第32話 それぞれのその後
〜side:エネドラ〜
夜の八時を過ぎた頃、ギルドの一階ではまだまだ冒険者達が騒いでいる中でギルドの五階の一室ではエネドラがソファーに座っており、手元にある今回のゴブリン軍団についての報告書に目を通していた。
「今回のゴブリン軍団の繁殖場所や潜伏場所はやはり特定できなかったのか?」
「ああ、俺の率いる警備兵達とあんたのところの冒険者達とでその痕跡が残っている場所を探してみたものの、何一つとして手掛かりを見つけることができなかった」
エネドラの座るソファーからテーブルを挟み向かい側のソファーには調査報告書を持ってきた警備兵団長を務めるジグトが座っており、今は報告を終えたところだった。
「そうか」
エネドラはジグトの報告を受けて頭を悩ませていた。
(今回の騒動には何者かが裏で関与していた。しかし、それが一体何者かがさっぱり分からん)
『グリフォンの翼』の一人であるカルナが礼治から敵が潜んでいた場所を聞き、そこを捜索していたのだが、誰かがそこにいたのはわかったものの犯人に繋がる証拠までは見つけれていなかった。
「あのカルナですら証拠を見つけれなかったんだ。敵は相当な強者だぞ」
レンジャーとは野外生活に長けた狩りの達人であり、優れた追跡者がなる職業。そのなかでもカルナは他のレンジャーに比べて実力はかなりのものである。
そんなカルナから痕跡が見つからなかったっという報告を受けたのだ。これはそれ以上の証拠を探し出すのは不可能と言っていることと同じである。
「これからは警戒を強くしていく必要があるな」
八方塞がりの状況にこちら側から取る手段はこれしかない。
それから二人は話し合い、しばらくの間はに街周辺の見回りをギルドの冒険者と警備兵で協力して執り行うことが決まった。
「そういえばあんたんとこに新しく入ってきた新人二人はどうよ?」
今できる対策を出し終えたジグトは気分転換のためにか別の話題をエネドラにふってきた。
「新人二人とはレイジとフールのことか?」
ソファーで体を伸ばしていたエネドラもジグトが誰のことを言っているのかをすぐにわかり礼治とフールの名前をだした。
「そうだ。二人は昨日冒険者になったばっかりなのにゴブリン軍団討伐戦に参加。しかもレイジに至ってはあんたとAランク冒険者『金色の猛者』であるロイドと一緒にゴブリンキング討伐に出て、最後はレイジがトドメを刺したんだろう?」
『金色の猛者』とはロイドの二つ名である。
最初に誰がそう呼び始めたかは不明ではあるが、Cランクあたりの実力を持つ冒険者には自然とそういった二つ名が付く。
もちろんロイドのパーティーメンバーである三人にもそれぞれ二つ名があるがその話はまたの次回に。
「彼奴は本当にすごい奴だよ。四大元素魔法の全ての属性を扱うし、人並み外れた行動力を持つし、タダでさえ強いのに彼奴は凄まじい力を持つ使い魔を何体も使役しているしで本当に化け物だよ彼奴は」
ジグトの意見に対しエネドラも礼治のことを高く評価する。
「あんたがそこまで言うんだ。彼奴はきっとスゲー冒険者になるだろうな」
「『なるだろう』ではない、『なる』んだよ彼奴は。長くても数年後には必ずAランク冒険者になるぞ」
「おいおい、マジで言ってんのかあんたは?たった数年でAランク冒険者になるのは早すぎやしないか?」
エネドラの言葉に驚き、聞き返してくるジグトである。
「そんなんはまだまだ通過点に過ぎない。彼奴は最終的にはSランク冒険者になる」
「おいおいおいおい!あんたは本気か?Sランクなんて世界中でごまんといる冒険者のなかで今はたったの四人しかいないんだぞ‼︎それにあんたはどうしてそんなに確信が持てる⁉︎」
ジグトはエネドラから次々に出てくる言葉に驚いてばかりであり、その反応を見ていたエネドラは面白いと思っていたことはこの際置いておく。しかし、礼治の件についてエネドラ自身は本気でそう確信していた。
「それは秘密だ。その方が面白いだろ?」
理由を尋ねてくるジグトにエネドラは何も答えなかった。
「はー、わかったよ。じゃあ気が向いたら教えてくれ。俺はそろそろ戻るからな」
それからしばらく粘ったものの、ジグトはこうなるとエネドラから答えは聞き出せないと悟り、諦めて帰ることにした。
「じゃあお疲れさん」
ソファーから立ち上がり部屋の扉を開けたジグトに対してエネドラは右手を振りながら見送った。
ジグトが部屋から出ていったあと、エネドラはソファーにそのまま横になった。
「アイツは絶対大物になるぞ……」
エネドラ以外に誰もいなくなった部屋の天井を見上げ、最後の部分が自分でも聞こえなくなるほどの小さな声でエネドラはそう呟くのであった。
〜side:黒マントの二人組〜
礼治達がゴブリンキングを討伐した後で残りのザコの殲滅作業に取り組んでいる時までに時間を戻す。
場所が変わり、此処はある大陸に大きな城にある一室の部屋。
その部屋は暗く中央には魔法陣が描かれていた。
その魔法陣が突如光だし、黒マントに身を包んだ二人組が現れた。
その二人組は先程、礼治達の戦いを森の中で観戦していた者達であった。
二人組は部屋に着いたと同時に深く被っていたフードを脱ぐ。
フードから現れた顔は、男性のほうは見た目は二十代中頃で身長が170ぐらいで、褐色の肌に白く長い髪、顔はシャープに整って吊り目で黒に近い灰色の瞳を持ち耳が長かった。
一方女性のほうは、見た目は二十代後半で身長が此方は180は軽く越しており、凛々しい顔立ちにギラギラと光りそうな黄色の瞳を持ち、黒みがかかった銀髪で前髪はデコをギリギリ覆い隠せるくらいでもみあげは長く伸ばしており、後髪はお団子状にまとめられ二本の尖った黒い角が生え、白い肌の所々には赤みのかかった黒い鱗で覆われていた。
男はダークエルフ、女は竜人と言う種族であり、この世界では魔族と言われる存在。
魔族は遥か昔に起きた大戦争の引き金となった種族であり、今は他のどの種族も公式的な立場では交流していない。
「ありがとうございますハーマンさん。それにしても何で私達が森の中に隠れて見ていたことがバレたのでしょうか?」
ラケルと呼ばれていた竜人の女性はダークエルフのハーマンに礼を言った後、二人の場所を特定してきた礼治について尋ねた。
「礼には及ばねえよラケル。後、俺らの場所がバレたのは間違いなくあいつが【気配察知】のスキル持ちだからたろう」
ハーマンは間違いないと確信しているニュアンスで答える。
「やはりそうなりますよね。しかし、私達とあのヒューマンとの距離はかなりありましたよ。それを判断することができるとなると相当な化け物ですよ」
「俺らが化け物だと思うくらいだ。後でそいつを調べる時は細心の注意を払わないとな」
二人の間ではすでに化け物扱いをされている礼治であった。
「それよりも早く、今回の事を報告しないとな」
「そうですね。今回の目的が敵の実力を測るためだったわけですが、殆ど把握する事が出来ませんでしたからね」
今回の魔族二人の目的はアルバスの侵略ではなく、アルバスの現戦力の調査であった。しかし、礼治と言う名の化け物によって細かい調査ができずに終わってしまったのだ。
「だが、俺は諦めねえぞ」
ハーマンはそう言いながら心の中である決意を固めていた。
「ええ、私も彼の方のためにこの身を捧げ、必ずや彼の方の野望を達成させます」
ラケルもハーマンと同じく心の中である決意を固めていた。
「「我等の心から信仰する魔王様の野望、世界を我ら魔族が支配する未来の為に」」
二人はそう宣言した後、部屋を後にした。
これは後に起こる大戦争に向けての始めの第一歩であった。
〜side:礼治〜
礼治とフールの二人はギルドを後にし、夕暮れの日差し亭へと帰ってきた。
「おかえり二人とも。無事な様で安心したよ」
「おかえりなさい」
宿屋に帰るとラルファとミネットが二人を出迎えてくれた。
「ただいま帰りました。お二人には大変心配をおかけしてしまい、本当にすみませんでした」
「すみませんでした」
礼治とフールは出迎えてくれた二人に心配をかけたことを謝罪する。
「いいんだよ二人とも。あんたらが無事に帰ってこれたんだからね」
「お母さん言う通りです。だから頭をあげて下さい」
二人の謝罪に対してラルファとミネットは優しく声をかけた。二人は元から怒ってはおらず、二人が謝る必要はなかったのだ。
そのあと四人は少しの間話をしてから、礼治とフールはラルファから部屋の鍵とお湯の入った桶をもらい、二人におやすみなさいと挨拶してから自分達の泊まっている部屋へと戻った。
部屋についた二人は体を綺麗にしてから寝巻きに着替え、礼治は流石に疲れたために早くもベットへと横になろうとした。
「礼治様〜。私は今日も頑張ったのでご褒美をくださいませ」
「え?今日のご褒美は確かデートの筈だったけど違ったかな?」
フールはそう言いながらベットに横になろうとしていた礼治に迫り寄ってきた。
それに対して礼治は流石に疲れているので今日はこのままグッスリと寝たい気分であり、フールをなんとか落ち着かせようとするが。
「それはそれこれはこれですよ礼治様。諦めてくださいませ」
フールはそう言った後、素早い動きで礼治をベットに押し倒し、早業で着替えたばかりのパジャマを脱がせ、裸になった礼治に抱きつき、二人の夜遅くまで続くのであった。
時間にしてはそんなに日は経っていないが、礼治にとっては様々な出会いがあった。礼治はその出会いを大切にこの世界で大事な家族達とこれからも過ごしていくのであった。




