いざ、ラストダンジョンへ
研究施設の周囲、二キロメートルは居住区へのキメラ出没を防ぐ目的で計画当初から鉄製の門扉と壁で囲われていた。
今、私たちの目の前には分厚い鉄板を幾重にも重ねた巨大な門が壁の一部として無骨にそびえている。
無数のボルトと補強材。隙間ひとつない構造で陽光を鈍い光としてはね返していた。
門の前には静寂だけが張りつき、風が金属をかすかに鳴らしている。
「いよいよ封鎖区域に突入だぜ」
「めっちゃ恐いニャ」
「じゃが、行くしかあるまい」
「大丈夫ッス! 今まで幾度となく困難を乗り越えてきたオレたちなら!」
私たちは向き合い、覚悟を決めたように頷きあった。
封鎖される前に外へと漏れ出したキメラはこれまでも多く駆除してきたが、封鎖区域内ともなると、もはやそこがどんな状態になっているかも想像がつかない。
原生林のように草木が繁茂し、自然の摂理そのままに跳梁跋扈するキメラたちが待ち構えているのか。
はたまた限られた食料などの問題からすでに大半が死に絶え、不気味なほど静まりかえっているのか。
私たちが数ヶ月、冒険と称して放置していた期間、ずっと沈黙を守ってきた封鎖区域であるが、ここにきて研究施設の主たる八雲セラが生存していたとなると、それなりに人が住める環境であることは期待できる。
しかしだからと言って目的もわからない八雲セラに促されるまま、たった四人で突入するにはいささか不安が残っている。
当初であれば私たちが突入する直前には別途、駆除部隊が封鎖区域内のキメラを適度に掃討し、過度な危険もなく研究施設まで歩ける予定にはなっていた。
しかしいざそのときとなってみれば八雲セラが私たちを招いてくれるようであったし、唯一の戦力ロイヤが事前掃討の必要性はないと訴えたこともあって、私たちはそのまま未知の領域に足を踏み入れることになったのだった。
「大丈夫ッス! オレたちを呼んだのはキメラを統べる八雲セラその人ッスから、オレたちがそこまでたどり着けない道理がないッス」
どこからその自信がくるのかはわからなかったが、私たちは仲間の言葉を信じて鉄門を開き、未知の領域に足を踏み入れたのである。
「やっぱり数ヶ月も放置されてたから全体的に草木で鬱蒼としてるニャ」
「数ヶ月……? たしかセツが研究施設とともに転移してきたのは、もう数十年も前のことだろ? セツももう腰の曲がったじーさんだし」
ナオトが緊張感なく首を傾げる。
「失礼じゃな! まだ腰は曲がっとらんわい!」
やべ。そういえばそんな設定もあったな、などと思いつつ、それも含めてそろそろナオトにも真実が突きつけられるのだ。今さら取り乱すようなことでもない。
「施設に着けば、それも全部わかることニャ」
私はナオトから視線をそらし、道の先を見つめた。
ひび割れた舗装路がまっすぐ伸び、その両脇からは雑草と蔓が侵食するようにせり出している。
放置された林は濃く沈み、枝葉の奥で何かが擦れる気配だけが断続的に続いていた。風に混じって湿った土と獣のような匂いがかすかに漂ってくる。
「ニャア……いるニャ。確実にたくさんのキメラが近くをうろついてるニャ……」
どんなキメラかまではわからなくとも、この数に同時に襲われたらただじゃ済まないことくらいはわかる。
「大丈夫。大丈夫ッス」
ロイヤはまるでパーティーの先頭に立つ勇者であるかのように私たちを安心させ、励ますようにしていた。










