パーティの紅一点
そんな私たちの寸劇を見て、銃口を向けられたままのセラは軽く笑った。
「あはっ! すごいねリリアンさん……まるでヲタサーの姫じゃない」
「べ、別に好きでやってるわけじゃないニャ……!」
だがセラには鼻で笑われた。
「で、どうする? このカオスな状況、どうやって収拾をつけようか……? お兄ちゃんも倒れちゃったし、そちらは銃まで持ち出して形勢逆転したつもりでいるんだろうしさ……オチをつけるためにも、私たちだけでゲームの続きでもする?」
「ゲームの続きニャ……?」
私は眉をひそめる。
「忘れちゃったの? 私を倒して自壊コード装置を起動すればあなたたちの勝ち……それができなければ私の勝ち」
セラはニヤリと歪な笑みを浮かべた。
「そうだ。いいこと考えた……私が勝ったら、リリアンさんのこと本当にネコ耳キメラにしちゃおうかな~?」
それは洒落にならん!
自らの遺伝子を操作するような狂気でヒステリックな科学者だ、本当にやりかねない!
私は戦慄した。
「安心せよリリアン……たとえフラれようとも、このワシがお主には指一本触れさせたりはせんわい」
慄く私をかばうように手を広げるセツ。
ロイヤが倒れ、真実を打ちつけられたナオトが放心している今、セツだけが私を守れる存在だった。
「ワシがこのまま魔王を止めておく……そのあいだにお主は廊下を先に進み、自壊コード装置を起動せよ……それですべてが解決するはずじゃ!」
「わ、わかったニャ!」
さすがにセラも銃口を向けられたままでは動けまい。
ナオトが放心している状況でも、私が自壊コード装置を起動しに行くぶんには問題あるまい。
私が廊下を奥に向かって駆け出そうとしたときだった。
「そう簡単にはいかないよ~? お~い、みんな~! 出ておいで~!」
突如セラが大きな声を上げた。
すると廊下両脇のドアからぞろぞろとサルキメラが現れ、たちまち行く手を塞がれてしまった。
「う、うそニャ……サルキメラがこんなに……?」
当然、私の足は止まってしまう。
最近はロイヤの活躍によってサルキメラ程度ならザコみたいな認識にさえなっていたが、あくまでそれはロイヤが人間離れしていただけであって、冷静に考えてみれば私たちはこの数カ月のあいだ、一体たりとも自分の手でサルキメラを討伐してなかったのだ。
この現実世界にはレベルアップなんて存在しない。
すなわち初めてサルキメラに向かい合ったとき、自分たちの力だけでは倒せなかったあのときの私たちのままなのだ。
「無理ニャ……あんなの私に突破できるわけがないニャ……」
いや、ロイヤが倒れた今、非戦闘員だらけの私たちではサルキメラを相手にすることすらできない。
「くっ……さすがにあの数を処理しきるだけの弾数は持っておらんぞい……」
くそ……唯一の突破口、セツの拳銃をもってしても強行突破は難しいようだ。
「あははっ! お兄ちゃんにすべてを任せてきたツケってやつだよね~?」
セラは高らかに声をあげて笑った。
「でも安心していいよ? サルキメラたちは基本的に手出しはしない……ただ廊下を塞いでいるだけ。このゲームは魔王たる私を倒せるかどうかのゲーム。この私を倒せさえすれば、そのあとはすんなりと通してもらえるからさ」
「無理に押し通ろうとしたらどうなるニャ……?」
「ズルしたときは襲われちゃうよ~!」
セラはケラケラと笑っていた。
「さぁ、どうする? 勇者パーティーらしく、ラストダンジョンで魔王と戦っちゃう?」
「どうしてそんなことをするニャ!」
「どうしてって……そうだなぁ、キメラになっちゃったリリアンさんを見れば、お兄ちゃんも気が変わるかもしれないでしょ……?」
狂気すぎるだろ、このマッドサイエンティストめ……!
私たちは戦慄しながらもセラと向き合わざるを得なかった。










