葉に多少ツッコミを入れたい箇所がいくつかあったが今は何も言わずにシルフィアの頭を撫でた。
「ハウーー///」
頭を撫でられたシルフィアは声を出し顔を赤くした。
その声に礼治は一瞬嫌だったのかと思ったが、シルフィアは耳をピンと立たせた後ピョコピョコと動かし、尻尾をブンブンと振っていたのでどうやら頭を撫でられたことが嬉しかったのだろうと感じた。
「じゃあどこで休もうかな?」
「それでしたら礼治様。この近くにマリーさんやミレアさんがよく行くというオススメの喫茶店があるらしいのでそこに行ってみませんか?」
何処にするか迷っているとフールが喫茶店に行くことを礼治に提案した。
「じゃあそこでいいな。シルフィアもそこでいいか?」
「はい。大丈夫です」
場所が思い浮かばなかった礼治はフールの提案を即採用し、シルフィアにも尋ねシルフィアもフールの提案に乗ってくれた。
「それじゃあフール。道案内を頼む」
「了解しました礼治様。此方です」
シルフィアからの確認をとった後、フールに道案内のもとフールを先頭に目的地へと向かう。
(レイジ様は本当に優しいお方です。……レイジ様にだったら私……)
「おーいシルフィア。何してんだ?早く行くぞ」
シルフィアは礼治の優しさを実感し、あることを考えていたが唐突に呼びかけられ考えが途切れてしまった。
前を見るとシルフィアは立ち止まっていたためにフールと礼治からいつの間にか距離が離れてしまっていた。
「ま、待ってくださーい‼︎」
シルフィアは慌ててその場から走り出し前に進んでいた二人の元へと向かった。
その時の彼女の顔はとても幸せそうにしていた。
〜〜〜
鐘の音が昼の3時を告げた頃、礼治達はフールの案内のもと北門に向かう大通りの道沿いにある喫茶店まで来たいた。
そこの喫茶店は赤いレンガ造りでレトロな雰囲気を醸し出しており、看板には店の名前は『草原の安らぎ』と書かれていた。
「じゃあ早速入ろっか」
礼治はフールとシルフィアに声をかけてから店内に入り、フールとシルフィアも礼治の後に続いて店内に入った。
店内に入ると見渡す限り緑生い茂る植物が壁や床など至る所に大小様々な鉢植えに入れられ配置されており、店の名前通りに店内には草原が広がっている様だった。
「喫茶店『草原の安らぎ』へようこそいらっしゃいませ。お席にご案内しましょうか」
三人が店内を見渡していると二十代の女性定員が元気良く笑顔で声を掛けてきた。
「すいません。三人で座れる席はありますか?」
「はい御座いますよ。ではお席までご案内しますので此方へどうぞ」
礼治が席が空いているかを聞くと女性店員は笑顔で肯定をしてすぐに席まで案内してくれた。
三人は女性店員の後について行く。
そうやって後をついて行っき、ある席を通り過ぎようとした時。
「レイジ様にフール様⁈」
突然二人の名前を呼ばれ、二人は声のした方へと振り向くとそこにはギルド指定の制服では無く、オシャレと動きやすさを重視した私服を着たマリーが驚いた顔をして席に座っていたのだった。
〜〜〜〜
「それにしてもお二人が私の横を通り過ぎようとした時は驚きましたよ」
礼治たち三人はマリーに呼び止められた後、フールが途中まで案内をしてくれていた女性店員にマリーと同席すること伝えたので三人はマリーと同じ席に座ることになった。
因みに席は店の壁側で、テーブル左側の奥にマリーとその手前にフールが、テーブル右側の奥に礼治とその手前にシルフィアといった感じに座っており、三人が定員に注文をしたあとだった。
「驚いたのはコッチもですよマリーさん。まさかマリーさん達が勧めてくれた喫茶店で今日非番だったマリーさんに会えるとは思ってもいませんでしたからね」
隣同士に座っていたフールとマリーは二人だけでガールズトークを盛り上がっていた。
「あの、レイジ様。こちらの方はいったいどちら様なのでしょうか?」
前の二人が楽しそうに会話をしているところを礼治が嬉しそうに見ていると彼の隣に座っていたシルフィアがそう尋ねてきた。
「ああ、ゴメンなシルフィア。彼女は俺とフールが所属しているこの街の冒険者ギルドで受付嬢を務めている猫の獣人族で名前はマリーさん」
尋ねてきたシルフィアに対して礼治は簡単にマリーを紹介する。
「っあ、すいませんでした。ついついお喋りに盛り上がってしまい自己紹介していませんでしたね。レイジ様からご紹介にあずかりました私は冒険者ギルド『アルバス』支部の受付嬢を務めていますマリーです。よろしくお願いします」
自分の事を紹介していない事に気付いたマリーは直ぐにシルフィアの方に身体を向けて自己紹介をする。
「わ、私は先程レイジ様の家族になりました。奴隷でフェンリルの獣人族のシルフィアと申します。此方こそよろしくお願いします」
シルフィアも慌ててマリーに自己紹介をする。
「レイジ様は本当にお優しいお方ですね。シルフィアさんを奴隷としてではなく家族として接しているなんてとても素晴らしいと思います」
「そうですか?俺は普通に接しているだけですよ」
マリーからそう褒められた礼治であったがあまり実感が無く頭を少し横に傾けた。
「いえいえ、レイジ様が普通だと思ってやっている事は本当に素晴らしい事ばかりなんですよ」
そう言ったマリーは一瞬、礼治の隣にいるシルフィアに目を向け、何かを躊躇していたのだが、意を決したように目を再び礼治の方へと向ける。
「シルフィアさんのいる前で言うのもなんですが、普通奴隷は一般人よりも下の立場であるために奴隷だからといってバレないよう影で隠れて様々な暴行を加えたり、珍しい種族の場合は見せ物にしたりと他にも奴隷を酷く扱う人達が後を絶ちません」
マリーはここで話を止めた。
マリーの話を聞き、自分達と同じく生きている奴隷に対してあまりにもふざけた行為をしている者達に礼治の心の中では怒りがこみ上げる思いだった。しかし、そんな中でシルフィアが突然、礼治の腕にしがみついてきた。
その行動に礼治はすぐにシルフィアの方に顔を向けると、シルフィアの表情はとても怯えている様子であり、マリーの話を聞いて恐怖で身体をガクガクと震わせていた。
(そうか。フェンリルの獣人族は珍しいってボグレスさんが言ってたもんな。俺がもしシルフィアを引き取っていなかったら彼女は見せ物にされていた可能性が高いし、下手したら盾代わりに使われる可能性もあったんだよな)
礼治は怯えているシルフィアの頭に手を乗せた。
「大丈夫だよシルフィア。俺は家族にそんな酷い扱いはしない。これからはできる限り楽しく俺やフール、後はまだ紹介してない家族達と一緒に過ごしていこうな」
シルフィアにそう言い聞かせながら頭を優しく撫で続けた。
「…はい……私…レイジ様達の家族になれて……今が私の歩んできた人生の中で一番幸せです」
恐怖に震えていたシルフィアは頭を撫でられたことで安心して礼治の腕から離れ、今度は今日で何度目かわからない泣き顔を礼治の胸板に押し付け、店の迷惑にならないよう声を押し殺しながら泣き始めた。
〜約一時間後〜
シルフィアはそのあと直ぐに落ち着いた頃、先程の女性店員が注文したものを持ってきてくれたのでそれをフールが受け取り、シルフィアを落ち着かせてから四人で楽しく話しながら飲み終わり、会計を払ってから店を出た。
因みに四人が頼んだのは、礼治がブラックコーヒー、フールは紅茶、シルフィアとマリーはリップアのフルーツジュースであり、その会計は全部礼治が払った。
マリーは「私の分は自分で払います」っと言ってきたのたが礼治がここは奢る代わりにシルフィアの洋服選びの手伝いを提案し、マリーは喜んでそれで承諾した。
そんなわけで四人は今、マリーさんがオススメする服屋にいた。
シルフィアは最初「こんな良い所で私なんかが着れる服はありません‼︎」っと全力で拒んでいたがフールとマリーが礼治には聞こえない声でシルフィアの耳元で何かを呟いた。
するとシルフィアは顔を真っ赤に染めてしまいその隙にフールとマリーがシルフィアを店の中に連れ込み、シルフィアに色々な服を着せていた。
「なあフール。ちょっといいか?」
そんな中で礼治はシルフィアの服選びに夢中になっているフールに声をかけた。
「どうかなさいましたか礼治様?」
「俺は近くの雑貨屋で色々と買いたいものがあるから会計はこれで済ましといてくれ。後フールも気に入った服があったら買っといていいぞ」
そう言いながらフールに銀貨五枚と多めに渡しといた。
「それから後は俺は男だから女性の必要な物は分からない、だからそうゆうのも買っておいてくれ」
「わかりました礼治様」
フールは礼治からお金を受け取ってから返事をした。
「一応、用事が早く済んだらこの店に戻ってくるけど、そっちの買い物が早く済んだら先に宿に戻っておいてくれ」
礼治は最後にそう伝えた後、店を一人で後にした。
その後は直ぐ近くの雑貨屋で色々と必要な物を買った後、フール達のいる服屋には向かわずに人通りのない路地裏へと入っていった。
しばらくして、まあまあ広めの場所に出た。
「おい隠れてないで出てこいよ。正直言って昼間からずっと後をつけられて良い気はしないんだけど」
礼治そう言い放つと先程通ってきた道から十数人の男達が出てきてあっという間に礼治の周りを取り囲んだ。
そしてその中には一昨日の夕方、ギルド内で礼治達に絡んできたがフールによってアッサリと撃退されて戦力を損失し無様な負け方をしたEランクの冒険者パーティー『狼の牙』の三人がいたのだった。




