第34話 報酬と提案
礼治とフールの二人はギルドにある食堂で早めの昼食をでとった後、そのままこの街の冒険者ギルドの長であるエネドラのいる部屋へと向かった。
勿論ギルド職員の許可を得てからである。
階段で五階まで登り昨日訪れたギルマスの部屋の扉前に来た礼治は扉を二回ノックする。
「誰だ?」
ノックの後すぐに中からギルマスの声がした。
「礼治です。フールと一緒に来ました」
「ああ、レイジとフールか。鍵は開いてるから入っていいぞ」
「失礼します」
ギルマスの許可を得てから扉を開き、二人は部屋の中へと入る。
礼治とフールが部屋に入るとエネドラは難しい顔をしながら机の上にある大量の資料と睨めっこをしていた。
「あのーギルドマスター?」
礼治は資料と睨めっこしているエネドラに話しかける。
「ああ済まない。そこに座っててくれ」
エネドラは資料から目を離してから立っている二人に昨日と同じくソファーに座るように勧める。
「「失礼します」」
エネドラに勧められたので二人は一度頭を下げてからソファーへと腰を下ろす。
エネドラも椅子から離れ幾つかの資料を持って二人の向かい側にあるソファーに腰を下ろした。
「まずは昨日はお疲れさん。おかげで助かった。特にレイジには頭の討伐及び、使い魔達による支援には本当に助かった」
エネドラは昨日のゴブリン軍団討伐戦の参加したことについて礼を述べる。
「いえ、俺はタダこの街を守りたかっただけであって別にお礼はいいですよ」
(やっぱりレイジは彼奴に似てるな)
礼治はエネドラの御礼に対してさも当たり前のように答え、その答えにエネドラは礼治がある人物と似ていることに少し笑みを浮かべていた。
「あのーギルドマスター。大丈夫ですか?」
もちろん礼治はエネドラが何を思っているか分からず、黙ってしまったエネドラに先程と同じように声をかける。
「ああ、スマンスマン。今日二人を呼んだのは他でもない。色々と昨日のことで聞きたい事や話したい事があってな」
エネドラは礼治からの声かけに考えるのを止め、今回の本題へと移った。
「聞きたい事ですか?」
今回はフールも話に加わり、礼治の代わりにエネドラにそう尋ねた。
「ああそうだ。昨日のゴブリン軍団の数はあまりにも異常であり、初心の森には確かにゴブリンは存在している。しかし、ゴブリンの繁殖力が強いために私達ギルドは常にゴブリン討伐の依頼を出し、ゴブリンの繁殖を防いでいる」
エネドラはここで話を一旦切り、手に持っていた資料を二人に渡した。
その資料にはここ一ヶ月の間に初心の森でゴブリン討伐の依頼を受けた冒険者達の名前とその時に倒したゴブリンの数が事細かに記載されており、一ヶ月の間に討伐されたゴブリンの数は五百体を軽く超えていた。
「この様に毎月ゴブリンは多くの冒険者達の手により討伐されており、幾ら繁殖力が強いからと言って数が五百体を軽く上回り、しかも中位種や上位種などましてや特異種が初心の森から現れるなど普通ではありえない」
エネドラは更に話を続ける。
「しかもだ。前衛部隊と後衛部隊の間に突如として現れた別のゴブリンの軍団。幸いにも君と警備兵団長の対応が良かったために被害は最低限に抑えることができたが、最悪の場合は後衛部隊が全滅し前衛も敵に挟まれてかなりヤバイ状況まで追い込まれていただろうな」
「つまりギルドマスターは今回の騒動は裏で何者かが糸を引いていると言いたいんですか?」
礼治はエネドラが何を言いたいのかを確認した。
「その通りだ。それで何か気づいた事は無かったか?どんな些細な事でも構わん」
「急に言われましても、私は後方支援でしたので敵が雑魚ですが数が多いなと思った以外は特にありませんね。礼治様はどうでしたか?」
エネドラの質問にフールは気づいた事は無かったのだろう。フールは礼治に聞いてきた。
「俺が気づいたのはゴブリンキングを討伐した後で、他の雑魚を倒している時に森の中で誰かが此方を観察していたことぐらいですかね」
「ああ、それならカルナから話は聞いている」
礼治が敵のいた場所をたまたま礼治の近くにいたカルナが調べており、その情報も昨日のうちにカルナがエネドラに報告していた。
「捕まえれなかったのは残念だったな」
「すみませんでした!」
エネドラの呟きに礼治は謝罪した。
自分が敵を捕らえれていたら今頃はその敵から色々な情報を聞き出せていただろう。そんな自分の不甲斐なさに礼治は罪悪感を抱いていた。
「馬鹿者!誰がお前が悪いと言った‼︎」
その謝罪にエネドラは礼治に怒鳴った。
「今のは私の言い方が悪かったが。しかし、お前がいたからこそ今回の襲撃は誰一人として死人を出さずに済んだんだ。そのことに自信を持て」
エネドラは自分の言葉を詫びを入れる。しかし、エネドラの言った通り今回の討伐戦で一番活躍したのは大アルカナ達の主人であり、ゴブリンキングにトドメを刺した礼治である。
エネドラはそのことに対し、礼治の功績を認めていた。
「この話はここで終わりにして次の話をするぞ。…<カキカキ>…ほら、受け取りな」
エネドラは情報提供に感謝をした後、話を変えると言いながら二枚の書類を取り出しそのうち一枚に何か付け加えをしてから俺にその書類をフールには付け加えなしの書類を渡してきた。
フールと礼治はエネドラから書類を受け取り、その書類を確認する。
その書類にはこう書かれていた。
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・緊急依頼達成報酬
フール(F)
緊急依頼を受け後方支援として参加。
・報酬として今回の討伐戦参加報酬の銀貨八枚を配付。
・討伐戦の実力を認めEランクに昇格と来月開始される昇級試験に参加を認める。
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フールの書類にはこう書かれており、礼治の書類には更に続けて。
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・緊急依頼達成報酬
レイジ(F)
〜上と同じく〜
(付け加え↓)
・多大な戦力提供に加え、ゴブリンキング討伐に携わった為にこの功績を認め金貨五枚を提供。
・ギルド内の一部の場所を自由に使う許可を与える。
*場所についてはギルド職員と後に話を通してから詳細を決めること。
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二人は礼治の書類に書かれている内容に唖然とし、エネドラの方を向く。
「フハハハハハハハ。昨日から思ってたけど、あんたら二人の驚く顔を見るとなんか笑えるわ」
それに対してエネドラは二人の驚いた顔を見て唐突に笑い出し始めた。
「スマンスマン。色々と聞きたいことがあるだろうがそれは今から説明をする」
エネドラは暫く笑い続けた後軽く謝り、書類に書かれている内容について説明を始める。
「まずは討伐戦に参加したことで報酬として銀貨八枚は今回参加した冒険者全てに支払われる報酬であり。ランクの昇格については私の判断からで本当は試験をせずにそのままDランクに昇級させたいんだが、色々と決まりがあってなこういった形になった。ここまでは大丈夫か?」
エネドラはここで話をまた一旦切り二人に確認をし、二人はこれに頷いて返事をした。
「それで次にレイジの報酬についてだが、何度も言っているがレイジの使い魔…いや、家族だったな。レイジの家族達には凄く助かった。それに加えてゴブリンキング討伐の要の一つを担ってくれたからね。それで金貨八枚が妥当と判断した」
「ありがとうございます」
礼治は追加報酬の内容に頭を下げて素直に受け入れる。
「また、レイジは占いをする場所が欲しかったんだろう?だったらギルドなら色々と人が集まるから最適だろうと判断して報酬に加えた」
エネドラはゴブリンが森から出てくる直前にしていた礼治との会話を覚えており、報酬として礼治に占いをする場所を与えてくれたのである。
「「本当にありがとうございます」」
エネドラの配慮に礼治は感謝し、隣にいたフールも礼治の夢に一歩近づけた事に嬉しく思い、二人はエネドラに心から感謝を述べる。
「まあ、後はそこに書かれている場所については受付カウンターにその書類を渡してから決めてくれ。後、昇級試験についてはまた後日に詳しい内容が決まった時に話す。そして最後に私から二人に提案がある」
「提案ですか?」
話はこれで終わりと思い込んでいた礼治はエネドラのその言葉に疑問符を浮かべる。
「ああそうだ。まあ、そうは言ってもこれはレイジが決めることだがな」
エネドラはそう言って礼治の方に身体ごと向けた。
「レイジ。あんたは奴隷を買うつもりはないか?」




