第27話 VSゴブリン軍団 "終戦"
ゴブリンキングの死体が上空から重力に従い落下してきて、地面に落ちたと同時にクレーターを二つ造り、辺りが一瞬沈黙の渦に沈んだ。
『ウオオオオォーーーー‼︎‼︎』
突然、沈黙を破り冒険者達や警備兵達が雄叫びをあげた。
「お前ら何に喜んでやがる!まだ勝負はついてないだろうが!喜ぶのは後にしろ‼︎」
ゴブリンキングが討伐されたことにより浮かれた冒険者や警備兵達はエネドラの一喝により指揮官を失ったことにより逃げ出そうとするゴブリンのザコ達の殲滅作業に慌てて取り組んだ。
「おい、私らも残りのザコの殲滅作業に取り組むぞ!」
エネドラは礼治とロイドに指示を出した後、一足先にゴブリンの残党のもとへと走っていった。
「人使いが荒いなウチのギルドマスターは」
「ハハハ、そうかもしれませんね」
ロイドがエネドラについての感想を言い、礼治もそれに同意する。
「そんじゃあ、俺らも行きますか」
「そうですね。またギルドマスターに怒鳴られる前に」
「だな」
礼治とロイドは話を終えた後、お互いに別の方向に向き、ゴブリンの残党のもとに走り出した。
そんなゴブリンキングを倒した彼等を森の中から見ていた黒いマントにフードを深く被った者が二人いた。
「おいおいおい⁉︎何なんだよあれ!あの二人以外にも強い奴等がいるなんて聞いてないぞ!」
声からして男であろう。フードを被った男は礼治達によってゴブリンキングが討伐される瞬間を目撃し、その出来事に対して驚きを隠せずにいた。
「ラケル!テメエの情報と全然違うじゃねえかよ‼︎」
男は隣にいるもう一人のフードを被った人物に荒々しく問いただす。
「落ち着いてくださいハーマンさん、私も目の前で起こったことが信じれてません」
ラケルと呼ばれた声からして女性である人物は男性の方をハーマンと呼び、落ち着かせようとした。
「第一、私が一週間前に調べ終わった時点にはいなかった人物がギルドマスターとAランクの冒険者と一緒にゴブリンキングを倒したんですよ。それに所々で異常な力でゴブリン達の殲滅や味方の防御そして補助といったそれぞれ何かしらの力に特化した化け物が全員あの無名の人物の使い魔なんですよ。それを情報なしで対処できるはずがありません」
「おいおいおい!あの中のバカでかい力を持った奴が全員が使い魔なのかよ。しかも、その全員があのガキの使い魔ってなんだよ。どんだけそいつは化け物なんだよ。第一そいつは本当に一週間前にはいなかったのかよ?」
ハーマンは再度ラケルに質問する。
「私の調べに間違いなどあるわけないでしょ!だいたいあんなのがいたら見落とすはずがありません‼︎」
ラケルとハーマンは互いに向き合いフードで顔が見えないが睨み合った。しかし、暫くするとラケルのほうが大きなため息を吐いた。
「ハァー。ここで互いにいがみあったとしても時間の無駄ですね。それよりも早く戻りあのお方にこのことをお伝えせねばなりませんね」
「チッ、分かったよ。早く戻ると……」
ハーマンが突然言葉を止めた。
「どうかしましたかハーマンさん?」
不意に言葉を止めたハーマンにラケルは声をかけた。
「いや、あのガキがコッチを向いている気がするんだが…って危ねえ!」
「キャァ‼︎」
ハーマンがそういった瞬間、突然ラケルを押し倒した。
「貴方はいったいなにを<バシュン>……へ⁇」
ラケルは突然押し倒してきたハーマンに怒ろうとしたが、突然ハーマンの背後をつまりラケルが先程まで立っていたところを何かが音を立て通り過ぎるのが見え、ラケルは裏返った声をだした。
ラケルは慌てて通り過ぎていった何かを見るため飛んでいった方向を向くと、そこには水魔法によって造られた鎖が先程までラケルが立っていた場所からして背後にあった木に巻き付いていた。
それを見たラケルは驚き、ハーマンの方に再び目線を戻すとそこには自分と同様にハーマンも驚愕の表情を浮かべていた。
「ハーマンさん、これはいったい何が「説明は後!こっから離れるぞ‼︎【空間移動】」…」
ハーマンはラケルの言葉を遮り魔法を使いラケルと共にその場から姿を消した。
一方で、先程まで顔をフードで隠していた二人がいた場所を森の外から左手に持つ水の聖杯を森に向けていた礼治がいた。
「「どうしたのレイジ兄さん?」」
そんな彼の一連の行動を近くで見ていたクロとシロが息を揃えゴブリンナイトを蹴飛ばしてから質問してきた。
「いや、なんか森の中からこっちを見ていた奴らがいたから捕らえようとしたんだが逃げられたな」
「「それって他のゴブリン?」」
礼治の返答にまたシンクロ率百パーセントで二人が質問してくる。
「いや、少なくとも別の何かだ。それにその場から一瞬で消えたから多分瞬間移動ができる奴で、少なくとも一キロ圏内にはいないな……」
礼治はスキルの【気配察知】を最大限まで広げて森に隠れていた二人を探したが同じ気配は感知出来ず、そう返答すると少し考え始めた。
(森の中から高みの見物…どう考えても奴等が今回の引き金だよな。だとしたらやっぱり狙いはこの街を墜とすのが狙いか?それとも他の何かか?)
「どうしたっすか?」
礼治が暫く考え込んでいると後ろから声を掛けられ、礼治が後ろを振り向くとそこには『グリフォンの翼』の一人であるカルナがいた。
「カルナさん。どうしてここに?」
「雑魚を倒してたら君が森に向けて魔法を放っていたから気になって来てみたっす」
カルナの手にはゴブリンの血で汚れた短剣二振りが握られており、その血の汚れ方から沢山のゴブリンを倒していたことが伺えた。
「実はですね……」
礼治はそこで冒険者として先輩であるカルナに森に隠れていた二人の気配について説明した。
「……なるほどっすね。だったら早速調べるっす」
「へ?カルナさんがですか?」
「ウチの職業はレンジャーっす。そこにいた奴の痕跡を調べるくらいは朝飯前っす」
礼治の質問に答えたカルナは早速とばかりに怪しい人物二人が隠れていた場所まで向かっていった。
「一人で大丈夫かな?」
礼治が一人で行ってしまったカルナを心配していると、前の方から服の裾を引っ張ってくるクロとシロに気がつく。
「「なあなあ(ねえねえ)レイジ兄さん、早く敵をやっつけようぜ(よ)」」
「そうだな。早く片付けてから飯にしたいな」
急かしてきた二人の顔を見た礼治はカルナはAランク冒険者パーティーの一人だから大丈夫だろうと判断し、前にいる二人の頭を撫でてからそう答えた。
「「俺(私)もレイジ兄さんと一緒にご飯を食べたい‼︎」」
「ああそうだな。コレが済んだら今日頑張った皆んなで飯を食うか」
「「ヤッターーーー‼︎」」
二人も礼治が笑顔になってから頭を撫でてもらえたのが嬉しかったらしく、ニコニコ笑顔で返事をし。また、主人と一緒にご飯を食べれることに凄く喜んだ。
「よし、シロ!サッサと片付けようぜ‼︎」
「勿論だよ兄さん!早く片付けてからレイジ兄さんとご飯を一緒に食べよう‼︎」
二人はそう話し合った後、ゴブリンの残党がいる場所へと地面を抉りながら走っていき、礼治も二人の後を追っていった。
それからゴブリン軍団の殲滅作業はこちら側から死者を出さずに一時間も経たずに終了するのであった。




