地下牢からの再スタート(2)
「よし! じゃあ、まずは大臣が謀反を企んでいる証拠を抑えるためにも、城の西側区域……」
まだ西側区域を気にしてんのかい!
と、私が思うのとほぼ同時に姫が声を被せる。
「いいえ、その必要はありませんわ」
これはもう二度と西側区域に立ち入ろうとする気を起こさせないために決まっていたことだ。
「実は大臣も根っからの悪人というわけではないのです。ですから、私たちが真に倒すべきは大臣の背後で彼を操っている黒幕なのです」
「黒幕!? じゃあ、もしかしてロイヤが操られたのも、そいつが……?」
姫は慎重に頷く。
「私はその黒幕を、魔物を統べる者であると考えております」
「それって要するに、魔王ってことなんだぜ?」
「ま、まままま、魔王が復活してたニャ~!?」
「なんじゃと!? ワシが唯一恐れていたことが……」
「魔王って言ったら、勇者にしか倒せないって近所で評判ッスよ!」
私たちがすかさず雰囲気を盛り上げる。
「相手が魔物であるならば、正体を暴くことなどそう難しくはありません。この真実の鏡を使えばよいのですから……」
そう言いつつ姫が私たちの前に出したのは、豪華な縁取りの鏡に見せかけて銀幕を貼っただけの鏡型大型タブレットだ。
「あ。それは俺も初めて見たけど、どんな物かは知ってるぜ? 人間に扮した魔物でも鏡には正体が映る的なアイテムなんだぜ?」
どこの違世界でも同じようなアイテムはみんな鏡のようで、みんな大好き真実の鏡は世界の共通言語というわけだ。
「まさか真実の鏡をご存知とは……さすがは勇者ナオト様」
「ナオト様、すっごいニャ~」
「博識じゃのう」
「勉強になるッス~!」
銀幕を剥がせば、本当はカメラに映った人物を魔物の姿に映し替えて表示するアプリ入りタブレットだというのに。
「本当はもっと早く、大臣を操る者の正体を暴くべきだったというのは重々承知なのですが……」
「相手が魔物となると戦闘になる可能性が高く、かと言って城の者を頼るとなると、どこまで魔の手が回っているのかが不安じゃったわけか」
「そのとおりです」
姫は目を伏せた。
「そういうことなら、俺たちに任せておくんだぜ! なぁみんな」
ナオトが私たちへ呼びかけ、私たちもまた引き締めた表情で頷く。
「ありがとうございます。では、皆さんをここから解放いたしますね」
姫は私たちの入った牢屋の鍵を外し、続いて私たちの拘束具も解いた。
「預からせていただいていた皆様の武具も持ってまいりました」
「助かるぜ!」
私たちはそれぞれ姫から自分の武器を受け取り、身なりを整えた。
「皆様。ご支度のほうは整いましたでしょうか?」
私たちはそろって頷く。
「では大臣の元へ向かいましょう。私が案内しますので、くれぐれもおはぐれにならないようお願いいたしますね」
「わかったニャ! もう西側区域になんて行く必要もないし、一刻も早く大臣を黒幕から解放するだけニャ!」
「そうじゃな。この後に及んで、もう寄り道などはありえんぞ! なあ勇者よ」
「オレ、一秒でも早く魔物をやっつけてやりたい気分ッス!」
私たちの強力な寄り道制限圧力を受けてたじろぎながらもナオトは強く拳を握る。
「お、俺だってそれくらいわかってるんだぜ!」
どーだか。
とにかく私たちは再びナオトが変な気を起こさぬよう気をつけながら、彼の四方を取り囲み、大臣と対峙する予定の謁見の間に向かうのだった。










