第4部 影の侵食 第1章 復讐者の誕生
最初は、ただの偶然だった。
そう思っていた。
街の雑踏の中で見かけた、ひとりの少女。
整った顔立ち。控えめな仕草。どこか守ってやりたくなるような雰囲気。
(……綺麗だな)
それだけだった。
それ以上でも、それ以下でもない。
だが、その「それだけ」が、心のどこかに引っかかった。
(もう一度、見たい)
理由は分からない。
ただ、気になった。
次に見かけたとき、少しだけ嬉しかった。
(やっぱり、あの子だ)
偶然が二度続くと、人は意味を見出したくなる。
(三度目もあるかもしれない)
そう思ったときには、もう“偶然”ではなくなっていた。
意識して、探していた。
――どこにいる?
――いつ現れる?
気づけば、視線はいつも人混みの中の「彼女」を探していた。
(俺は、何をしているんだ)
自嘲する気持ちもあった。
だが、それ以上に――
(知りたい)
その欲求の方が強かった。
名前は?
どこの学校だ?
どんな生活をしている?
誰と関わっている?
知りたい。
知れば、安心できる気がした。
知らないままなのが、不安だった。
(知らないだけだ。知れば、ただの他人になる)
そう思っていた。
――だが、ならなかった。
むしろ、逆だった。
知れば知るほど、距離は縮まるどころか、歪んでいった。
(こんな時間に、あんな場所に?)
最初に違和感を覚えたのは、その時だった。
夜。
少女は、知らない男と歩いていた。
笑っている。
自然に。
(……どういうことだ)
胸の奥に、ざらついたものが広がる。
(あの子は、そんな子じゃない)
勝手に作り上げていたイメージが、音を立てて軋む。
(違う。何か理由がある)
頭の中で、必死に辻褄を合わせる。
きっと困っているんだ。
騙されているんだ。
無理やり――
(そうだ、そうに違いない)
納得した瞬間、心が落ち着いた。
自分の中の“彼女”は、壊れていない。
(なら、俺が……)
その先の考えは、自然に繋がった。
(助けなきゃいけない)
義務のように。
当然のように。
それが正しいことだと、疑いもしなかった。
だが――
現実は、違った。
「……放してよ」
あの日。
自分の手を振り払った彼女の顔。
あれは、恐怖だった。
(……違う)
あんな顔を向けられる理由が、分からなかった。
(助けようとしただけだ)
なのに、彼女は拒絶した。
拒絶しただけではない。
“否定”した。
(なんでだ)
胸の奥が、きしむ。
熱いものが込み上げてくる。
(俺は……間違ってない)
そう思わなければ、立っていられなかった。
あの瞬間、自分の中で何かが壊れた。
それは小さなヒビだった。
だが、確実に。
(あいつのせいだ)
言葉が、形を持つ。
(あいつが、分かってないだけだ)
責任の所在が、すり替わる。
(俺の気持ちを……)
拳が、無意識に握られる。
(踏みにじった)
その瞬間。
“好き”だった感情が、形を変えた。
消えたわけではない。
ただ、濁った。
(教えてやる)
低い衝動が、胸の奥から這い上がる。
(何が正しいか)
呼吸が浅くなる。
(あいつは間違ってる)
心が、妙に静かになる。
怒りとは違う。
もっと冷たいもの。
(俺が、正してやる)
その考えは、あまりにも自然に収まった。
疑問はなかった。
迷いもなかった。
ただ、“そうするべきだ”という確信だけがあった。
それからは、簡単だった。
彼女の行動を追うことも。
生活を探ることも。
居場所を知ることも。
(全部、あいつのためだ)
そう思えば、どんなことでも許された。
夜道をつけることも。
遠くから見つめることも。
偶然を装って近づくことも。
すべてが、“意味のある行動”になった。
(逃げても無駄だ)
どこにいても、見つける。
(俺は、お前を知ってる)
お前が気づいていないだけで。
(本当のことを)
教えてやる。
そのためなら――
どこまででも行ける。
どこまでも。
静かに。
確実に。
壊れながら。
そしてその男は、自分が壊れていることに――
最後まで、気づくことはなかった。
草稿を入力してAIが書きました。
恋愛のストーカーも危険ですが、集団ストーカーは長期に渡るので人生破壊ですね。
でも、最近では被害者でなくても、悪魔の所業だと気づき始めた方が大勢います。




