勇 者 覚 醒
ナオトの強い決意が示されたところでコメント欄もますます勢いを増していた。
『胸アツ展開!』
『ナオト頑張れ!』
『さぁ盛り上がってまいりました!』
私がナオトのことしか気にしていられなかったあいだに、いつしかコメント欄にもナオトを擁護する声が多くなっていた。
だが一方で不安の声も混じる。
『だが魔王が強すぎる!』
『ロイヤで無理なら人間には不可能だろ』
『銃弾回避とか人間ワザじゃない』
そしてそれ以外の戸惑いも。
『でも約束では立ち向かうだけで勝ちなんだろ?』
『いや、シナリオ的にこれで戦わずハイ終わりは酷い』
『安心しろ。シナリオ監修はあの花鳥雪月花だ』
『だがそこは真偽不明の改変率99パーセントという不穏な情報もあってだな……』
『てか、これが本当にシナリオどおりなん? てか本当に映像作品なん?』
『カットもなく人間に銃弾回避なんか演出できるわけないだろ』
『でも今回は妙にメタ発言が多くね?』
『メタ発言が多めなのはナオトに真実を告げる都合だろ?』
『ん? こんがらがってきた』
『結局どっちなん? 特撮? 現実?』
『さすがにキメラはCGだろ』
『でもキメラがCGなら現物を見てるナオトは騙せなくね?』
『つまり本当はナオトもシナリオどおりで、騙されたふりの役者ってこと?』
『今ので演技はなくね? さすがに迫真すぎる』
『だけどそうなるとキメラや天使のセラがCGで説明つかなくね?』
『あれ? リアルタイム配信だろこれ……?』
『いやお前らちょっと待て』
『これギャグ作品かと思って深く考察してないけど、誰かよく整理してくんねーかな』
『冷静に考えると、これ色々まずい結果になんじゃね……?』
『いやまさかだろ、それは……』
コメント欄では私たちのメタ発言によって生じた人々の考察が一気に加速し始め、異様な雰囲気になってきていた。
そしてそれは私たちのあいだにおいても同じ。
セラは私とナオトの話がよほど気に入らなかったのか、不満や怒りを浮かべた表情で私たちを睨んみつける。
「なによ! なによ! なによ! 面白くないっ! そんなふざけた話がある!? 世界中に裏切られておきながら、なんでそんな簡単に立ち上がれるのっ!?」
セラは床を踏み鳴らすように憤慨していた。
「そうかわかった! どうせ立ち向かうふりさえしておけばゲームは勝ちとか、そんなふうに簡単に考えているんでしょ!」
そして突然ナオトに向かって飛び出し、セツやロイヤを一撃のもとに倒した蹴りを繰り出す。
「メッキの勇者なんて要らないのっ!」
「俺は着飾ってなんかないぜっ!」
ナオトはセラから放たれた風を切り裂くような蹴りをかわしたばかりか、翼をはためかせて身体を浮かせた体勢から強引に放たれた二段目の回し蹴りを手で掴み、勢いを流すようにセラの身体を遠くまで投げ飛ばす。
『ファッ!?』
『ナオト!?』
『うそやろ!?』
『勇 者 覚 醒 !』
「……ッ!?」
コメント欄でも驚きの声が溢れるが、それに一番驚いていたのはセラ自身だ。まさかロイヤすら倒した蹴りが投げて返されるとは思ってもみなかったのだろう。
しかも手で掴んで投げたということはアルミームソードを使わなかったということ。
「……ナメてるの? どうしてスキを見せた私に剣を使わない!」
「戦わなくて済むのなら、それに越したことはないんだぜ……? でも、今ので俺が立ち向かうふりだけじゃないってことはわかっただろ? ゲームは俺たちの勝ちだぜ」
「……っ!? ありえないでしょ! 普通の人間に私の攻撃がかわせるわけなんかない! どんなイカサマを使ったの!?」
戸惑うセラに、蹴り飛ばされた位置で気を失っていたセツが身体を起こしながら答える。
「そこの正直者がイカサマなんぞするものか……! 今のはただ、お主がナオトの力を侮っていただけじゃよ」
「私が……力を見誤った!?」
「そうじゃ……! 刮目せよ。今までこそ自らの力を閉じ込めておったが、殻を破った今のナオトならば、成し得ないことなどないわっ!」
セツは一片の不安もないとばかりに吠えていた。










