プロローグ 星はまだ名を知らない
夕暮れの野原に、風がそよいでいた。
空は群青へと沈みかけ、ひとつ、またひとつと星が瞬き始める。
その中に、まだ名も知らぬ光があった。
幼い少年――昴は、震える手で棒きれを握りしめていた。
目の前では、一匹の野良犬が低く唸り声をあげている。
「……っ」
足がすくむ。逃げ出したい。
胸の奥で、心臓が壊れそうなほど暴れていた。
そのときだった。
「やだ……来ないで……!」
小さな声。
振り向くと、ひとりの少女が立っていた。
涙で潤んだ瞳、後ずさる足、今にも崩れそうな細い肩。
その姿を見た瞬間、昴の中で何かが弾けた。
怖い。
それでも――
「だ、大丈夫だよ!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。
昴は地面に転がっていた棒を掴むと、無我夢中で振り回した。
剣道の形も何もない。ただの滅茶苦茶な動き。
それでも、その一振りは確かに犬を捉えた。
キャンッ、と短い悲鳴。
野良犬は尻尾を巻いて、夕闇の向こうへと逃げていった。
静寂が戻る。
少女はしばらく呆然と立ち尽くしていたが、やがて小さく頭を下げると、何も言わずに走り去っていった。
風に揺れる髪だけが、わずかに残像のように残る。
「……はぁ、はぁ……」
昴はその場にへたり込んだ。
手から棒が転がり落ちる。
全身が震えていた。
遅れてやってきた恐怖に、涙が滲む。
「こ、怖かった……」
そう呟いた瞬間、力が抜けて、そのまま地面に手をついた。
でも――
胸の奥に、ほんの少しだけ、違う感情が残っていた。
(……守れた)
誰かを守れた、という感覚。
それは、これまで感じたことのない、小さくて、けれど確かな熱だった。
空を見上げる。
無数の星が、静かに瞬いている。
その中のひとつが、なぜかやけに強く輝いて見えた。
――その光が、やがて“昴”と呼ばれることを、
このときの少年はまだ知らない。
そして。
あのときの少女と、再び出会うことになる未来も――。
草稿を入力してAIが書きました。




