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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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あなたを勇者にしてあげる


 恨まれるどころか感謝の言葉が返って来るなんて……!


 ナオトの性根がひたすら真っ直ぐなのは知っていたが、さすがにここまでとは思っていなかった。


「俺は、ここで正直に向き合ってくれたリリアンを信じることにしたぜ……!」


 彼の瞳に、私は胸を貫かれた思いだった。


『想像の斜め上の展開!』


『これはリリアン惚れるやろ!』


『全俺が泣いた!』


 私も、もうしばらく私自身を騙し続けていたのかもしれない。


 今ようやく気づいてみれば、とっくにナオトの実直さに惹かれていたのだ。


「だからリリアン。俺は魔王と戦うぜ……! 特別に強いわけでも、本当は勇者でもなんでもないバカな男だけど、それでも俺は……!」


 私は感極まってナオトに飛びついていた。


「リ、リリアン……!?」


 驚いて戸惑っているナオトの顔を私は近くから見つめた。


 少しだけ照れているようで彼の頬は紅潮している。


「こんなに真っ直ぐで強いナオト様が勇者じゃないなんて、絶対にありえないニャ!」


 私は少し自信を失ったように見えるナオトを励ますように強く言った。


「ど、どうしたんだぜリリアン……別に今さら語尾なんか戻さなくても……」


「て、照れ隠しニャ!」


 私は少し強くナオトの胸を小突く。


「照れ隠し……?」


「いいかニャ? 今からするのはリリアンとしてじゃないニャ! あなたと一緒に冒険をしてきた、リリアンの中の人の気持ちニャ!」


「お、おう……リリアンの中の人なんだぜ……?」


 ナオトは少し不安げに首を傾げた。


「さっき全部が嘘じゃないって言ったけど、もう一つ、ついでに伝えておきたい本当のことがあったニャ」


「ほかにも本当のことがあったんだぜ……?」


「それは、私があなたを好きだってこと……!」


「リリアンが、俺を……?」


 驚くナオトに私はさらに顔を寄せる。


「たとえ世界中が笑っても! あなたは最後まで私の勇者ニャ!」


 そして私は意を決し、ナオトにそっと唇を重ねた。


「あなたを……もう一度、勇者にしてあげるニャ!」


「!」


 偉そうな言い方をしてしまったが、世界中に配信されるなかでキスまでするのだ、これくらいの照れ隠しは許してほしい。


『きたああああ!』


『神回!』


『悲報! リリアンたんラブの俺氏、無事死亡』


『勇者ナオト爆誕!』


 本当のことを言えば、いくら好きとは言え配信中にそんなことをしたくはなかったのだが、今このときだけはどうしても彼を愛おしく思う気持ちが溢れてしまっていた。


 そしてナオトははじめ目を見開くように驚いていたが、やがてゆっくりと私を受け入れ、優しく抱きしめてくれた。


 しかし、ちくしょう……。私にとっても大事なシーンなのに、ナオトがジュラルミンの鎧なんかを着ているせいで抱きしめられてもゴツゴツして生身の感覚がない。ラブコメにしてもコメディに寄りすぎだろこれ……。


「これはウソ? ホント?」


 唇が離れたあと、彼は少しの苦笑いとともに聞いてきた。


「言っておくけど、キスなんて初めてニャ……とても冗談じゃできないニャ……」


「俺も……まさか本名も知らない女の子が初めての相手だなんて驚きだぜ……」


 そこで私はまだ名乗りもしていないことを思い出した。


 カメラの前で本名を告げるのもどうかとは思ったが、今の私にとっては、もう私たち以外の何者も別世界の存在であるかのように思考の彼方に消え去っていた。


「私の本当の名前は、安藤梨里ニャ」


「リリ……? アン・ドウ……?」


 ナオトは眉をひそめていた。


「安直な名前だって思ったニャ?」


「それもそうだが……リリ、もしかして年齢まで偽ってないか……?」


 なぜわかった!?


 天真爛漫なネコ娘を演じるためとはいえ、やはり五歳ぶんサバを読むのは無理があったか……?


「ごめんなさい、本当は二十六歳ニャ……でもこれは私の意思じゃなくて……!」


 私が焦り出すとナオトは笑った。


「な、何がおかしいニャ! もしかしてこの歳になるまで何してたとか、そういう話かニャ!?」


「いや、違うんだぜ。実は俺がリリの歳を知ってるのにはちゃんと理由があってだな……」


「そ、そんなことはどうでもいいニャ! とにかく、もう笑っちゃだめニャ!」


 私が必死にナオトの言葉を遮ると、彼は少し呆れたような顔を私に向けた。


「話さなくてもいいのか? それじゃあ遠慮なく、今度は俺が真実を隠すほうだぜ……?」


 その言葉がなんとなく今までのお返しをされているような気がして、私は取り繕う言葉を探す。


「自分でもわかってるニャ……私、小さな頃に公園で野犬に襲われたことがあって、そのとき助けてくれた勇者様にずっと憧れてたのニャ……そんな乙女チックな考えでいたせいか、この歳まで浮いた話の一つもなくて……」


 ナオトはそんな私の頭にポンと手を置いた。


「まったく……リリは最初っから俺が守ってやらないとダメなんだぜ」


 最初から……?


 いやいや、最初のほうで私たちを裏から守ってくれてたのはロイヤやスタッフさんのほうで……?


 そういえばさっきも、今度は俺が真実を隠すほうだとか、意味がよくわからないことを言ってたけど……?


「ありがとうリリ。おかげでまた元気が出たぜ」


 不思議だと首を傾げる私にまた少し笑いながら、ナオトは次第に表情を引き締め、私をかばうように力強く立ち上がった。


「リリが勇者にしてくれたおかげで、俺も覚悟が決まったぜ!」


 そしてアルミームソードを構えてセラと対峙する。


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