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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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ここはオレに任せて先に行け


『世界の命運は勇者ナオトに託された』


『ナオトなら勝つる!』


『俺も応援する!』


『頼むナオト!』


 そんななか、人々の声はナオトに向かった。


 真剣な表情でセラと向き合うナオトにもはやコメントの文字は届かないが、つい先ほどまで彼を嘲笑していた者たちでさえ、ナオトは自分の味方として取り込んでしまっていた。


「セラ……もうやめるッスよ……!」


 ナオトへの声のない応援が轟くなか、それまで倒れていたロイヤが剣を支えに立ち上がっていた。


「お兄ちゃん!」


「世界を滅ぼすなんてバカなことは言っちゃだめッス……!」


「そんなの、お兄ちゃんが私を受け入れてくれれば万事解決じゃない!」


「それは自然じゃないッスよ」


「なによ! それじゃあやっぱりお兄ちゃんも私と戦うって言うの!?」


「そうッスね……兄として、セラを止める義務があるッス……!」


 そう言ってロイヤもセラに向けて剣を構えた。だがしかし、その身体には深刻なダメージが残っているようで少しふらついている。


「ロイヤ! 平気なんだぜ!?」


「ええ……油断してキツい一撃をもらったッスけど、もう平気ッス!」


「でも、妹なんだろ?」


「妹だからこそ、オレが止めなきゃならないッス……!」


 ロイヤは歯を食いしばってセラに向き合う。


「セラの相手はオレに任せてくださいッス……ナオトさんとリリアンさんはそのあいだに自壊コード装置の起動を頼みます!」


「ロイヤは一人で大丈夫なんだぜ!?」


「正直キツいかもしれませんが、時間稼ぎくらいはして見せるッスよ! ここはオレに任せて先に行けってやつッス!」


「頼もしいな、さすがは真の勇者だぜ!」


「ナオトさんこそ! さっきの動き、見てましたよ……覚醒勇者はハンパじゃないッス……!」


 ロイヤはチラリと廊下の先に視線を向ける。そこへは自壊コード装置への行く手を阻む大量のサルキメラが待ち構えているのだ。


 ナオトはこの冒険中、ただの一体すらサルキメラを倒していない。それが今、数もわからぬほど大量のサルキメラを超えて先に進まねばならない状況だ。


 だがなぜか、ロイヤにはそれが不可能だと考えている様子はなかった。


「今のナオトさんなら……きっと突破できるッス!」


「ああ! ここは任せたぜ! ロイヤ!」


「うぃッス!」


 二人は強く視線を交わしながら、互いに背中を預けるように一歩を踏み出す。


 ナオトは自壊コード装置に向かい、ロイヤはセラに向かう。


「お兄ちゃん! どうして私の邪魔をするの!?」


「ちゃんと正しい道に引き戻すためッスよ……!」


 剣と爪を交えながらロイヤとセラは言葉を交わす。


「そんなことをしたって無駄! どうせあの勇者じゃ装置までたどり着けやしないんだから!」


「それはどうッスかね………!」


 互いの武器をぶつけながら言葉を交わす二人を背後に、一方のナオトはアルミームソードを片手に堂々とサルキメラに向かっていく。


 私はそんなナオトの背を追いかけながら声援を送る。


「ナオト様! 頑張ってニャ!」


「おう! 任せるんだぜ!」


 そして繰り出されるナオトの剣による一撃。


 思い返せば初の戦闘で一匹のサルキメラを相手にしたナオトは恐がって目を閉じてしまい、攻撃を当てることもできなかった。


 しかし今は……。


「ギギャアアアッ!」


 迷いの一切ない鋭い一撃でサルキメラを葬り去った。


 そればかりかその足を止めることなく、流れるように次々とサルキメラの群れを斬り倒していく。


「す、すごいニャ……ナオト様がサルキメラをバッタバッタと薙ぎ倒してるニャ……」


 私は驚き、思わず呆けてしまいそうになる。


「フッ……言うたじゃろう? ナオトは元々すごい奴なんじゃ……! 今のナオトならば、成し得ないことなどないっ!」


 倒れて動けないまでも、セツもしっかりと視線でナオトの背を押してくれていた。


「行け……行け……! 行っけぇ~! ナオト様ぁ~! 世界を救う勇者になるニャ~!」


 私は力いっぱいに叫ぶ。


「おうっ!」


 ナオトは短く応えながら前だけを見て突き進んでいた。


 やがて進路の先にほかのサルキメラとは一線を画す、ひときわ大きなシルエットが現れる。


 近づくにつれ、どうやらそれがサルキメラとは異なる存在であることがわかってくる。


「ニャ!? あれはクマ!? まさかクマキメラニャ!?」


 そういえば王城でクマキメラがどうとか話をしていたことを思い出す。それがどうしてこの場にいるのかと思いもするが、そんなことを悠長に考えている場合でもなかった。


「ナオト様、気をつけてニャ! クマは十センチを超える分厚い皮下脂肪を持ってるニャ! ちょっと斬りつけたところでダメージは与えられないニャ!」


 しかもそれがキメラ化することでさらに凶悪な能力を備えているとすれば……!


 私は蒼然とするが、それでもなおナオトは怯まなかった。


「なら、ダメージが通るまで斬り続けるだけだぜ!」


 そしてしっかりと足を止め、素早く剣を振るってクマキメラを何度も連続して斬りつける。鋭い爪の反撃を見事にかわしながら、何度も何度もその巨体をアルミームソードで斬りつけ、やがてそのクマキメラをも倒してしまった。


「ク、クマキメラを瞬殺ニャ……!?」


 私は呆然として立ち尽くしていた。


 気づけば休むことなく駆け出しているナオトを私は必死に追いかけることになる。


「ま、待ってニャ! ナオト様ぁ~!」


 クマキメラをも薙ぎ倒した勇者ナオトを止めるものはもう何もない。


 やがてナオトは行く手を阻むすべての敵を薙ぎ払い、とうとう自壊コード装置の前までたどり着いた。


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