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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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真の賢者


「あはは……! あなたたち、唯一戦える人がいなくなっちゃったねぇ……?」


 ニヤリと微笑むセラ。


「ど、どうするニャ……ナオト様……?」


 チラリとナオトを見るが、彼にもいつもの前向きさはなく、意気消沈と言わんばかりに俯いたままだった。


「いかん! リリアン! ここはさがるのじゃ!」


 そんななか、戦えない私たちをかばうように前に出たのは駄作家のセツ。


「まさかこの事件の真相が、こんなにも歪んだ兄妹愛によって引き起こされていたとはのう……」


 いつもふざけたセツの顔にも緊張感が浮かんでいた。


「なぁに? もしかして会話をしながら時間稼ぎのつもり? それともあなたも泥棒ネコを守ろうとしてるの?」


 セラは余裕にも笑みを絶やさない。


「いや? その気持ち、ワシにも理解できるのじゃよ……」


 わかるの!?


 その発言には私もセラも眉をひそめてしまう。


 ただ、冷静に考えてみればセツもまた彼女を会話に引き込もうとしているに違いなかった。


「あなたに……私の気持ちの何がわかるの……!?」


 しかしセラはその発言が気に障ったようだった。


「わかるとも……実の兄妹を慕う気持ちの裏にあるもの……このワシにも覚えがあるとも」


 セツはキメ顔で続ける。


「歯を磨いたあと、さぁ寝るぞとなってから食べるお菓子ほど美味いものはない……つまりは背徳感じゃな」


 この状況で意味わかんねー表現すんなよ駄作家!


「バカと一緒にするなっ!」


 そして魔王の逆鱗に触れたぁ!


 哀れ駄作家、天使に殴られて散る……。


 私は軽く目を伏せたが、予想に反してセラがセツに襲いかかることはなかった。


「な、なんニャ……? いったい何が起きてるニャ……?」


 私はおそるおそる二人を見比べる。


 今の流れなら激昂したセラによってセツが瞬殺されていても不思議ではなかったはずだ。


 だが、襲いかかろうとしたセラが途中で動きを止めたようで、両者は膠着していたのだ。


 セラは感心したように微笑む。


「へぇ……ポンコツのくせに、いつも妙な余裕があると思ってたら……そんな物を隠し持ってたんだ?」


「フッ……賢者はときとして愚者を演じるもの……お主、ちとワシを見誤ったな……!」


 勝ち誇るセツが手に持っていた物。それは拳銃だった。


「そ、村長……? その銃はまさかホンモノなのかニャ……?」


 これまでアホなことばかりしてきたセツだからこそ、どうしてもそれがただのモデルガンに思えてしまうが、今の彼にはふざけている素振りは微塵もなかった。


 バァン! と大きな音を上げて真上に向けた威嚇射撃が行われる。


 セツの持つ銃は本物だった。


「奥の手は粉塵爆発とかバナナとか言ってた村長が、まさか本気で銃を取り出したのニャ……?」


「当たり前じゃ……ここは日本ではないのじゃからな。いざというときのため、自らや友の命を守る手段として常に持ち歩いていたのじゃ……これが、本当に本当のワシの奥の手じゃよ」


「マジかニャ……」


 意外にもガチな理由だった。


「驚いたなぁ……今までにも命の危険はあったはずなのに、そのときには銃を使わなかったよね……?」


 セラは小さく両手を挙げて一歩引いた。


「剣と魔法のイースでこんな物を見せたら、ファンタジーな冒険はそこで終わってしまうからの」


「ってことは、意外にも冷静に場面を見て温存していたってことなんだ……さすがに私もただのポンコツかと騙されていたよ~」


「こういうときのためにあえて愚者のふりをしているのじゃ……なるべく最後まで使いたくはなかったが……こうまでナオトの前で打ち明かされてしまっては、それも今さらじゃろうて……」


 そう言ってセツは銃を持たないほうの手でゆっくりと白髪のカツラや顎髭を外し、床に放り投げた。


 それはナオトに対し自分がついてきた嘘を白状する行為にほかならない。


 それを目の当たりにしたナオトがどんな反応をしているのか、私には恐ろしくて見ることすらできなかった。


「たしかにワシは戦闘要員ではないし、ロイヤをも凌駕するお主の身体能力は驚異的じゃ……じゃが、さすがに銃を相手にするとなると話は別じゃろう?」


 口調こそ数カ月間の癖が抜けきっていないものの、セツは腰をまっすぐに伸ばし、堂々と銃口をセラに突きつけている。


「今のワシは真の賢者……つまり、本気(マジ)じゃよ」


 だがセラのほうも銃を向けたらそこで試合終了ですよとはならず、あくまで余裕の笑みを崩していなかった。


「あれ? でもさ? 私、あなたやナオトさんにまでどうこうしようと言ってないよね……? なのに泥棒ネコをかばうために奥の手を使っちゃうんだ?」


「今やリリアンとて大事な仲間じゃからな」


「もしかして、あなたまで泥棒ネコに絆されちゃった感じ?」


「別に悪いことではないじゃろ? 普通にリリアンは可愛いしの」


 そうなの!? この超売れっ子作家までもが私のことを!?


「いやぁ、でも原作改変率99パーセントの駄作家さんはごめんなさい」


 またもや私は丁重に辞退しておく。


「ぐはっ……! ワシ、意外と深いダメージを受けたぞい……」


 私もこんな場面でパーティーメンバーから立て続けに打ち明けられてわりとショックだったよ!


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