第29話 出迎える者達
今は昼の一時の鐘の音が聴こえてからしばらく経った頃、警備兵と偵察班を除く冒険者達と礼治の家族である大アルカナ達はゴブリン軍団との戦いに誰一人として欠けることなく勝利を収め街に戻ってきた。
「みんなおかえりなさい」
「街を守ってくれてありがとう」
「全員が無事なんてあんた等はスゲーぜ」
「スゴーイ」………
冒険者達が南門から入り中央広場までの間に避難場所から戻って来ていた沢山の人々が感謝の言葉をかけながら出迎えてくれた。
「レイジさん、フールさん」
そして冒険者達が中央広場まで来た時。背後から礼治とフールを呼ぶ声が聞こえたので二人は声が聞こえた方へと振り向くとこちらに走ってくる夕暮れの日差し亭の一人娘であるラルファがいた。
ラルファは二人を見つけた後、沢山の人混みの中をかき分けて走って来たからか、こちらに辿り着い時には髪が乱れており肩で息をしていた。
「スーハースーハー。レイジさんフールさんお帰りなさい」
ラルファは息を整えてから笑顔で挨拶をし、二人を出迎えてくれた。
「ただいまラルファさん。無事に帰ってきました」
「ラルファさん、ただいま帰ってきました」
二人もラルファに笑顔で挨拶を返した。
「私達が家族で避難した時にお二人が避難場所にいなかったのでどうしたのかなと思ってたんですが、討伐戦に参加していない冒険者さんから昨日登録したばかりの冒険者二人が討伐戦に参加したと聞きました」
ラルファはそう言いながら二人に迫ってきた。
「私はその話を聞いた瞬間すぐにお二人のことだと分かりました!その時は本当に心配したんですよ!もしお二人に何かあったらと心臓が止まると思ったんですよ‼︎」
ラルファは二人のことが本当に心配だったらしく、目尻から涙を流していた。
「心配をおかけてしてしまい本当にすみませんでした」
「すいませんでした」
礼治は慌ててラルファに頭を下げて謝り、フールも後に続いて頭を下げて謝った。
「お二人が謝らなくていいんですよ。早く頭を上げてください」
その二人の謝罪にラルファは頭をあげるように急かし、二人は頭を上げそれを確認したラルファは話を続けた。
「確かに心配はしましたがお二人は冒険者なので危険がつきものが当たり前ですよね」
ラルファはそう言いながら自分の右手で涙を拭った。
「ですが、これだけは約束してください。お二人が夕暮れの日差し亭で宿泊していようが、お金を沢山稼げるようになり他の宿屋に泊まることになっても必ずこの街にいる間は絶対に生きて帰ってきてください。いいですね」
ラルファは二人に約束を提示してきた。
「はい、もちろんです。俺達はどんなことがあったとしても必ず生きて帰ってきます」
「はい、約束します」
礼治もフールもラルファとの約束を守ると即答で誓った。
「はい。私もこれからもお二人が夕暮れの日差し亭に帰ってきてくれることをこれからも信じてお待ちますね」
ラルファは二人が約束を守ると誓ったことに安心し。また、これからも二人が必ず帰ってくることを信じることにした。
「おい、二人とも。そこで何を止まっている。早くギルドに戻るぞ」
突然、ギルドマスターであるエネドラからのお呼びがかる。
「すいません今行きます!それじゃあラルファさん。夜には必ず帰ってきますので、いってきます」
「私も礼治様と共に必ず帰ってきますので、いってきます」
「はい。お二人のお帰りをちゃんと待っていますので、行ってらっしゃいレイジさん、フールさん」
ラルファに挨拶をしてからギルマス達がいる方へと走り出していった。
それに対してラルファも二人が見えなくなるまで見送っていた。
夕暮れの日差し亭に二人が必ず帰ってくることを信じながら。
〜約十分後〜
冒険者達はギルドに着き、エネドラがギルドの扉を開けた。
『ギルドマスター、そして冒険者様がた。お帰りなさいませ』
エネドラが扉を開けたと同時にギルドで待機していたギルド職員達が全員で出迎えてくれた。
ギルド職員全員の表情は冒険者達の無事の帰還に喜びの笑顔であった。
「ただいま。随分と豪華な宴だな。魔獣が迫っている中でこれ程の準備をしてくれたのか?」
エネドラはギルド職員達に挨拶を返した後、周りを見渡しそう尋ねた。なんせギルドの中に置かれているテーブルの上には沢山の美味しそうな料理の乗った皿やお酒やジュースなどの飲み物が入った瓶が並べられており、まるで何処かの高級ホテルで開かれたパーティー会場のようだった。
「冒険者様方や警備兵達が力のない私達の代わりに戦ってくれていたんです。それならこれぐらいしないとお礼はできません。なので冒険者の皆様本当にありがとうございました。これは私達のギルド職員一同の気持ちですのでどうか受け取ってください」
エネドラの質問にギルド職員の一人の男性が代表して応えた後、冒険者達に料理やお酒を楽しむように急かしてきた。
「それはありがたい。じゃあお言葉に甘えて、お前等今日は夜まで楽しむぞ!」
『ヨッシャーーーー‼︎』
エネドラはギルド職員の言葉に甘え、冒険者達も宴の合図がかかると同時に歓喜の声を上げ、我先にと料理が並べられているテーブルへと向かった。
礼治やフールはもちろんのこと、他の大アルカナ達も料理が並べられているテーブルへと向かう。
「レイジ様、フール様」
向かう途中で声をかけられ二人が振り向くとそこには涙を流しながら立つマリーがいた。
「マリーさんいったいどうしたんですか⁉︎」
マリーが泣いていたので礼治は慌ててマリーのもとへと駆け寄る。
「すいませんレイジ様。私、レイジ様達が本当に無事に帰ってきてくれたのが嬉しくて嬉しくて、涙が止まらないんですニャ」
「そうだったんですか。マリーさんには心配をお掛けしてすいませんでした。約束通りみんなで無事に帰ってきましたので、ただいまですよね」
礼治はマリーの泣いている理由が自分達が無事に帰ってきたことでの嬉し泣きだと分かりホッとした後、マリーに『ただいま』と挨拶をした。
「はい。お帰りなさいませレイジ様、フール様」
マリーは流している涙を拭き、礼治といつの間にか礼治の背後にいたフールに笑顔で挨拶をしてくれた。
「ただいまです。マリーさん」
フールもマリーさんに挨拶を返しす。
「本当にお二人が無事で良かったです。…あの、突然ですいませんがレイジ様達の後ろにおられる方々はもしかしてレイジ様の使い魔の方々ですか?」
マリーはそんな質問を突然してきた。
確かに礼治の後ろには使い魔であり、礼治の家族である大アルカナ達がいて、その中でもサタンは昨日の夕方にマリー達の前で呼び出していたのでそこから判断したのだろう。
「はい、そうですよマリーさん。みんな俺の使い魔であり大切な家族です。今回の討伐戦も家族のお陰で無事に勝利を収めることができたんですよ」
礼治はマリーの質問を答えてから自分の大切な家族達を紹介した。
「レイジ様は本当に凄いお方なのですね」
マリーはそう言いながら頰を赤く染めながら礼治に熱い視線を送っていた。
そんな状況の中、楽しく話している二人を観察していたサタンは礼治と楽しく会話しているマリーに嫉妬するフールに小さく声をかける。
〔なあフールの姐御。そんな風にレイジの兄貴を縛るなよ〕
〔私は別に礼治様を縛っていませんが〕
フールも小さい声でサタンの言葉を否定する。
〔あのなあフールの姐御。レイジの兄貴はフールの姐御が言うように確かに優しいし強いからこの世界では絶対にモテる。だからこそああやってレイジの兄貴の魅力に惹かれて女が寄ってくる〕
〔礼治様は世界で一番素敵なお方です。それは当然のことです。しかし、それで礼治様に近寄ってくる女は私が排除します〕
サタンの言葉に物騒な言葉で返答するフール。
〔そんなことしたらレイジの兄貴に迷惑がかかるだろうが。俺が言いたいのはこの世界は弱肉強食の世界で強かったり、資産を多く持つ奴はモテて何人もの愛人や妻を持つことができる。レイジの兄貴もコレにいずれ当てはまることになる〕
サタンは一旦言葉をここで切りそんな会話をしているとはこれっぽっちも思っていない礼治の方に目線を向ける。
そこにはマリーと楽しく会話をしている礼治がいた。
〔女の中には裕福な暮らしのために強者に媚びを売る女がたくさんいる。だが、あのマリーっていう女は純粋にレイジの兄貴のことを好きになっている。フールの姐御が言うような悪い女には見えないが?〕
〔確かにマリーさんは礼治様と出逢ってからすぐに礼治様の魅力に惹かれました。しかし、もし仮に礼治様とマリーさんが結ばれる形になり、その後私が礼治様にあまり相手にされないようになったらと思うととても怖いんです〕
フールは礼治が他の女と楽しく過ごし、フール自身を相手にしてくれなくなってしまうんじゃないのかと恐れていたのだ。
〔おい、フールの姐御。レイジの兄貴がそんなことする人だと思ってんのかよ。俺はあんたのことを見損なったぞ〕
フールの言葉にサタンはフールを本気で睨んだ。
〔あんたが心配するのはレイジの兄貴を信じてないということと同じだ。俺らのレイジの兄貴は家族思いで絶対に平等に接してくれる。あんたはその中でもポジション的には妻だろうが。それに自信を持てよ〕
礼治がこの世界に来てから礼治の為に一番働いているのは間違いなくフールであり、礼治にとってのフールは既に何者にも変えがたい唯一無二の存在なのだ。
〔レイジの兄貴に何人女ができようがあんたが正妻的立場であり、レイジの兄貴を一番愛しているのはあんたで変わらないだろうが〕
〔サタン……。ありがとうございます。そうですよね、私は礼治様の正妻ですし、礼治様がそんなことをされるお方ではありません。私は自信を持って礼治様の妻として礼治様を支えていきます〕
サタンの熱弁にフールが抱えていた負の感情を払いのけ、サタンに感謝した。
〔それでこそフールの姐御だな〕
フールがいつも通りにもどり、サタンも睨むのをやめた。
<グウ〜〜〜>
突然、腹の虫の声が聞こえ礼治やマリー、それからフール達が音の聞こえた方に目を向ける。
「レイジ兄。ボクもうお腹ぺこぺこ///」
目線の先には恥ずかしさのあまり顔を真っ赤に染め、顔を俯いかせているトランがいた。
「ごめんなトラン。それじゃあみんなで食べようか」
「やっと飯だー」
「「レイジ兄さんと一緒にご飯だー」」
「ほっほっほぉー。やっと美味い酒が飲めるわい」
礼治がそう言った途端、他の大アルカナ達もお腹が減っていたらしく、やっとご飯を食べれることに喜んでいた。
「じゃあマリーさん。俺達は向こうで食べてますんで」
礼治はマリーにそう伝えてから席が空いているところへと移動した。
その時、フールは礼治について行こうとしたが、その前にマリーのところへと向かった。
〔マリーさん。チョット良いですか?〕
フールはマリーに小さい声で話しかける。
〔何でしょうかフール様?〕
マリーもフールの話す音量に揃えて小さい声で尋ねる。
〔私は礼治様の正妻的立場ですが、マリーさんが礼治様を心から好きだとお想いなら礼治様の愛人になっても私は構いませんので、告白するならしても大丈夫ですよ〕
「ヘェ?……エェ〜〜〜〜〜〜〜⁉︎」
マリーはフールの突然の発言に一瞬頭の整理が追いつかず、理解すると同時に大声を出して驚いた。
「マリーさん、シーですよ」
フールは右手の人差し指を立ててマリーに静かにするよう伝え、マリーは慌てて自分の口を両手で抑えて頷いた。
「これは別に強制ではなく、ただマリーさんがしたいようにすれば良いだけなので。後はマリーさんの自由ですよ」
フールは自身が伝えたいことを伝え終わると礼治のところへと戻ってきた。
その間マリーはただ茫然とフールを見送ることしかできなかった。
自身の気持ちを伝えたフールは礼治のところへと戻ってくるなり、愛おしい礼治の腕に抱きついてきた。
「どうしたんだフール。マリーさんになんか用事でもあったのか?」
フールとマリーの会話を聞いていない礼治は腕に抱きつき、頰を擦り付けてくるフールに尋ねる。
「はい」
フールは元気よく満面の笑みで返事をした後は何も話さなかったので、礼治はそれ以上は聞かずに大アルカナ達と食事をとる為に席に着く。
そんな状況から討伐戦を無事に勝利を収め、全員が無事に帰還したことを祝して、祝いの宴が始まるのであった。




