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第36話 シルフィア

礼治が目をつけた彼女は獣人族だった。

身長は156センチで背中にまで軽く届く綺麗な銀色の長い髪に瞳の色は暗い紺色。それに加えて獣人族である為に頭の上にはピンと立った犬耳があり、腰のあたりから銀色の少し膨らみのある尻尾が垂れ下がっていた。


礼治は過去の自分と同じ目をしている彼女のステータスを【ステータスチェック(自・相)】で改めて確認する。


________________________

シルフィア(15)♀獣人族(ベース:フェンリル)

レベル:7

職業:奴隷(獣戦士)

所有者:ボグレス(仮)

筋力:138(108+30)

体力:110(90+20)

耐性:125(95+30)

敏捷:156(106+50)

魔力:35

魔耐:38

運 :15


ー称号ー

フェンリル(未解放)

戦闘奴隷


ースキルー

鈍器術

筋力強化:3

体力強化:2

耐性強化:3

俊足強化:5

夜目


ー特有スキルー

嗅覚強化

聴覚強化

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


改めて確認してみると知らない称号やスキルがあったので更に詳しく調べてみた。


ー称号ー

フェンリル(未解放)

フェンリルの血を受け継ぐ獣人

(解放条件が揃っていないためにフェンリル本来の力を解放できずにいる)


ースキルー

《鈍器術》

鈍器術を極めた者に贈られるスキル


《夜目》

夜や洞窟内などの暗い場所でもハッキリと目視できるスキル


ー特有スキルー

《嗅覚強化》

通常より嗅覚が優れているため離れた敵の匂いを嗅ぎ分けることができるスキル


《聴覚強化》

通常より聴覚が敏感に反応するため小さい音を捉えることができるスキル



ステータスから確かに前衛向きであるがそれよりも今の礼治にとっては些細なことであり、彼女がどういう経緯で奴隷になったのかが気になり、隣にいるボグレスに顔を向ける。


「以上が私めがオススメします人財に御座います」


どうやら礼治がフェンリルの獣人族である彼女について考えている間にボグレスは彼女の後に並んでいた奴隷達の紹介を今まさに終えたようで、礼治に気になる奴隷がいるかを尋ねてきた。


「左から四番目の彼女について詳しく教えてもらえますか?」


「承りました。彼女の名前はシルフィアといい、大変貴重なフェンリルの獣人でございまして、実は一昨日に此方に到着したばかりでございます」


「彼女がどういった経緯で奴隷になったか分かりますか?」


礼治は一番知りたいことをボグレスに尋ねる。


「誠に申し訳ございませんレイジ様。実は今申し上げましたように彼女は一昨日ここに到着したばかりでございまして、尚且つ昨日の緊急避難といい余り時間が無く、また彼女は私達と余り喋ろうとしてくれず私達も彼女につきましては余り把握できていないのです」


どうやら昨日の一件でボグレスも彼女のことについて詳しく把握していないようだ。


「ただ一つ分かることと申しますと彼女の同族が彼女を支店に売りに来まして、その時対応した者が言うには彼女は意識を失っているままの状態で契約が行われたと」


ボグレスは彼女についての情報が不足していることに頭を下げ謝罪した後で彼女の売られた時の状況を説明した。


「え?本人が意識を持っていなかったのに奴隷として売られていたんですか」


「はい。誠にお恥ずかしい限りで、フェンリルの獣人は大変貴重で支店の取締役が彼女の意思を聴かずに買い取ってしまったのです」


礼治から見てボグレスは凄い罪悪感を抱いており、このことに関してとても後悔をしていることが容易にわかってしまった。


礼治はもう一度彼女の方を見る。しかし、何度も見ても彼女は過去の礼治と同じ暗く、何もかも信じられないという目をしていた。


「ボグレスさん。彼女と一度お話ししてもよろしいでしょうか?」


彼女の目を見た時から彼女を買うことを決めていた礼治は最初に彼女から詳しく事情を聴くためにボグレスに彼女と話ができるように頼む。


「はい。直ちに準備させますので少々お時間を頂きます」


礼治の申し出にボグレスは言い終わると直ぐに他の従業員に指示を出し準備に取り掛かる。

いつの間にか残りの奴隷達は他の従業により各々の待機場所へと戻され、ボグレス達は準備で部屋を出て行ってしまい、今その部屋にいるのは礼治とフールの二人だけだった。


「礼治様。あの娘を護衛役に就けるのですね?」


そんな中、先程から礼治の隣でずっと黙っていたフールが声をかけてきた。


「ああ、ごめんなフール。勝手に俺だけで決めたりして」


「いえ、これは礼治様がお決めになることですので私は構いません。ただ、お一つ確認したいことがあります」


「確認したいこと?」


フールの言葉を礼治はそのまま返した。


「礼治様はあの娘から何を感じたんですか?」


フールは礼治の思惑を的確に射抜いた質問をしてきたのだ。


「ハハハ。やっぱりフールには気付かれたか」


「礼治様があの娘を見た途端表情を変えられましたからね。ずっと礼治様のお側にいた私なら簡単にわかります」


フールは当然とばかりに答える。


「フールには敵わないな」


心の底から礼治はそう思い、フールに自分が彼女を見てどう感じたかを話し始めた。


「多分だけど彼女は俺と同じなんだと思う」


「礼治様とですか?」


フールは真剣な顔で礼治に聞き返す。


「ああ、俺とね。だから俺は彼女の心の闇を取り除きたいんだ。俺が異世界に来て初めての夜。フールが俺の心の闇を取り除いてくれた時のように」


礼治が異世界に来て最初の日の夜の出来事を思い出していた。


「礼治様…」


<ギュ>


フールもその日のことを思い出し、その後でフールは自分の右手で礼治の左手を優しく握る。

それに対して礼治もフールの右手を自身の左手で優しく握り返す。

そうして二人が見つめ合っていると。


<ガチャ>


「「<ビクン>‼︎」」


突然部屋の扉が開き、外からボグレスが入ってきたので二人は驚き、急いで距離を取るために離れる。


「レイジ様、準備が整いました。…どうかなさいましたか?」


部屋の中へ入ってきたボグレスは用件を伝えた後、二人の微妙な距離間に疑問符をつけた。


「いえ、別に大したことはありません!なぁフール!」


「はいそうです!別に大したことは何もありません!」


二人はお互いに顔を赤くさせながら何もなかったと主張すり。


「…そうですか。それではご案内しますのでこちらへお越しくださいませ」


しかし、他人から見れば何かあったことは一目瞭然であり、ボグレスは何かを察するも敢えて何も聴かずに二人を隣の部屋に案内をする。


二人はそのままボグレスの後について行き、隣の部屋に行きボグレスがその部屋の扉を開けた。

部屋の中には椅子が三脚置かれており、そのうちの一脚に獣人の彼女が座っていた。

二人はボグレスの案内のまま彼女の前に置かれている椅子まで進む。


「レイジ様、フール様。これからお二人にはシルフィアとお話しをして頂きます。ただ、この部屋の中で貴重な人財に手を出そうとされますと警報がなる仕掛けになっておりますのでご注意くださいませ。また、話が終わりましたら私共は外で待機していますので声をお掛けください。尚、部屋には防音対策を施していますので音漏れはありませんので。では、私は一度失礼させて頂きます」


ボグレスは注意事項を説明した後で部屋を後にした。


部屋に残った礼治とフールは椅子に座り獣人の彼女、シルフィアに顔を向ける。

シルフィアさんはここまで一言も喋っておらず、ずっと黙っていた。

礼治はこのままだと拉致があかないので初めに挨拶をすることにした。


「初めまして。俺はEランクで初級冒険者の礼治と言います。どうぞよろしくお願いします」


「私も礼治様と同じくEランクの初級冒険者のフールと申します。どうぞよろしくお願いいたします」


フールも後に続き挨拶をすり。


〔……奴隷…なんで……〕


すると彼女は小さい声でありながらも何かを喋った。しかし、彼女の声に二人は少しだけ聞き取れたが他の部分は聞き取れなかった。


「俺はシルフィアさん。貴方とちゃんと話がしたいんです。できればもう少し声量を上げてもらっても良いですか」


声の高さを上げるように礼治がシルフィアに頼んだ。

すると突然彼女は顔を上げ、二人と目を合わせた。


「何で奴隷の私にそんな敬語を使うんですか⁉︎私は一族からゴミの様に捨てられたんですよ⁉︎そんな私に如何して⁉︎何で⁉︎」


シルフィアは突然その場で自分が座っていた椅子を撥ねとばす勢いで立ち上がり、大声で叫びながら投げかけてきた。

礼治とフールは先程まで何も喋らずにいたシルフィアの突然の行動に一瞬黙り込んでしまった。しかし、直ぐに礼治はシルフィアを落ち着かせる様に椅子から立ち上がる。


「落ち着いてくださいシルフィアさん。一旦椅子に座って落ち着きましょう」


「そうですよシルフィアさん。一旦落ち着きましょう」


フールも立ち上がり礼治に加勢するよう興奮するシルフィアを宥める。


「だから何で私なんかに!ゴミの価値しかない私にそんな敬語を使うんですか⁉︎如何して⁉︎如何してなんですか⁉︎」


しかし、シルフィアはまったく落ち着かず、二人はどうにかシルフィアを落ち着かせようとするのであった。

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