第31話 勝利の宴 【後編】
・貨幣の価値の修正により『石貨』を追加しました。
『石貨』1ナグル
『鉄貨』10ナグル
『銅貨』100ナグル
『銀貨』1,000ナグル
『金貨』10,000ナグル
『白金貨』100,000ナグル
〜side:ロマノフ〜
「敵が次々と放った魔法が突撃部隊に迫り来たその時!敵の攻撃を儂はこの空中に浮く盾を使い、味方を守っていく!」
宴が開かれているギルドの一角では大アルカナの一人である酒により、良い感じに酔っていたロマノフが椅子の上に立ち、自慢の防御力を誇る『完全盾』を周りにいる冒険者達に見せつけながら今回の戦闘での活躍を自慢していた。
ちなみに『完全盾』は本人の意思で自由に飛ばすことができるマジックアイテムである。
「っよ!流石は期待の新人の使い魔‼︎」
「縁の下の力持ちとは正にあんたのことだ!」
「是非とも旦那と呼ばせてくだせえ‼︎」
また、ロマノフと同様に酒やこの場の雰囲気により酔っ払い、感化された冒険者達も勢い任せにロマノフを褒め称える。
「これはまだまだ始まりにすぎん!この後からが儂の本当の武勇伝の始まりじゃ!」
自身が讃えられている状況にさらに気を良くしたロマノフは更に注目を集めようと椅子の上から今度はテーブルの上に上がる。
「我が主人であるレイジ殿達が敵の頭と激しい接戦を繰り広げる中!弓矢を使う雑魚どもがその戦いを水を差すように矢を放とうとした!そこで登場するのが」
『旦那のご登場だ‼︎』
「いかにも!愚か者どもにレイジ殿達の邪魔をさせんと空中に浮く盾の一つを飛ばす!」
臨場感ある解説と実際に空中に浮かせている盾の一つを飛ばしながら戦闘での自身の活躍を語り始め、観客として見物していた冒険者達は盛り上げに専念する。
「儂の飛ばした盾は矢を放つ前の愚かな魔獣達を次々に跳ね飛ばす!」
ロマノフの飛ばした盾はその場で上に高度を変えたり、または左右に曲がったり、一気に急降下したりと勢いよく飛び回る。
この時ロマノフは酔っているものの、意識がちゃんとあるために間違って人や物に衝突はしていない。
「そんな雑魚どもを跳ね飛ばした儂は更に「ロマノフさん」……」
更にテンションが上がるロマノフは次を語ろうとしたその時、何処からかロマノフを呼ぶ声がした。
その声は周りで馬鹿騒ぎする冒険者達の声より小さかったもののハッキリとロマノフの耳に届いており。その声を聞いた瞬間、ロマノフは凍りついたように動きが止まり、飛ばしていた盾もピタリと止まっていた。
その異変にその周りで騒いでいた冒険者達も騒ぐのをやめ、あたりが静まり返る。
あたりが静まると動きが止まっていたロマノフは恐る恐る自分の背後、声がした方をゆっくりと振り向いた。
「ロマノフさん。テーブルの上に立って何をしているのですか?」
ロマノフが振り向いた先にいたのは大アルカナの一人であるテミスが笑顔を見せているものの禍々しいどす黒いオーラを放っていた。
「テ、テミス殿。こ、これには…」
「取り敢えず行儀が悪いのでテーブルから降りましょう。そして床に正座して下さい」
「は、はい…」
すっかり酔いから覚めたロマノフはテミスの指示に従いテーブルから降り始めたとき、周りにいる冒険者達からは死刑台に上がっていく様に見えたとのこと。
ロマノフはテミスの指示通り、テーブルから降り、床につくとその場で正座をした。
この時には既にテミスのオーラに恐れた冒険者達が離れており、その場には二人しかいなかった。
「さてと。わかっていますよねロマノフさん」
この瞬間、テミスによる説教という名の地獄が始まるのであった。
〜side:礼治〜
「レイジ兄。ボクがオススメしたハンバーグが一番美味しかったよね」
「「違うぜ(よ)。一番美味(し)かったのはフライ(サラダ)だよな(ね)レイジ兄さん」」
「ハンバーグ!」
「フライ!」
「サラダ!」
礼治が三人の後をついて行き、それぞれがオススメする物を食べ終わった後で今度は誰のオススメが一番美味しかったかで争っていた。
「こらこら、また喧嘩をするんじゃない」
さっきと同様に礼治は三人の喧嘩を止める。
「トランが勧めてくれたハンバーグもクロが勧めてくれたフライもシロが勧めてくれたサラダもどれも美味しかったよ。教えてくれてありがとな」
三人にお礼を言いながら順番に頭を撫でる。
「「「へへへへへ」」」
三人は礼治に感謝され、頭を撫でてもらえたことが嬉しく、とても幸せそうな顔をしていた。
「礼治様〜///」
三人の頭を撫でた後、背後から呼びかけられたので振り向くとそこには先程まで女性陣と楽しそうにお喋りをしていたフールが顔を赤くして立っていた。
「礼治様〜///」
<バサ>
「ちょ、ちょっとフール⁉︎」
フールは礼治と目が合うと名前をもう一度呼ぶとそのまま礼治の肩に腕をまわして抱きつき、自分の顔を礼治の胸板に押し付けた。
フールの突然の行動に礼治は驚き、慌ててフールの顔を覗くと少しだけフールからアルコールの匂いがした。
「フール?もしかして酒を飲んで酔ったのか?」
「はい、皆さんとお話ししていたら楽しくなり、ついついお酒を飲んで盛り上がってしまいました。フフフフ///」
「確かに楽しそうにお喋りをしていたもんな。フールが楽しそうだったから俺も嬉しかったよ。でも、足が少しふらついてるからどっかの空いた席に座ろうか?」
質問にフールはちゃんと答えていたのでそこまで酔っていないと判断した礼治ではあるがフールが抱きついて来る間に少しフラついていたのを見逃しておらず、空いている席に座る事を提案する。
「ハーイ礼治様。抱っこ〜〜////」
完全に酔っているフールは提案に了承した後で今度は甘えた声で抱っこを要求してきた。
「仕方ないな」
礼治は少し嬉しそうな表情でフールの要求に応じ、左手をフールの肩にまわし、右手をフールの足にまわしてからお姫様抱っこで抱えてから近くの空いている席まで移動する。
その間にギルマス程ではないが独身の男性陣から殺気のこもった視線が礼治に集中していた。
それから空いている席を見つけ、テーブルに背を向けてレイジは抱き着いたまま離れないフールを膝の上に座わらせた状態で席に座り、後をついてきていた大アルカナの子供三人は礼治の右隣にトラン、左隣にはクロとシロの順番で座る。
「それにしてもフール姉は本当にレイジ兄のことが大好きなんだね。っあ、もちろんボクもレイジ兄のこと大好きだよ」
「「俺(私)もレイジ兄さんのこと大好きだぜ(よ)」」
「ありがとな三人とも。俺も家族みんなのことは大好きだよ」
礼治は三人の言葉に自分の気持ちを込めて伝える。
「「「ありがとうレイジ兄((さん))」」」
帰ってきた返事に三人は先程よりも更に笑顔になる。
<ドサッ>
「「「「‼︎⁉︎」」」」
いつの間にか礼治の腕の中でグッスリと寝てしまったフールを除き四人で楽しく話していたら背後から突然大きな音に驚き、四人は慌てて後ろを向いた。
「っよ、レイジ。私も会話に混ぜてくれ」
そこにはフォースが四人の座っていた席の向かい側にテーブルを挟んで立っていた。
「なんだフォース姉か。あービックリした」
「「なあなあ(ねえねえ)フォース姉さん。その袋の中に何が入ってんだ(るの)?」」
トランは音の原因がフォースだと分かり安心し、フォース側のテーブルの上には大きな音の原因であろう何かが入った布袋が無造作に置かれており、礼治が尋ねる前にクロとシロが代わりに尋ねる。
「ああ、これか?」
フォースがそう言うと袋の口を開けると袋の中から銅貨がジャラジャラと音を鳴らしながら出てきた。
「え?このお金は一体どうしたんだ⁈」
礼治は二十枚以上はある銅貨を見てフォースに慌てて尋ねる。
「あれだよあれ」
「あれ?」
フォースは質問を聞くとある方向を指差したので礼治はそちらを振り向く。その指された先にはギルドの一角で力に自信がありそうな屈強な冒険者達が腕相撲大会を開催していた。
「なんかさぁあ。勝ち抜き形式で一人に勝つごとに負かした相手から銅貨一枚を貰えるらしくてさ。それで面白そうだったから参加したんだけど、どの相手も弱過ぎて一気に二十五人抜きしてしまってさあ。これ以上やってもつまんなかったから途中で抜けてきた」
「ハハハ、それは凄いな」
礼治はフォースの凄さにタダ笑うしかなく、本当に家族達は凄いなと改めて思わされたのだった。
「それでようレイジ。この金を貰ってくれねーか?」
フォースはそう言いながら銅貨が二十五枚入った布袋を礼治の方に寄せてきた。
「えっ?でも、これはフォースが獲得したお金だろ?」
突然のフォースの申し出に礼治は戸惑い、本当に大丈夫なのか尋ねた。
「別に私等はお金なんて使う必要はないからさ、どうせなら弟のレイジに使って欲しいんだよ。だから貰ってくれねーかな?」
しかし、フォースは全く気にしないと言わんばかり再び銅貨の入った布袋を礼治に渡してきた。
「わかったよフォース。じゃあ、有難く貰っておくよ。その代わりもしもお金が必要になった時はいつでも言ってくれ。すぐに返すからさ」
礼治は一旦預かるという形でフォースからお金を受け取ることにした。
「おう‼︎」
フォースも自分の稼いだお金を主であり、弟である礼治に受け取って貰えたことでとても嬉しそうに笑っていた。
それからも宴会は続き、途中から目が覚めたフールは自分が礼治の膝の上で寝ていたことに気づき、すぐに膝の上から退いてから顔を真っ赤にしていたもののとても嬉しそうに笑ってもいた。
その後クロとシロが空気を読み、フールに礼治の隣そ席を譲りフォースの隣の空いている席に移動したのでフールは礼治の隣に寄り添いながら座る。
さらにしばらくして、喋るうちに意気投合していたサタンとパルケスと二人に合流していた『グリフォンの翼』であるカルナとアスマン、そしてリーダーであるロイド、テミスとテミスに引きづられてきた魂が抜けたロマノフが集合し礼治は家族と『グリフォンの翼』のメンバーで一緒に盛り上がっていた。
そうして楽しい時間が過ぎ、夜の八時を報せる鐘が鳴った頃、眠くなったのか礼治の隣でトランが大きな欠伸をし、目を擦った。
「どうしたトラン?眠たいのか?」
「レイジ兄…うん、今日はもう疲れちゃったからもう…そろそろ限界………。zzz」
礼治にトランは返答し、睡魔に負けて眠りについてしまった。
そんな様子を見ていたフォースが席から離れ、完全に寝てしまったトランを軽々と背負う。
「ありがとなフォース」
「これぐらいは姉として当然のことだよ」
礼治の言葉にフォースは笑いながらそう言った。
これは後日、礼治がフールから聞いた話であるがフォースは異空間では大アルカナの子供グループの面倒をよく見てくれる世話好きとのこと。
「レイジ様。今日はもう時間が遅いので私達はそろそろ失礼させて頂きます」
今度はテミスが立ち上がり挨拶をしてから頭を下げる。
「それもそうだな。今日は本当にみんなのお陰で助かった。これからもよろしくな」
大アルカナ達が異空間に戻る前に礼治はもう一度力を貸してくれた家族に感謝を伝えた。
「レイジ殿。また儂等の力が必要な時はすぐに呼ばれよ。全力を尽くし、必ずやレイジ殿をお守りするからのう」
「じゃあなレイジの兄貴。またいつでも呼んでくれよな」
「なぁレイジ。今度強そうな奴と戦う時は私を呼んでくれよな。絶対だからな!」
「「レイジ兄さん。もし遠出をする時は俺たち(私たち)を呼んでな(ね)。その時は絶対役に立つから」」
テミスの説教から回復していたロマノフと他の大アルカナ達も礼治に対しそれぞれで挨拶を返す。
この時のフールは、次の近況報告は二日後の朝に戻って来てくれればいいと言うテミスの配慮にとても喜んでいた。
「それではレイジ様、フール様。今日はゆっくりとお休み下さいませ」
テミスが代表で挨拶をした後、大アルカナ達は光を放ちながら異空間へと戻っていった。
礼治とフールはその後、『グリフォンの翼』のメンバーやマリーを含めたギルド職員達に挨拶をしてからギルドを後にした。
その間にマリーからギルマスの伝言で明日の昼に色々と話したいことがあるからギルドに来てくれと伝えられ、礼治はマリーに了承の返事をした。
その後、二人は今の自分達の帰る場所である『夕暮れの日差し亭』へと戻るのであった。




