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星は昴?ーそれでも僕は彼女を守りたかったー  作者: 村松希美


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第3章 女難の中の成長




「……なんで、こうなるんだよ」

夕方の商店街。


昴は、手にした空の財布を見つめていた。

さっきまで、確かに中にあったはずの金。

昼に下ろしたばかりの、なけなしの生活費。


(……やられた)

理解が、少し遅れて追いつく。

スリ。

しかも、相手は女だった。


(気づかなかった……)

自分の甘さが、じわじわと広がる。


「はぁ……」

深いため息。

周囲は、いつも通りのざわめき。

誰も気づかない。

自分のこの状況に。


(最悪だ……)

前なら、ここで終わっていた。

運が悪い。

自分はついてない。

そうやって、諦めていた。


でも。

(……違う)

頭の中に、浮かぶ顔がある。

鈴。

双子。

(俺、今……一人じゃない)

その事実が、思考を変える。


「……戻るか」

小さく呟く。

来た道を、振り返る。


(まだ、近くにいるかも)

足が動く。

自然と。

(探す)

今までなら、絶対にやらなかった行動。

面倒だし、怖いし、無理だと思っていた。


でも。

(やらないと)

理由がある。

守るための金。

生活の一部。

それを奪われたままにはできない。


目を凝らす。

人の流れを読む。

さっき、ぶつかった女の顔を思い出す。


(……いた)

少し先。

人混みの中。

見覚えのある後ろ姿。


(あれだ)

心臓が、速くなる。

怖さもある。

でも。

(行け)

足が、前に出る。


「おい!」

声を張る。

自分でも驚くくらい、大きな声。

女が振り向く。

一瞬の目線。

その中に、焦りが見えた。


(やっぱり)

確信に変わる。

「財布、返せ」

言い切る。

逃げ道を与えないように。


女は、舌打ちをした。

「知らないわよ」

とぼける。


でも。

「さっき、ぶつかっただろ」

一歩詰める。

距離を縮める。

(逃がさない)

その意識が、体を動かす。


女が後ずさる。

その瞬間。

昴の中で、何かが切り替わる。


(今だ)

一気に距離を詰める。

手首を掴む。

反射的に。

強く。


「離してよ!」

女が暴れる。

でも。

離さない。


(離したら終わる)

それが分かっているから。


「中、見せろ」

低く言う。

自分でも知らない声。

強い声。

周囲の視線が集まる。

ざわめきが広がる。


(……やばいか?)

一瞬、迷う。

でも。

(引くな)

ここで引いたら、全部無駄になる。


「……チッ」

女が、小さく舌打ちする。

そして。

バッグの中から、財布を取り出した。


(……あった)

安堵が、一気に広がる。

でも、気を抜かない。

それを受け取るまで。


「もういいでしょ!」

女が手を振りほどき、走り去る。

追わない。

目的は、達した。


「……はぁ……」

一気に力が抜ける。

手が、少し震えている。


(……やった)

現実感が、遅れてくる。


(俺が……取り返した)

今までの自分なら、絶対にできなかった。

逃げていた。

諦めていた。

(……変わった?)

その問いが、浮かぶ。

少しだけ。

でも、確実に。


その日の夜。

「え!?取り返したの!?」

鈴が目を見開く。

驚きが、そのまま出ている。

「ああ」

短く答える。

少し照れくさい。


「すご……」

ぽつりと呟く鈴。

その声に、嘘はなかった。


(……初めて、かもな)

こんなふうに、素直に驚かれるのは。


「でも、危ないでしょ」

すぐに、表情が変わる。

心配の色。

「刺されたらどうするのよ」


(……ああ)

そうか。

それもあるのか。

今まで考えなかった。


「……考えてなかった」

正直に言う。


鈴が呆れたようにため息をつく。

「バカ」

いつもの言葉。

でも。

どこか柔らかい。


「でも……ありがと」

小さく付け足す。


(……今、言ったよな)

聞き間違いじゃない。

確かに。

「……別に」

そっけなく返す。

でも。

胸の奥が、少し熱い。


その帰り道。

また、あの感覚が来る。

視線。


(……いる)

今度は、すぐに分かる。

でも。

足は止まらない。

(逃げない)

振り返る。

一瞬だけ。

人混みの中。

誰かが、視線を逸らす。


(あいつか?)

確信はない。

でも。

「……関係ない」

小さく呟く。

前を向く。


(俺がいる)

それだけで、意味がある。

鈴の隣で歩く。

少し前より、距離が近い。


「……昴」

鈴が、ぽつりと呼ぶ。

「ん?」

「今日さ」

少しだけ間を置く。

「……ちょっとだけ、かっこよかった」


(……は?)

思考が止まる。


「一瞬だけだからね」

すぐに付け足す。

照れ隠し。


でも。

「……一瞬で十分だろ」

軽く返す。

強がり半分。

本音半分。

そのやりとりの中で。

昴は、はっきりと感じていた。


(俺、ちゃんと変わってきてる)

弱いままじゃない。

怖いままでもない。

(それでもやる)


その選択が。

自分を変えている。

女難は、相変わらずだ。

トラブルも、なくならない。


でも。

(意味がある)

今は、そう思える。


それが――

一番の変化だった。







草稿を入力してAIが書きました。

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