第33話 冒険者について
しばらくは週二、三のペースで投稿します。
ゴブリン軍団討伐戦から一夜明けた朝の6時、礼治はいつも通り鐘の音で目を覚まし寝返りを打つと隣では昨日と同じくフールが先に起きており、目覚めのキスをしてきた。しかし、今日のは昨日とは違いフールは礼治の頭を両手でガッチリとホールドした後で舌を入れてくるエロく激しいディープキスをしてきた。
「プハァア。おはようございます礼治様♡」
それから数十秒程経ち、ようやく満足したフールは礼治の頭を抑えていた両手と唇を離し、英気を十分に養った顔で朝の挨拶をする。
「おはようフール。なんか、朝から激し過ぎるキスだったな」
「私は礼治様のことが世界で一番大好きであるからこそですよ。まあ、欲を言えばあと一時間位はキスをしていたかったのですが」
礼治はフールに挨拶を返したあとでキスについての感想を述べ、それに対してフールは当たり前のようにそう答えた。
(フールはいつも通りだな。いや、日に日に激しくなってるような気がするのは気のせいか?)
礼治はフールの日々の変化(性欲増加傾向)に薄々気づき始めていた。
二人はベットから起き上がりいつも通りに身体とシーツを【クリーン】で綺麗にしてから服を着替えて部屋を出た。
一階に降りると受付の所には珍しく受付担当のラルファの姿がなく、二人は疑問に思うも食堂へと入るとラルファとミネットの姿がそこにあり、また見覚えのない男性と立ち話をしていた。
「あっ。おはようございます。レイジさん、フールさん」
食堂に入ってきた二人に気がついたラルファが笑顔で挨拶をする。
「おはようございます。ラルファさん、ミネットさん」
「おはようございます。あの、すみませんがそちらの男性はどちら様ですか?」
ラルファとミネットに挨拶をした後にフールが見知らぬ男性のことを尋ねる。
「二人ともおはようさん。そういえば二人にはまだ紹介していなかったねえ。この人は私の夫でこの宿屋の主人のカラードだよ」
「あと私のお父さんです」
ミネットが挨拶を返したあとで礼治達の目の前にいる男性が『夕暮れの日差し亭』の店主であり、ミネットの夫であり、ラルファの父親だと紹介してくれた。
「俺がこの宿屋の主人であるカラードだ。よろしくな。それにしてもあんたら二人が昨日の討伐戦に参加した勇敢な新米冒険者さんか」
カラードさんは名前を名乗った後で俺達を見比べていた。
「初めましてカラードさん。俺は礼治といいます。よろしくお願いします」
「私はフールと申します。礼治様共々よろしくお願いします」
二人もカラードに礼儀よく挨拶を返す。
「ほう。二人が言ってたように冒険者なのにやけに礼儀正しいな」
二人の挨拶に感心したカラードは二、三回ほど頷く。
「礼儀正しく実力のある冒険者なら何泊でも大歓迎だ」
どうやら昨日のゴブリン軍団討伐戦に参加していたことで実力があると判断され、礼儀正しいことからカラードは二人に対して好印象を持ったらしい。
「ほらあんた。自己紹介が済んだならさっさと仕事に行きな。今日は週に一度の新鮮市だろう。さっさと急ぎな」
そんなカラードを妻であるミネットが急かす様に背中を叩く。
「いっけねえ!忘れるとこだった。そんじゃあお二人さん。無理がない程度に仕事頑張れよ」
カラードはそのまま急いで食堂から出ていった。
礼治はフール達と慌てて出て行ってしまったカラードを見送った後、ミネットの方を向く。
「あの、すみませんミネットさん。『新鮮市』って何ですか?」
「ああ、そういえば二人はまだこの街に来たばかりだったね。『新鮮市』っていうのは週に一度、この街の中央広場で開かれるものでね。新鮮な食材は勿論のこと、普段なら手に入らない珍しい食材が売られているんだよ」
ミネット曰く、その週に一度開かれる『新鮮市』とは様々な地域から取り寄せられた食材を販売する大きな市場らしく、食材意外にも様々な物品が売られており、探してみれば何かしら掘り出し物が手に入ることもあるとかないとか。
因みにこの世界は月は1月から12月と表し、日は1日から30日。曜日は順番に『風、火、水、土、無、闇、光』で回るとのこと。
そして今日は4月18日水曜日となる。つまり礼治が異世界に訪れた日は5日前の4月13日無曜日となる。
話も終わり、二人はいつも通りミネットが作る朝ご飯を食べ終わった後、食堂でコーヒーを飲みながらゆっくりした後でギルドに向かうためにミネットに礼を言い。またラルファに鍵を返してから宿屋を後にした。
宿屋を出てギルドへと向かう途中で中央広場を通った時はミネットが言っていたように『新鮮市』が開かれており、朝から沢山の人々で賑わっていた。
今度時間を作って見て回ろうと思った二人は人混みの中を抜け、いつもより時間が掛かったが目的地のギルドに辿り着いた。
現在は朝の9時過ぎである。
二人はギルドの扉を開けて中へと入った。
「おっ。坊主に嬢ちゃんじゃねえか。昨日はお疲れさん」
「よっ坊主。昨日は天使の嬢ちゃんには本当に助かったぜ。代わりに礼を言っといてくれねえか」
「フールおはよう。相変わらず彼氏さんとラブラブね〜。うぅ〜私も彼氏が欲しいな〜」
すると二人に気づいた昨日の討伐戦に参加していた冒険者達が色々と声をかけてきた。
すっかり有名人になってしまった礼治は一人一人に挨拶をしながら顔を真っ赤に染めているフールを連れて受付カウンターへと向かった。
受付カウンターは昨日のゴブリン軍団討伐戦で疲れた身体を癒す為に休んでいる冒険者が多いらしく、受付カウンターの前はいつもよりも空いていた。
ただ、受付にはマリーの姿はなく。無意識の内にマリーがいないかを探していた礼治はマリーがいないことが分かると近くの空いていた受付カウンターへと向かう。
「おはようございます。レイジ様、フール様。レイジ様は初めましてですので自己紹介をさせていただきます。私はマリーと同期でミレアと申します。どうぞよろしくお願いします」
二人が受付カウンターに着くと、マリーと同期であり。また、フールと面識があった受付嬢のミレアが対応した。
ミレアはヒューマン族で身長は160後半のフールやマリーより少し身長が高めで、年はマリーと同じではあるものの、顔は年の割には大人っぽく瞳は赤く、髪は赤に近いオレンジ色の長髪を後ろで束ね黒縁眼鏡をかけた会社で秘書を務めていそうな感じであり、スタイルは良いのだが胸は余り大きくはなかった。本人はそれが悩みらしい。
「おはようございますミレアさん。昨日はお喋りできて楽しかったです。後、マリーさんは今日はお休みですか?」
フールはミレアに挨拶をした後で昨日の宴の感想と今日はまだ姿を見ていないマリーのことを尋ねる。
「私も昨日はフール様と同じでとても楽しかったですよ。後、マリーはお休みですね。明日にはまた出勤しますよ」
ミレアも楽しそうにフールに昨日の感想を伝え、マリーが今日はお休みであることを教えてくれた。
「ところで今日はどうなされたんですか?見たところ依頼書はお持ちではありませんが?」
ミレアは一通りフールと楽しくお喋りをした後で依頼書を持っていない二人にそう尋ねた。
「実は今日の昼頃にギルドマスターに呼ばれているんですが、その前にFランクになった冒険者が受ける説明を受けようと思って来ました」
「そういえば昨日のアレで説明を受ける時間でありませんでしたね。それでは私から説明させてもらってもよろしいでしょうか」
礼治はミレアに今日の目的を話し。また、ミレアは二人の目的を知ると自分が説明させてもらっていいかと尋ねてきた。
「「お願いします」」
礼治とフールはもちろんそれを承諾する。
「それでは説明をさせていただきます」
ミレアはそれから一時間程かけて説明をした。
内容を簡単にまとめると次のようになる。
・ランク昇格
今のランクから上のランクに昇格するには今のランクと同じか一つ上のランクの依頼を計十回達成すれば次のランクに上がれる。
礼治達の場合はFランクかその一つ上のEランクの依頼を計十回達成すればFからEに昇格できる。
また、Eランクからは昇級するには依頼計十回達成のノルマに加えて何かしらの昇級試験が行われるらしく、そこで力や行動力などをギルド側が判断を下し、ランクが上げられる。
・依頼について
基本依頼は自分のランクの一つ上から下のランク全ての依頼を受けることができる。
例をあげればFランクの場合はE,F,Gの依頼を受けることができ、ランクが一つ上がってEランクになった場合はD,E,F,Gの依頼を受けることができる。
依頼は達成すれば報酬を得ることができるが逆に依頼中に大怪我を負ったり、依頼書に記載されている期日までに達成しないと依頼失敗となり罰則として依頼の報酬金額の二割分をギルドに支払わなければいけなくなる。もし仮に借金を二週間以内に払い終わらなければ違反者として奴隷として堕とされるらしく、この制度は冒険者が自分の実力にあった依頼を受けてもらうためであるのだが、自分の実力を過信して依頼を失敗してさらに借金を返せずに奴隷に堕ちる冒険者が後を絶たないそうだ。
・依頼を受ける頻度について、
駆け出し冒険者(F):一ヶ月に一度
下級冒険者(E) :三ヶ月に一度
中級冒険者(D) :半年に一度
上級冒険者(C) :一年に一度
達人冒険者(B) :五年に一度
仙人冒険者(A) :十年に一度
人外冒険者(S) :期限なし
とランクが上がるごとに期間が長くなり、これを破った場合は重傷や意識不明などの依頼を受けれない理由がなければランクの降格、あるいはギルドカードを没収されてしまい、冒険者をまた始める為にはGランクから直すか、そのまま冒険者を辞めるかになる。しかし、前からギルドに期限延長申請の書類を提出すれば幾らかの期限を延ばすことが可能。
また、Dランク以上になると緊急依頼や使命依頼が出される場合があり、ギルドの名声や評判を下げない為にほぼ強制的に参加をしなければならない。
「以上が冒険者の決まりごとになります。何かご不明な点は御座いましたでしょうか?」
ミレアは説明を終えて二人に質問があるかを確認してきた。
「ミレアさんの説明は分かりやすかったので大丈夫です。説明ありがとうございました」
「ありがとうございますミレアさん」
二人は丁寧に説明してくれたミレアにお礼を言った。
「質問がなければこれで説明は終わらせていただきます。これからお二人には冒険者として頑張って頂きますが、くれぐれも無理がないよう自身の実力をきちんと理解してから依頼をお受けください」
「最後まで丁寧にありがとうございました。俺達はここで食事をしてからギルドマスターに会いに行くので失礼します」
「ありがとうございましたミレアさん。またいつかマリーさんと一緒にお喋りしたいですね」
「はい。私もフール様ともっとお喋りしたいので時間が空いた時にまたみんなでお喋りをしましょうね」
そうお互いに話した後、二人はミレアにもう一度お礼を言ってからカウンターを離れギルドの中にある食堂へと向かった。
二人を見送ったミレアは。
(なるほどね。あの人が恋をしたことのないマリーの心を鷲掴みにした人か。こりゃー私やフール様が応援だけじゃなくてサポートしてあげないとマリーにはハードルが高いかな)
心の中でそう呟いていた。




