道化の勇者
「ロイヤが……八雲セラの……お兄ちゃん……ニャ?」
「聞いとらん……! ワシは聞いとらんぞ、そんな話!」
私とセツはただただ混乱。
そしてまたナオトも同様に混乱はしているはずであったが、彼はここでも私たちとは異なる事実の捉え方をしているようで呆然としていた。
「おかしいんだぜ……? ロイヤはイース生まれだったよな……? それが向こうの世界から転移してきた八雲セラと兄弟だって? ……なんだよ、八雲ロイって……ロイヤはロイヤだよな……?」
私やセツはもちろん、ロイヤも言葉を発しないまま俯いていた。
「なんだよみんな、俺から顔をそらしてさ……もしかして何も知らなかったの、俺だけなんだぜ……?」
「それは違うニャ!」
「ワシらもそこまでは知らなかったのじゃ!」
私とセツが否定するも、ナオトは納得しなかった。
「だけどその反応……俺だけ知らない何かが別にあるみたいな反応だぜ……?」
ナオトは蒼然として、何かを恐れているように言った。
もしかしたら彼が塞ぎ込むに至った昔のことを思い出していたのかもしれない。
「なぁロイヤ……聞いてもいいか……? どうしてさっきから何も言わないんだ……? 俺たち、仲間なんだよな……?」
ナオトの助けを求めるような悲痛な視線を受けて、ロイヤは申し訳なさげに目をそらした。
そして少しの逡巡のあと、ギュッと目を瞑ってからナオトに深々と頭を下げる。
「嘘をついていてすみませんでした。ナオトさん……実はオレ、本名を八雲ロイって言います……日本から来ました。そこにいる八雲セラの兄というのも本当ッス」
震える拳を握りしめ、自らの素性を明かすロイヤ。
しかし震えていたのはナオトもまた同様だった。
「ロイヤも俺と同じ転生者だったんだぜ……?」
「……いいえ。オレは転移者や転生者ではありません……」
「どういうことなんだぜ? ここはイースだろ? 少なくともなんらかの理由で転移や転生をしてなきゃおかしいだろ……矛盾してるぜ……?」
「その矛盾は、ナオトさんが勘違いさせられているせいッスね……」
「それじゃあ意味がわからないぜ……? それにさっきから……いや、よく思い出してみれば王城のときから魔王は真の勇者がどうとか言っていた……それがアルミームソードに選ばれた俺じゃなくてロイヤなんだとしたら説明がつかない。それはいったい、どういうことなんだぜ……?」
「それは……」
ロイヤは私に問いかけるような視線を向けてきた。
それが私に覚悟を促しているのだとはすぐにわかった。
もう、この状況からナオトに対する嘘を続けることはできない。
八雲セラが現れようと現れまいと、元々ここで計画の全貌をナオトに白状する予定だったのだ。
魔王役が私から八雲セラに代わっただけのこと。
ただし、だからと言って私がこのままナオトの仲間でいられる保障はない。
それでもここでナオトに向き合わないという選択肢はなかった。
「それは私から……」
私が口を開こうとしたときだった。
「あははははっ!」
場違いに明るい声でセラが笑い出した。
「ごめん! 上手く魔王役をやろうとは思ってたんだけど、おかしくて思わず笑っちゃった! ……さっすが道化の勇者様ですぅ~!」
「道化の……勇者……?」
「あははっ! だってそうでしょう? 魔王たる私とあなたの間にはなんの関係もない。むしろ因縁があるのはお兄ちゃんのほうで、私に会うため憚る敵を薙ぎ倒してきたのも全部お兄ちゃん……! これ、完全に勇者としてのお株を奪われちゃってるやつだよね!? なのにあなたはまぁだ自分を勇者だと思っちゃってる……これを道化と言わずしてなんて言うわけ?」
こ、こいつ言いやがった……!










