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あなたを勇者にしてあげる 〜転生したと勘違いしている御曹司と偽世界を冒険中。なお全世界配信されてるから迫られても困ります〜  作者: nandemoE


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地下牢からの再スタート(1)


 私たちが仲良く牢屋の中に入り、スタッフの手によってシナリオの舞台裏が整えられた頃、時を見計らったかのようにナオトが目を覚ました。


「ここは……どこだ?」


 上半身を起こして辺りを見渡すナオト。


「ここは王城の地下牢ニャ」


 私は神妙に告げ、ナオトは驚く。


「そうだ。たしか俺はロイヤにやられて……でもどうしてリリアンまで?」


「ワシもおるぞ」


「オレもッス!」


「セツ! それにロイヤも!」


 ナオトは即座に手元にあるはずのアルミームソードを探していたようだったが、当然武器は取り上げられている。


「安心せい勇者よ。お主を襲ったロイヤはあのとき何者かによって操られておったのじゃ。本当にワシらを裏切ったわけではないんじゃよ」


「すみませんでしたナオトさん……オレ、脳筋だから精神干渉系の魔法に弱くって……」


 申し訳なさげにロイヤが頭を下げると、ナオトはむしろホッと安堵したようだった。


「なんだ、操られていただけか。よかった……敵だったわけじゃないんだな」


「そんなにあっさり信じてくれるッスか!?」


「当たり前だぜ! でも、今は大丈夫なのか?」


「村長が解呪魔法で解放してくれたから、今は正気に戻ってるニャ」


「とはいえそこで力を使ってしまったので簡単に大臣の手の者によって捕まってしまったがの」


「なるほど、状況が掴めてきたぜ」


 ナオトは腕を組んでうんうんと頷いた。


「すまない、みんな。結局みんなを巻き込んでしまったようだ」


 そして、彼は私たちに頭を下げる。


「ナオト様。水臭いことは言っちゃだめニャ!」


「そうじゃぞ。ワシらはパーティーなんじゃからな!」


「そうッスそうッス! ……って、オレが操られなければこんなことにはならなかったッス……反省するッス」


「じゃあ、それもひっくるめて。この場は言いっこなしだぜ!」


 私たちは再び一団結して笑い合った。


「しかし、これで大臣が怪しい説が濃厚になったのう」


「さっすが! ナオト様の睨んだとおりだったニャ!」


「でも、それがわかったところでオレたちこれからどうするッスか?」


「問題はそこだぜ。どうにかしてこの地下牢から脱出する方法を考えないと……」


 私たちはそろって腕を組んで考える。


 そして、それが次なる出演者への合図となっていた。


「それでしたら問題はありませんわ?」


 ふいに地下牢に響く女性の声。


 そこへ現れたのは王女役として一瞬だけ登場した王女サナフィナだった。


「キミはたしか……」


「王女サナフィナですわ、勇者様」


 姫は地下牢の前で優雅に一礼して見せた。


「先ほどの話を聞かせていただきましたが、初見で大臣の企みに気づくとは驚かされました。さすがは勇者ナオト様ですわね」


「それを聞いてどうするんだぜ?」


 ナオトは怪訝そうに尋ねる。


「ご心配には及びません。私は勇者様の味方ですわ?」


「俺たちの味方……?」


「ええ。実は私はずっと勇者様が王城に来てくれるのを待っていたのです」


「俺を……? それはまた、なんでなんだぜ?」


「大臣を……倒すためですわ」


「大臣を倒す、ということは、やはり大臣と姫は敵対しているってことか」


「はい……今の大臣は明らかに国の乗っ取りを企んでいます」


「乗っ取り……それは穏やかじゃないんだぜ」


「すでに国王である私の父は大臣の傀儡へと成り果ててしまいました……そうなると、もう私一人の力では抗うこともできず……」


 姫は辛そうに目を伏せた。


「それで俺たちのような協力者が現れるのを待っていたというわけか」


「お願いです! どうか私とともに大臣と戦ってはくれませんか!」


 今にも泣きそうな顔で懇願する姫を見て、ナオトは表情を引き締めた。


「わかったぜ。ここまで聞いて立ち上がらないなんて勇者が廃るってもんだぜ!」


 よかった。ここで引かれたら面倒なことになるところだったが、なんとかシナリオルートは維持された。


「さすがナオト様ニャ!」


 私はすかさずナオトを持ち上げ、彼が考え直して及び腰になるのを防いでおく。


 よく、ありがとうが『魔法の言葉』と言われる理由に、交渉で相手から譲歩を引き出した際、すかさずありがとうを入れることで、相手をいい気にさせて簡単に手を引けなくする効果があると言われている。


 最近よく思うのだが、私が言う『さすが勇者様』も同じ類の魔法の言葉なのではないだろうか。


「よく言った勇者よ!」


「オレもその決断に痺れたッス!」


 よく考えてみたらチート能力もなしで国のトップを相手によくもまあこんなに簡単に立ち向かうことを決めてしまうものだとは思うが、そのどこから来るのかわからない自信と変な正義感に私は不思議な親近感を覚えるようになってしまっていた。


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